「モデルアートプロファイル #07 航空自衛隊F-2戦闘機」

これ一冊で大抵のことはわかるモデルアートプロファイル、第7弾は近年ようやく正しい評価がなされてきたた感もある航空自衛隊F-2戦闘機を扱っています。「支援」の二文字は消え(平成17年の新防衛大綱より)、搭載兵装も増え、そのむかしFS-X(想像図)だったころから開発配備の流れをリアルタイムで見られた身としては、まるで近所の小さな女の子が立派な社会人として巣立っていくさまを見るかのようですね(なんでもそーゆー視点でみるな)

機種選定・開発の過程だけで既に一冊二冊本が書けそうなほど紆余曲折を辿ってきたF-2ですから、本書記事に於けるそのパートも実際読み応えのあるものです。試作段階・初期配備の時期に起きた不具合も、なにが理由でどう解決されたのか、正しく説明されている。基本、模型製作用の資料として編集された本ですけれど、この辺り妙にバイアスの掛かった主張がまず先に立つ一部の自称「軍事評論家」などよりずっと誠実な記述内容がなされて…ああいかん、すぐ脱線する。

やはりメインは写真と図面、でしょうか。コープノース・グアム演習参加機を含めて実機の写真は豊富です。(当たり前の話なんですけど)日本語で記されている機体各所のコーションレターはなんだか新鮮に映ります。陸上配備の機体とは言え運用空域のほとんどが海上を占める事情から、空母艦載機並みに塗装が傷んでいるのも特色と言えば特色か。洋上低視認迷彩って模型製作する場合に塗り幅を広く取れそうです。図面はA型/B型両タイプは勿論試作型4機ならびに搭載兵装までカラーガイドで載ってますが、巻末に折り込みで入ってる1/48スケールの「縮尺図」が原型機F-16も含めて掲載されていて、両者の違いを知ることが出来ます。やはりヒコーキは上から見てナンボです。

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模型作例はハセガワヨンパチでB型、同社72でA型を記念塗装と試作型で2種、加えてプラッツの1/144スケール組み立てキットが、どれも丁寧にディティールアップされています。この辺はMAスタンダードな作例で安心して読めるものですがむしろ各社キットリストに載ってるハセガワが過去に限定SP帯で発売してた「FS-X」にびっくり。話には聞いてましたが現物見たこと無かったものでいやむかしはよかったなあの「架空機」プラモデルなのでした。

じゃあ今はどうだろうということで、この写真は静岡ホビーショーハセガワ新製品の1/72F-16Iイスラエル空軍仕様とその新規追加パーツなんですけど、

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いやがるF-2たんのからだじゅうに無理矢理これ上手く摺り合わせてパーツ流用すれば「F-2 super kai」の立体化も不可能ではないかとッ!F-Xはこれが嫁 (`・ω・´)

…いや、そんなの「ロッキード・マーチンの戯れ言じゃ」ってわかってるんすけどね (´・ω・`)

余談。

現在でもまだ開発経緯や初期トラブルの話を元にF-2欠陥機説を唱えるひとは確かにいます。しかしそれらの多くは誤解か曲解、もしくは単なる難癖の批判であって、予算超過や開発期間の延長など「プロジェクトとしてのF-2」はともかく要求性能に基づく「戦闘機としてのF-2」は完全に成功しています。書籍等での記述の誤りが指摘されても大抵の著編者は無視するか尊大な態度で読者に接するかどちらかなのですが、「世界の駄っ作機」シリーズの岡部いさく先生が一読者からの指摘に真摯に対応され、自著で誤りを認めて訂正を記すという一連の行為をWeb上で目の当たりにしたことがあって、それに大変感銘を受けたことを末尾に記しておきます。

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