イマイ「1/12 モッズスクーター」
今日ご紹介するキットはなかなかの掘り出し物、イマイの「モッズスクーター」です。ご存知の通り株式会社イマイ(旧名:今井製作所)は2002年にはメーカー活動を終了していて本製品も絶版モノではありますが、現在極わずかながら在庫がございます。以下のレビューをご覧になってティン!と来た方には早い者勝ちなのです。
ところで、モッズとはなんぞや。こういうときにはウィキペディアが便利ですねえ。でも今の日本でモッズファッションやると「今更織田雄二キター(プークスクス)」扱いになってしまうのは如何ともしがたく遺憾であります。
またキット解説には
曲線美により美しさを感じるイタリアンスクーターはモッズファッションには欠かせないアイテムであり、現代の感覚にも見事にマッチしています。
などと書かれておりますが、つまりはこれヴェスパなのです。名前を出さずに売ってますハイ。1/12ヴェスパのカスタムバイクプラモデルだとご理解頂ければ幸いです。
成形色はいわゆるモスグリーンですが別にモッズグリーンではないぞ。苔緑色じゃて。
当ブログでは以前にもイマイのスクータープラモとしてロードパルを紹介していますが、本キットの開発時期はいつ頃のものなんだろう?パーツの構成はちょっと昔のバイクプラモといった感じでありますな。
ノーマルのヴェスパ用パーツはすべて揃っています。この「ノーマルにも組める」ことが今ではセールスポイントではあるまいか。
こちらはカスタマイズ用パーツ。要するに族車の類で、何故だか90年代には日本でもこのような改造を施したスクーターを稀に見かけた記憶があります。あの頃リバイバルブームでも来てたんだろうか。
スペアを含めた3本のタイヤには綺麗にモールド走っています。配線用のビニールパイプと、オリジナルのモッズ仕様デカール付属。
旧イマイ製品の金型のいくつかは現在ではアオシマが所持しているのですが、本製品には紛うことなきイマイのオリジナルランナータグと出荷スタンプが押印されていました。平成13年すなわち2001年、最末期の生産分となりますね……。
イマイ製品についての思い入れは皆様それぞれありましょうが、バイク模型に力を入れていたことはあまり語られていないように思われます。一時期は日本国内でのハーレー・ダビッドソン関連プラモデルの販売権(商標使用権?)を所持して様々な製品を開発していました。このヴェスパに於いても少ないパーツながら開発側のこだわりは随所に垣間見ることが出来ます。
パーツの合わせは流石にむかしのプラモデルで、あんまり良いものではありませんが……
実車はモノコック一体成型のボディーが売りでしたが、プラモデルは分割されています。おかげでボディ前面パーツを取り替えてバリエーション展開できたわけですね。繰り返しになりますがこのキット使えばノーマルなヴェスパに組むことも可能です。そこが大事だと思います。
エンジン部分はわずか3パーツながらよく特徴をつかんでいます。今井のヴェスパ(製品的にはベスパですか)は「P200E」という70年代のラージモデルで、サイドカー付きとかプラモもいろいろ出てたのね。検索してたらイマイじゃないけど「おでん屋台&ベスパ」なんてプラモもあったりして、昭和の模型文化は豊穣である。
エンジン部分には3本のパイプを這わせます。取説に実寸で切り出し長さが表示されてるんだけど、「B」の35ミリのものだけは現物合わせで多少長めに切ったほうが安心です。余裕はあります。キックペダルの頭はツヤ消し黒の塗装指示があったのでそこだけメッキを落としてみる。
スペアタイアはカウリング内に納まる懸架方式です。なかなかにお洒落なデザインで現代でも通じるなあこれは。
スタンドは固定式、マフラーはメッキパーツじゃないのですね。
フロントフォーク部分にもブレーキパイプを取り付けます。見えるはしっかり作りこんでいる印象か。フロントフォークに限らずメッキ皮膜がやや厚めなので、取り付けの際には瞬着使うよりは皮膜を削ってプラセメントの処置をした方がスムーズに組めそう。
左右のリアカウルはハメ込み式で、完成後も取り外してエンジンやスペアタイアを見ることが出来ます。このギミックはいいですな。
これでヴェスパの形にはなります。フロントカウルのモール部分など本来メッキパーツに含まれるべき箇所もいくつかありますが、いまなら良いシルバー塗料がいくつもありますから、むしろメッキを落として塗装仕上げを狙ったほうが統一して美しい仕上げになるのかもしれません。たとえ古いキットでも現代のマテリアルでレベルアップは十分可能でしょう。
こちらはモッズバージョン特有の前後の大型フレームと派手なミラー、ランプ類。クリアーパーツは無色透明でも赤やオレンジで煌びやかに塗るのがならわし。
シートの背もたれやライトのカウルなどを取り付けて完成です。以前は「スーパーベスパ】の名称で販売されていたキットの外観は当時のモッズスタイルとしては地味な方で、画像を検索すれば山ほどミラーを増設した個体を見ることが出来ます、そういう方面にカスタマイズしてもよろしいかとは、思います。
貞本義行がエヴァンゲリオンの前にニュータイプ誌に連載していたマンガ「R20」の主人公がこんなバイクに乗ってたな。イイ感じのディストピアSFでイイ感じのバッドエンドでありました。単行本化はされてないけど、なぜかyoutubeにアニメのパイロットフィルムが存在する……
ですからして1/12シンジ君なんか乗せてみたらある意味グーなんですけれど、モッズとか抜きに「1/12スケールのヴェスパ」としてアクションフィギュアのお供に良いんじゃないかなと思うわけです。昔のプラモとはいえスポークホイールやエンジン部分など古いバイクプラモの「欠点」となる箇所はカバーされておりますし、アクションフィギュアと相性が悪いバイクプラモ特有の繊細さも幸いにして持ち合わせません。
1/12ベスパは昨年アオシマから完成品が出ましたがあっという間に完売の人気商品で、かつては旧イマイのスクーター製品と共にこのヴェスパもアオシマのネイキッドバイクのシリーズで販売されたこともあったのですが、さすがにそっちも絶版です。むかしから映画やマンガ、アニメにもよく登場するにもかかわらず、いま現在このサイズのヴェスパを手に入れる機会もあまり無いのも確かなので、可愛い美少女フィギュアをヴェスパに乗せたいそこのあなた!いまがチャンス!
ガンスリンガー・ガールのヘンリエッタなんか実にお似合いだと思いますよ?「ローマの休日】風のタンデムを、ジョゼ山の代わりにコブラかエガちゃんでも乗せとけばええやん。