ニチモ「30cmシリーズ 航空母艦 翔鶴」

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先日惜しまれつつも模型部門の廃業を発表したニチモの翔鶴です。日本模型株式会社は1951年創業とのことですから、あしかけ62年の企業活動ということになりますか。長年多岐に渡ってお世話になった老舗メーカーの灯火がまたひとつ消えるのは、残念なことではあります……


当ブログでは以前この30cmシリーズでも「霧島」を取り上げたことがあります。この記事は現在でも多くの方々に読まれているようで、ありがたいことです(礼)。その記事本文内でも書いたことですが自分の個人的30cmシリーズと言えばやはりこの「翔鶴」でありまして、ニチモ休業の報に接してあらためてこの懐かしいアイテムを、もう一度組んでみようと思った次第。本日はいささか感傷的な記事となることを、前もってお断りしておきます。

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再度パッケージを掲載。霧島の時とは異なるレイアウトになっていてこれが最終生産ロットということになるのかな? ちょっとこの画像では分かりにくいのですが、ボックスのタイプもいわゆるキャラメル箱になっていて、コスト削減の意味合いがあるのかも知れませんね。(使用されている紙の材質そのものは霧島の時よりも頑丈そうです)

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ちょっと箱絵が小さすぎるので印刷面をスキャン、翔鶴の部分をトリミングしてみました。おお懐かしいまさにこれ! 当時下向き煙突がよくわかっていなくて「なんでこんなにたくさん水を捨ててんだろう」とか思ったのを明瞭に記憶しています(w 大昔にはじめての船プラモでこのキット作って以来、なぜか空母と言えばまず翔鶴が浮かぶのです。

――しかし、黒枠ってどうよと。「ありし日の翔鶴」みたいなその、なんだ……

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箱裏にはちょっと他のメーカーでは見ないようなタイプの注意書きがあります。前段はともかく「組立ての主役はあなたです」から始まる文章はクラフトマンシップに満ちた内容でなんというかな硬派なものです。「すべての方に仕上がりや完成をお約束するものではありません」ってね、なかなか書けることではないですね。

むろんここには金型メンテに注力できない諸事情もまた、絡んでいるのでしょうけれど。

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ではパーツを見ていきましょう。ランナー部分は大きく3つに切断されています。流石に記憶が曖昧だけれどニチモの30cmシリーズってむかしはもっと箱が大きかったように思います。その当時は一枚ランナーで入ってたんだろうなあこのパーツ。

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船体および船底パーツ。あくまでモーターライズ航行させるための「フルハルモデル型」船底であって、実際の翔鶴のハル部分を正確にスケールモデル化したものでは、ありません。その点は一応ご注意申し上げます。ぱっと見船体部分がぐんにゃり曲がってたので飛行甲板に爆弾が直撃したときの表情になりましたけれど、幸い弾力性の高い成形材質だったためか組み立てには問題なし。動かして遊ぶために最初から頑丈に設計されてるのは、この時代の特徴か。

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手ブレ画像で申し訳ない動力部分。この辺のパーツはシリーズ共通かと思いきや、微妙に霧島の時とは形状が違っていました。昔はキットにモーター付属の時期もあったらしいんだけれど、自分の時はどうだったかなあ……

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比較的最近になって追加されたマルチスタンド。シリーズ共通パッケージになったころだったかな……

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飛行甲板を始めすべて凸モールドです。大スケールならともかくとしてこのサイズ、このフォーマットならさほど気にはならないかな。ニチモの製品開発の影には艦船研究家として著名な森恒英氏(「軍艦雑記帳」の著者の方ですね)の協力を仰いだとのことで商品化の選定や資料面での協力もあったのでしょうか。「近所に住んでたんで、ちょっと手伝ってもらった」ってぐらいのいきさつらしいのですが。しかし海なし県の栃木でいろいろ艦船模型を開発してたのもユニークではあります、ニチモ。

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戦艦と違って砲塔を持たない分艦載機で遊べるのは空母プラモの強みでしょう。本キットには零戦・九九艦爆・九七艦攻がそれぞれ三機ずつの付属で、よくアメリカのお子様が「ノアの方舟」プレイセットに動物乗せて遊んでいるように、むかしから日本の模型少年は真珠湾攻撃隊を編成していたのですよ怖いか?フフフ……

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\( 寿 司 )/

いやこのシリーズ翔鶴(ショウカク)と瑞鶴(スイカク)完全に共通パーツなんでランナーにこのような刻印が打ってある訳なのですけれど、金型職人の人が「シス(死す)」を避けたか単に寿司食いたかったのか、どっちなんだろうな……

プラモデルとしてのパーツ設計・分割などはともかくとして、本キットには実際の旧日本海軍航空母艦翔鶴の解説・資料的な記述はほとんどありません。組み立て説明書には「超弩級空母 翔鶴」なんてアレレな言葉も書いてあって、ヒストリカルな面では非常に弱いんだなこれが。ですから本キットで初めて翔鶴に接するかたはこちらの記述とか参照されると良いでしょう。いや実にネットは便利ですねい。

と、まあ昨今の艦これブームのおかげでいろいろ再評価もされているような気配もありの30cmシリーズ、特に当ブログの「霧島」記事が多く読まれているのはそれ関連もあるようですが、実際どうなんでしょうねうーむ。

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なんだかんだ言って昔のプラモデルですからねえ、バリも多いし組み立てには(メーカーもはっきり表明しているように)苦労もかかります。いまこの時代に艦船模型を始める方々には、出来ればいまこの時代の技術・センスで作られた製品に触れて頂きたいという思いもありでちょっと複雑。しかしWLシリーズもどんどん複雑・高価格化が進んでいるので、簡単に作れて低価格な製品ってあまり無いのですねイマドキは。このあたりガルパンブームが始まった当時も逡巡したことですけれど。

ガンプラ感覚で購入・製作出来るようなスケールモデルがもっといろいろあれば好都合なんですが、そうはいかないからニチモ休業なんて事態になるんだよなあ……

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気を取り直して製作開始。まずは動力部からですが接点となる金属パーツは(霧島の時とは違って)プラパーツの下をいったん潜り抜けるような配置になっています。これは何か、意味があるんだろうか? ともかく、モーターライズを楽しみたい方はこの時点でFA-130モーターを取り付け、単三電池も使って作動試験を済ませて下さい。あとこれすっごくいまさらですけれど 錆 び ま す よ ね こ こ ? 水上航行を考えたら防錆塗装とかするべきなんだろうか????

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舵の取り付けにゴムパイプを輪切りにする指示は霧島組んだ時と変わらないのですが、霧島組んだ時とは違ってえらく苦労しました。どうも翔鶴は艦艇パーツの形状違いがあるのと舵の軸部分が太くなってる模様。対処方法としてはゴムパイプを舵取り付け穴に直接突っ込み現物合わせで切断しました(ゴムパイプの長さには十分余裕があります)

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形状違いと言えばスクリュー軸の取り出し穴がなんて言うかなその、広いんで、こりゃさぞ派手に浸水したろうなあと。「瑞鶴沈みます!」などと東宝映画「連合艦隊」ごっこをするヒマもなくズブズブ沈んだフネが多かったんじゃあ……

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今回も特に水上航行は考えてないので何も考えずにグリスボックスふたも接着しちゃいましたけど、充填剤には何がベストなんでしょうねえ。指先の温度で自在に加工でき、水中では固く硬化したままの夢の素材について記された一子相伝の「模型秘伝帳・油脂の巻」をめぐって数多のモデラーが死屍累々の激闘を繰り広げるような70年代なんて山田風太郎も横山光輝も描いてなかった。

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船体部分は上甲板を持たない構成なのでパーツ形状が構造弾力に負けちゃいます。霧島組んだ時はウォーターラインモデルで遊べたものですが、今回は船底としっかり接着しましょう。飛行甲板を構造材に使えばあるいは……とも考えましたが、ここはキットの指定通りに済ませています。

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12.7センチ高角砲と94式高射装置(原文ママ)は別パーツ化されています。

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高角砲支柱はそれぞれ微妙に形状が異なるので組み間違いに注意。

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右舷後方の高角砲/3連装機銃のみシールドを装備しています。この辺実際はどうだったのか資料をあたって調べようかとも考えましたが、まーそういうものでもあるまいなと思い直す。

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飛行甲板支柱ですが、後部はともかく前部のそれは飛行甲板側に取り付けるよう指示があります。この処置には疑問を感じたので前後とも船体側に取り付けました。「支柱」ってぐらいですから本来飛行甲板と船体をがっちり接続するものなのですけれど、そうはいかない本キット特有の事情があるのです。

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これは30cmシリーズ空母全部に共通する点かと思われますが、飛行甲板が動力部電池ボックスのフタを兼ねてるんで接着できないんですな。ディスプレイに割り切れば固定しちゃって問題ないのですが、それはどうもオモムキに欠ける気がしまして。

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隙間が開くのはいささか興醒めではありますが、ここは耐え難きを耐える心持ちでひとつ。

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戦艦に比べれば貧弱な艦橋部分も下部艦橋・羅針甲板・防空指揮所を積み重ねていく「艦艇の基本」構造は押さえられています。センスの無い設計だとモナカ割りにしそうな箇所ではあるので、そういうところはしっかりしているプラモです。

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艦載機の配置は自由ですが、飛行甲板後部に並べた方がらしいかな? しかし実際航行させたら消えて無くなりそうなデンジャラスな予感が(汗)飛行甲板の継ぎ目も浸水し易そうではあるし、水場で遊ぶなら空母よりは戦艦の方が良いのかもしれません。

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空中線マストを4本取り付ければ完成です。バルバスバウ(球状船首)こそ再現されてはいませんが、なかなかに美しい翔鶴型航空母艦の雄姿を再現できます。

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一航戦などに比べると「脇役」感も否めない五航戦の、だがそれがよいってのもあるのかなあ。戦歴を考えたら瑞鶴に興味が行きそうなものですが、翔鶴好きになった理由はやっぱり幼少時に購入したこのプラモデルのおかげなのです。

ところで、購入した覚えは確かにあるのだけれど、実は完成させた記憶が無い。

えっ。

美しい記憶だけを残しましょう。都合の悪いことは忘れましょう。それが歴史というものです。

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そして翔鶴組んでたらなんだかテンション上ってきたのでマブチモーターも用意してミタ━(゚∀゚)━!!

FA-130RAモーター、現行のマブチモーターはこんな小洒落たパッケージになってるんですよ、知ってました?

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そしてこんな小洒落たモーターベースと二段式プーリーがもれなくセットされているのです。今回は特に使いませんが……

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リード線を切断して単三電池と共にセーット!あとからやったんでマスト一本ヘシ折ったけど高速修復スイッチオン!動けよ翔鶴!!

動きません(´・ω・`)

……接点のハンダがちゃんと削れてませんでした。コードを外すのは取説の指示に従ったんだけど、律義に全部切るんじゃなくて少しだけ銅線剥き身で残しといたほうが通電し易かったかもだ。

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ちゃんと処理すればほれこの通り例え地上であっても回る回るよ時代は回る、喜び悲しみ繰り返し……などと中島みゆきを口ずさむどころの話ではなく

作動音が や か ま し す ぎ る ぞ ヽ( `Д´)ノ ウォォォオン なので速攻スイッチ切りましたよええ。

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なんだかんだでいろいろと手に馴染む大きさや構成のプラモデルでありました。古い友人に再会したような気分ではある。ガンプラもスケールモデルも日本のプラモデル業界は1990年代に方向性を大きく変えて今があると(あくまで個人的に)思っているのですけれど、その時に切り捨てちゃったエッセンスの、なんかカタマリみたいな存在なんだよなーこれ。ひと言で説明すると

「ニチモか、何もかも皆懐かしい……」

てな感じではありますが。

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この三角のペナントと円形のエンブレムが模型店の店先から消え去ってしまうのはやはりさびしいものですね。ニチモには公私ともどもお世話になりまして、いろいろと思い出もあります。ニチモと言えば代表作となるのはやはり1/200戦艦大和でしょうか、個人的には実に梱包に苦労するプラモデルだったという印象が強いなあ。1カートン2個入りなんで最初のひとつを出荷する時は楽なんですが、2個目を出すときは大変でした。フジミのカーモデル24個入りカートンをふた箱つぶすとなんとか納まるんだけどね……

そうそう、こんなこともありました。あれは2001年ぐらいのことだったかなあ。マクロスのいわゆる「ピタパン」シリーズが久々に再生産されて、当時まだ海外向け専任だったホビーリンクジャパンでも予想外の大好評。発注書が回って来る度に追加追加で入れて行ったけど、あるときのあれはホビーショーがらみだったでしょうか、発注書には載ってるけど注文受けられませんみたいな話がありまして……

「なんでも買い占めたヤツがいるそうだ」

「ええっ、ど、どこの店ですかそんなことする輩はッ!?」

「俺達だ」

「えっ」

「 お れ た ち だ 」

「」

「ニチモか、何もかも皆懐かしい……」

いまならニチモ製品最後の流通在庫がございます。昭和史に名を残す老舗模型メーカーの銘品の数々を手に入れる、これは本当に最後の機会となるかも知れません。戦車や航空機関係の名作も多く、ピタパンマクロスも数日前にはごくわずかあったんですがあー、品切れましたねえ、もう……

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