双葉社「ガンダムの常識Special 赤い彗星シャア・アズナブル篇」

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ワンコインの低価格で様々な観点から歴代ガンダム作品を解説する「ガンダムの常識」シリーズより、言わずと知れた有名キャラクターを取り上げた一冊です。

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「赤い彗星」ことシャア・アズナブルの業績を、初登場からその終焉まで歴代搭乗機体をはじめとして他面的に解き明かしていきます。ガンダムシリーズのキャラクターは星の数ほどありますが、ひとりの人物で一冊の本が作れるのはこの人ぐらいのものだな(SEEDの頃にはキラ・ヤマト写真集とかありましたけどね)


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そんなことが出来るのも、それなりに毀誉褒貶の激しい人物だったからでしょう。当初「機動戦士ガンダム」は明確な「敵」として現れながら、次作「Zガンダム」では頼りになる仲間となり、更に「逆襲のシャア」ではもう一度敵として立ちはだかる。なかなか出来るものではありませんね。

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これらの作品をリアルタイムで見ていた頃はその首尾一貫性の無さにいまひとつ共感を呼ばなかったものですが、ネオジオンの総帥となって「これではまるで道化だな」と嘯く姿をいままた考え直せば、「道化」はひとつのキーワードであったのかも知れません。この人物の奇矯な言動が有ればこそ、ガンダムシリーズの面白さが深まったというものです。

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Zガンダムに於ける「クワトロ・バジーナ大尉」のもっとも印象に残るこのシーンも、「道化」となって周囲の人物に行動を発起せしめるいわば触媒として作用したのだと考えれば、この時期のシャアの一種ふがいなさにも別の意味を見いだせそう。カミーユマジキチってだけじゃなくて。

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新約の劇場版ではばっさりカットされてましたがキリマンジャロの一連のエピソードはなかなか印象に残る物です。一応は名セリフとして掲載されている「戦いの中で人を救う方法もあるはずだ。それを探せ!」って台詞の浅薄さはむしろ彼によく似合っていて、なにしろこのひとこれまでもこの先も、戦いの中で一度たりとも人を救ったことなど無い人間ですから「あるわけないだろ!」などとティーンエイジャーのカミーユにあっさり論破される無様さは、まるで百式の金メッキが剥がれて赤い彗星が顔をのぞかせるような醜態でもある。そしてダカールへと、実際うまくつながるわけです。なんだか漫才みたいな応酬にも思えますけれど。

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本人の言行のみならず周囲の人物、敵対陣営や女性キャラクターの目を通して語られた「シャア・アズナブル像」が掲載されているのも面白いところで、歴代ガンダム登場人物でここまでいろいろ(良くも悪くも)いじられたキャラも珍しい存在です。次点としては特に年上の女性からいじくりまわされたウッソ・エヴィンくんがおりますが、やはり血のつながりがあるのだろうか……

Zガンダムの終盤、コロニーレーザーをめぐる戦いの中、グリプス2に残された廃劇場の舞台に立つシャアとそれを客席から糺弾するハマーン・カーンとパプティマス・シロッコの三者三様の在り方はゼータ屈指の名シーンなのですが、なぜか本書ではふれられていません。そこに幕間から突っ込み入れてくるカミーユがたまらないトミノ節炸裂のいいシーンなんだけどなあとこれは本書と関係ない、ただの刻の涙です(w

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「勇者ライディーン」のプリンス・シャーキンを初めとして人物造型にはいくつかの先行モデルがあると記述されてはいますが、やはりある種のライバルキャラクターのロールモデルとなりうるスタイルを確立した、一代の人物ではあるでしょう。同じガンダムのライバルキャラとして対照的なランバ・ラルが全く出てこないのは興味深いところで、1stシリーズ本編や後続作品でもシャア・アズナブルとは全く絡んでいないですな。安彦良和のコミック版「THE ORIGIN」ではミノフスキー博士襲撃作戦で行動を共にしているのに、この二人は満足な会話一つしないのです。作劇上の都合、演出の溝とはいえなかなかに面白いもので。

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スタイリッシュを貫くと一転してコミカルなものに転化するのもよくある話で、最近では四コママンガをはじめとするコメディ・リリーフとしても重宝される「赤い彗星」の、原点と変貌を再確認できるよくまとまった資料です。新しい発見のようなものは、それは無いのですけれど。

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