「オスプレイ軍用機 クロアチア空軍のメッサーシュミットBf109エース」

f:id:HueyAndDewey:20100902232002p:image:h250

看板で物を売るってよくあることです。昔々まだ架空戦記小説がそれなりに売れていた頃「売り上げを伸ばす為には絶対に絶対に表紙を戦艦大和にしろ」なんて言われてました。戦国物なら「真田幸村にしろ」だったか、売れ筋というのは確かにあるものです。しかしあんまりメジャー指向が強いと似たような性格のブツが増えて飽和するというのもまた確かであります。数年前に本書が刊行されたとき表紙だけ見て「またメッサーシュミットか」と、確かに思った記憶がある。なるほどメッサーファンって世界中でブイブイ飛び回ってるけどさぁ、流石にいろいろ漁りすぎじゃない?なんてことを考えた。

数年経っていまようやく内容を熟読し当時の浅慮を甚だ恥じ入るものであります…


この本原題を“Croatian Aces of World War 2”といって、地元ユーゴスラヴィア(当時)の著者によりメッサーシュミットに限らないクロアチア空軍全般の内容を扱っていて、メッサー関係ない部分の方がめっさ面白いとゆー弱小枢軸国ファンにはたまらない一冊なのでした。看板にイツワリありだな。「クロアチア空軍のモランソルニエMS406エース」じゃ売れないとは…思いますけど…

第二次世界大戦当時のユーゴスラヴィアの立場って相当に複雑なんですが、本書の観点でざっくり言うと開戦当初は親独中立のユーゴスラヴィア王国→クーデターで親英政権に→あっさりドイツに征服される→クロアチア独立国樹立→gdgd

ざっくり過ぎるがまーこんな感じか。チトーとかパルチザンとかの文脈で語られることが多い当時の状況を、空の戦いで見ていくのは新鮮です。ドイツ侵攻当時の雑多なユーゴ王国空軍(Bf109まである)から枢軸同盟国として東部戦線に派遣されたクロアチア航空兵団(独立空軍としては認められなかったのでルフトヴァッフェの編制に組み込まれ、Bf109エースを輩出する)、はたまた本土防空の任に就いたクロアチア独立国空軍とバラエティに溢れた内容で私見的には圧倒的にクロアチア独立国空軍推し。

f:id:HueyAndDewey:20100902145500j:image:w400

1944年にMS406ってヒドい目すぎるよな。これで米軍のP-38やP-47と空戦してるんですぜ。あとパルチザンを地上掃射でころころとか。

クロアチア空軍エースの特徴(?)としてはパイロットそれぞれも複雑な経歴、立場であったため脱走するひとが多いことです。

f:id:HueyAndDewey:20100902145528j:image:w400

44機撃墜のクロアチア空軍No.1エース、マト・ドゥコヴァッツ中尉(当時)の搭乗機。この後ソ連に亡命、親ソ派のユーゴスラヴィア空軍大尉としてYak戦闘機に搭乗、終戦直後イタリアに亡命、後シリア空軍に入隊し第一次中東戦争に参加って波瀾万丈過ぐるw 母国で平穏な晩年を迎えたエースも大勢いるんですけれど。

そんなわけで、実際読んでみるとタイトルと表紙画だけでは想像もつかない内容だったのでした。他のもそーなのかな、「ハンガリー空軍のBf109エース」とか絶対それ以外も居そうだよなうん。タイトルや表紙イラストなんかの見た目だけで判断しちゃいけませんね。

12月28日、イヴァン・チヴェンチェック少佐による内部からの援助を受けたパルチザンが、Do17 4機とクロアチアの指導者アンテ・パヴェリッチの個人用のJu52を破壊し、Bf109数機に損傷を与えた。スティプティッチ少佐はその責任を問われて解任され、彼の後任の1.ZSの指揮官に任命されたのは何とチヴェンチェック、その人だった!

本書を読んでてつい笑ってしまったエピソード。なんだかマンガみたいな話だけれど、旧ユーゴスラヴィアの複雑な環境ってこの時代よりずっと前から現代に至るまで、延々と醸成されてるんですね…

あわせて読みたい