ウィザードパブリケーションズ「イスラエル フロントラインアーマー 」

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メルカバ戦車をはじめとする現代イスラエル軍機甲戦力の写真集です。

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21世紀に入ってからのイスラエル陸軍の実戦任務・作戦ごとのフォトを中心に作戦行動や車両の解説を行う章立て、キャプションは個別のフォトではなく1ページごとにまとめて記載されているので若干長めではありますが、記述内容そのものは簡潔な解説文なのでさほどの語学力も必要としません。

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近年はデザートイーグルの刊行物などでイスラエル軍資料も多く出回るようになり、メルカバ資料はお腹一杯って方でも、ラファエル社のトロフィーアクティブ防御システムや新型の地雷処理ローラーを装備した最先端のMk.4の姿は別腹でどんどんおかわり出来ることかと思われます。ささ、ぐいっと。

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「ミフレツェット(怪物)」のニックネームも相応しい追加装備満載のナグマチョンAPCと、対照的にスマートな外観を有するメルカバベースのナメルAPC。収録フォトの傾向としてはクローズアップよりも全体像重視で編集が成されているようで、模型的に活用するならばディティールアップよりはディオラマ全景のアイデアであるとか、単品車両の見栄えを検討することなどに向いているでしょう。

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マガフ7CやメルカバMk.2などベテランの車両も健在で、現在では予備役車両として運用が続けられています。またオールドタイマーとしてはM113系列車両にも様々なアップデートが施され、M163対空車両がヨルダン川西岸地区で20ミリ機関砲を水平に構える様子などの生々しい現代戦の一面も記録されています。

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現在イスラエルが直面している低強度紛争(Low-Intensity Conflict, LIC)ではあまり出番のない、砲兵や対戦車車両の画像があるのは資料的な価値が高いと言えます。このあたりは比較的魔改造度の低い、素の状態に近い姿なので、ちょっとの工夫で模型的に見栄えする物が作れそう。言うだけなら簡単ですけど。

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メルカバMk.4の車体四隅に設置されてるアンテナについて解説されていたのが収穫でした。近年ではMk.3Dにもレトロフィットされ非常に目立つ装備でありながら、類書であまり記載が無く現代のMBTが置かれている戦闘状況からはIEDジャマーやらAPSセンサーといったいかにもなハイテク装備の一環とも見えまして、情報が無いからにはさぞや極秘の装備に違いない、コリャイッタイナンデアロウカと数年来気になっていたのですがこの本読んでようやく解決。なんとこれは……

“LED灯を設置した柔軟なゴム製ポール”

なんですと(´・ω・`)

なんのこたぁーない、単なる車幅表示灯でした。そりゃ類書で解説しないわけだな(-_-) 現代の市街戦には確かに重要な装備であることに違いは無く、昼夜兼用ってことで夜間どのように点灯されるかについては興味の湧くところでありますが……。さすがに1/35スケールで電飾するのは難しいかな?

本年2012年もまたガザ地区を中心にパレスチナ問題は再燃し、ハマスによる無差別ロケット弾攻撃や国連でのパレスチナ「オブザーバー国家」承認に対する報復行為としてのユダヤ人入植活動など、同地とイスラエル軍をめぐる状況は予断を許しません。本書もまた生々しい実戦の記録であることは確かで、単純に趣味の写真集として捉えてしまってよいのか、ページをめくる時々に複雑な気持ちを抱えたことを――酷く偽善的ではあるのですが――記しておきます。平和裏に模型趣味生活を送るためにも、パレスチナ問題の平和的解決を願って止まない気持ちであります。

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最後に一枚、本書随一のユーモラスな写真を。ネゲブ砂漠のトレーニングセンターで仮想敵役として演技(?)しているハンヴィーです。このような仮装車両を冷戦時代にはよく見かけたものですが、近年にあっては貴重な存在かも知れません。車体後部の燃料タンクを再現してるところは実に芸が細かく思わず笑いがこぼれますけど、考えてみりゃこれも「敵味方の識別点」として重要なオブジェクトだからやってるんだよな……

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