ホビージャパン「戦車模型製作の教科書 MENG編」

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ホビージャパンの「模型の教科書」シリーズには既にミリタリーモデルの基本工作と仕上げまでのハウツーを説いた「戦車模型製作の教科書」がありますが、今回はここからさらに一歩踏み込んでMENGモデル製品のための製作ガイド、教科書となっています。無論ここで解説される技法やアイデアは他社製品に十分応用が聞くものですから、フューチャリングすなわち特化ということではありませんのでその点ご注意いただきたく。



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「AFVモデラー」誌との提携に見られるように、MENGモデルは積極的に出版社と連携することによって自社製品の効果的なPRに務めています。新興模型メーカーとしてはずいぶんと意欲的な取り組みかと思われますが、考えてみれば日本ではかつてタミヤが開拓した手法ではあるのかな?それはともかくホビージャパンのMENG書籍としてはT-90A写真集に次ぐ第二弾。本書でメインの題材となっているのはメルカバMk.3バズT-90AD9R装甲ブルドーザーの3つのキット。どれも優れた製品ですが、部品点数の多さや分割の複雑さなどから若干製作へのハードルが高い物となっているプラモデルです。チャレンジはしてみたいけど踏ん切りがつかない方、購入はしているけれどそのまま積んでしまった方などMENGモデル初心者にはもちろんのこと、ベテランの戦車モデラー諸氏にも効率的な製作過程を知ることで自らのレベルをひとつ向上せしめる、そんな内容かと。

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その内容に関してはとにかく細かく、懇切丁寧に製作プロセスを追っていくものです。月刊雑誌の作例記事やムック本の類でも途中経過の写真をここまで豊富に掲載したものはちょっと覚えがありません。大判のページ構成贅沢に使って、ひとつひとつの作業過程で何をやっているのか、何が必要とされているのかを平易な文章で説明していくスタイルです。T-90Aはほぼキット素組みといってよい記事ですが、パーツの切り出しやエッチングパーツの処理などちょっとしたところにワンポイントの工夫、アイデアが盛り込まれた作例です。

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メルカバMK.3のページではさらに一歩踏み込んで車体各所に様々なディティールアップが施されています。そのように3つの作例ごとに少しずつ性格の変わった記事内容になっているのですが、スキャン画像では皆同じに見えて申し訳ない……。ともあれチェーンカーテンの自作や表面の滑り止め加工処理など、キット内容にもうひとつ手を加えることでより精密に、そして自分だけの形になっていくという案配ですね。またベルトキャタピラがデフォルトの本製品に対してはサードパーティとなるフリウルのメタルキャタピラを使用し、バリ取りや開口部の処理、黒染め方法など金属製連結履帯製品へのハウツーとなっているのも見逃せないところです。

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そして各記事で使用したマテリアルについて基本的なものからかなりの変化球まで、詳しく解説されているのはありがたいところ。すべり止めの素材にはペット飼育用の「チンチラサンド」が使用されておりまして、合成プラスチックと有機溶剤に親しんだ一般的なモデラーには大変敷居の高いモフモフ・ショップの扉をくぐる際にも本書の当該ページを示せばたちどころに入手可能でありましょう。思えば防水コーキング材と歯科技工用レジンでの複製を示して以来、ジャンル外から便利な素材・工具を紹介するのも模型雑誌の役割の一つでありました。特に本書は具体的なメーカー・製品名のみならずお値段もちゃんと書いてあるのがね、お財布と相談するときに良いのよ。

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個人的にもおすすめなのがD9Rブルドーザーの製作記事です。本キットは組み立て易いものが多いMENG製品のなかでも一、二を争う難物で、なかなか簡単には手を出しづらいともっぱらのウワサ(ちなみに一番組み立てやすいのはペットボトルだといわれていますが、実は切り出し作業すら不要のタイヤセットが最も簡単です。以上どうでもよい情報でした)ですが、他社に類似製品のないプラモデルであり、最近でもネットニュースなど様々な形で話題となった車両でもあり、ある意味実にMENGモデルらしいユニークな製品です。本書の製作記事を参考にすればこの特異な車両をコレクションに加えることも、決して難事ではありません。

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ヘアスプレーを使用したチッピング塗装の手順も数多くの途中写真を使って作業過程のプロセスが丁寧に解説されます。ドーザープレート部分の大胆な金属表現も一般のミリタリーモデルではなかなか見られない大迫力で読んでいると確かに実際に手を動かしてみたくなる。近年のプラモデルは高騰化が進んで高額製品にはおいそれと手が出せない状況もありますが、ここまで豊かな内容の「教科書」を手元に置いておけば、過剰に失敗を恐れることなく自信を持って製作を進めることが出来るでしょう。

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巻末には本書作り下ろしにホビージャパン本誌初出のものも含めてMENG製品製作記事が掲載され、発売時期で言えば2C重戦車とM2A3ブラッドレーBUSKIIIまでの、すべての「ティラノサウルス」「ステゴサウルス」シリーズ製品が紹介されています(なぜか「ヴェロキラプトル」シリーズの四駆車両だけありませんね)。メインの3種で解説された技法や工夫をただコピーするのではなくこれらの他製品に応用してこそ、教科書の内容を自分なりに身に付ける「勉強の成果」ということになるのかな。

しかしあらためて見てみるに、これだけ様々なAFV関連の製品を出しているのに第二次世界大戦ドイツ軍アイテムはミーネンロイマーしかやってない。やっぱり変わったところですねえMENGモデル。だがそれがよい、そういうところ。

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