マスターボックス「1/72 英 マークI 型菱形戦車 雌型 (機銃搭載) 1916年 」

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世界初の戦車「タンクMk.I」、パッケージにも記されている通り第一次世界大戦100年を記念しての完全新作キットです。WW1アイテムも着々と数を増してきましたが、著名な菱形戦車の新作キットはまだこのマスターボックスの1/72だけ。戦車がはじめて実戦投入された1916年の100周年までには時間がありますから、予想される新製品の予習的な意味でも組み立てやすいミニスケールはおススメです。



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菱形戦車に雄雌二種類あるうちで、本キットは機銃装備の対人殺傷型フィーメールタイプ。パーツリストでは別枠になっているB、Dランナーが一枠で成型されていてAパーツが無い製品構成は、思うにここが共用部分で切り落とされた先に雄型(57mm砲搭載)用のAパーツがあるんでしょうね。

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「菱形」部分、ここも共有でしょう。少ないパーツでも簡単にバリエーション増やせるのは菱形戦車のいいところ。ところでこの戦車を「菱形」と呼ぶのはどうも日本だけでの慣習のようで、英語での“Diamond Shape ”とか“Lozenge Tank”のような呼び方は聞いたことが無いぞ。

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Bランナーにも機銃パーツはあるのですが、数が足りないので別にFランナーが起こされています。マークIの時期にはまだ存在しないハーマフロダイト(雌雄同体)型をいずれは出せるような配慮でしょうか。ハーマフロダイトが作られたのはマークVの時期になってから……でしたっけ?

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ベルトキャタピラとエッチングパーツが付属します。この時期のイギリス戦車にはまだ特有のマーキングが存在しないのでデカールが無くても特に問題はないのか。英軍戦車が敵味方識別塗装を施すのはドイツ軍が鹵獲戦車(ボイテパンツァー)を投入するようになってからのことです。

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箱裏にはカラー印刷で塗装ガイドが掲載されています。このあたりはマスターボックスのフィギュアと同じフォーマット。いまでこそマスターボックスは謎のシチュエーションフィギュアで有名ですが、むかしはI号戦車とか車両関係もいろいろ出してましたね。「いろいろ」といってもI号戦車とベンツ170VKのバリエーションしかなかったのは気にするな。

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完全新作の車両キットとしては久し振りではありますが、ディティールは非常に優れたものです。ミニスケールの菱形戦車としてはエアフィックスの1/76がありますけれどあちらは相当のベテランで、いまの技術で製造されたプラモデルならやはりこのマスターボックス製を推したい。リベットも実に綺麗。「マークIの頃は治具も揃ってなかったからリベットの間隔は不均一のはず」とか言ってくる連中は全員ヴェルダン送りだ。

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Fランナーに不用パーツで入ってるのは菱形戦車でも後々の型で副武装として用いられるオチキス空冷機銃の銃身でしょうか?バリエーション展開するならボイテパンツァーが面白そうなんですけれど、今度出る「中東仕様」って一体ガザ地区で何をやってたんだろう???

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パーツ見ていて面白かったのは車体底面のC5パーツ。普段菱形戦車の裏側ってあまり見た覚えが無いけれど、へーこんな不思議な曲線を描いているんだちょっとセクシーなボディラインですねって

そんなわけがないだろう。

ここまでひん曲がったパーツ見るのもひさしぶりです、さいわい物が小さいんでわざわざ風呂に入ることも無く熱湯につけてギギギと曲げる。東欧キットによくあるやわらかめのプラスチックで成型されているとはいえ、いささか強引ではある……

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本来は車体中央部分を箱組みしてから周囲を追加していくのですが、歪みを矯正している間にどんどん周りから攻めて行きます。ミニスケールとはいえ取説は組み立て過程を丁寧に追っていて好感が持てる内容です(若干判りにくい箇所もあるのですが)

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マークIに特有の尾輪部分は取り付け用のダボ穴が埋まっていたりやけに太いゲートがあったりでいささか組み立てづらいとこです。実戦では取り外した例も多かったらしいのでいっそ……(ゴクリ

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底面に加えて上面部分も若干歪んでいたので同じく矯正しました。真っ直ぐ走る白線が矯正というよりも「強制」って感じでガクブルですけれど、このへんは個体差もあるでしょうねぇ。

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各ユニットが揃ってきたらそれぞれを組み合わせます。

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「菱形」部分に接着ガイドがあるのでそれに併せて上下面を最後の微調整。組み立てやすいよく設計なので、修正作業もそれに合わせていけば用意に解決できます。なお車体の前面部分を合わせるためには取説では後の過程で使用する操縦席部分D16を、あらかじめ車体上面D2に接着しておくと良いです。

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車体に加えて尾輪と補助スプリングを二つの「菱形」で挟む要領。走行装置は外部から一切見えない形状なので転輪関係一切省略されてるのはミニスケールならではかな? 1/35スケールでは昔からあるエマーのキットでもこの辺は省略されているのですけれど、もしも今の(特に中華系メーカーの)グレードで設計したら大変なことになりそうだな。

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尾輪にはエッチングが付きます。またスプリングの取り付け位置や角度に付いては取説だけでなく箱裏の塗装ガイドを参照すると良しです。

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エッチングパーツの大部分は車体上部の手榴弾避けネットのパーツとなります。この部分にエッチングを使用する際はD4パーツの斜め桁をカットする旨指示がありましたが、その処置には疑問を感じたのでスルーする。横着したわけではないよ!あるけど違うよ!!

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スポンソンにそれぞれ機銃が二つ並んでるのはこれが雌型で乳房をイメージしてるからだッ!とか主張するのは無理がありすぎる。左右はともかく上下にはあまり動いてくれませんね仕方ないですね。

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排気口のカバーというか雨どい?D19パーツは何の接着ガイドもないので3つそろえるのはそこそこ至難の技ですけれど「どうせ手榴弾避けネットで見えなくなる」と気がつくと俄然楽勝な作業に転じます(w

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操縦席の視察蓋は別パーツなので開閉選択可能です。ちなみにイギリス戦車なので右ハンドルだ。またこの部分には前照灯のD10パーツ×2があるのですけれど、形状も微妙だし接着位置も角度もわからないし実車の画像検索しても装備してる車両が全然見つからなかったので男らしく叫ぶ、オミーーーット!!

夜襲はおろか夜間行軍さえままならぬ車両ですからしてその。戦場の霧とか煙とかもその。

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ベルトキャタピラは瞬間接着剤で留める素材が使われています。

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凸部が異様に気になりますが……

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あらかじめ菱形部分に「逃げ」が用意されてたりする。おお、良い設計でありますな。

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キャタピラ巻いてスポンソンと防護ネット取り付ければ完成です。取説ではキャタピラ巻く前に防護ネット付けてますが、逆にしないとキャタピラ巻けませんのでそこはご注意。

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しかしキャタピラ巻いたら尾輪が接地しなくなってしまったOTL ま、まあ上下動するものですし……

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少ないパーツで簡単に組める、象徴的な意味合いも含めておすすめなキットです。菱形戦車って思いのほかデカイものですから、ミニスケールの方が却って手を出しやすい車両かなとも。このサイズでしたら塹壕の情景なども作りやすそうです。

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その際見下ろすだけでなく「見上げる」視点を確保しておくとこの戦車の魅力・性格を伝えやすいかも知れません。ミニスケールのヴィネットはフィギュア感覚で「立ち上げ」を備えた台座と相性が良いものです。

ここからはオマケ。アーマーモデリングに好評連載中モリナガ・ヨウの「私家版戦車入門」から四回にわたって掲載されたマークI戦車の記事をちょっと大きめ画像で載せてみます。他の戦車ではなかなか見られない、史上初の存在ならではの様々なエピソードは実に興味深く、外観からだけではわからないこの戦車の様々な魅力を(大変わかりやすく)伝えてくれるものですが、未だ単行本化されていないのが勿体無いよな。むしろ戦車100年となる2016年に単行本化とかだと楽しいかも知れませんが……

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マスターボックスの「中東仕様」が装備しているフレームはスポンソン取り付け用のものなのかー。などと、外観だけではわからない菱形戦車の構造と運用についていろいろ学べます。むかしのチョコタンクの解説書みたいなもんで、こうしたソフト面の充実もまた日本でWW1アイテムを売っていく為には必要なんじゃあるまいかと……あ、前照灯付いてるジャン!!

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