ウェーブ「1/35 ラビドリードッグ スタンダード版」

f:id:HueyAndDewey:20140425085239j:image

遂に、とうとう、ようやくやっとで1/35スケールの新しいボトムズプラモデルのリリースが始まりました。発売元は長らくこの作品を支え続けていたウェーブ、シリーズ第一弾はTV版に於ける最終ATラビドリードッグです。6月には降着ギミックなどを盛り込んだPS(プロスペック)版も控えておりますが、今回は一足先に発売されたスタンダード版を紹介。



f:id:HueyAndDewey:20140425085924j:image

なにが嬉しいって箱のサイズが昔のタカラのボトムズプラモと同じってところが泣かせてくれます。このアイテム選択に疑問を感じる方も居られましょうが、元を正せばウェーブがまだ「ホビーショップ ラーク」であった時代に始めて発売したボトムズアイテムが「1/35スケールラビドリードッグ改造パーツセット」でした。この狂犬はウェーブのボトムズ製品としては記念碑的な、原点回帰ともいえる機体なのです。

f:id:HueyAndDewey:20140425091130j:image

パーツの配置を見るとストライクドッグと共用可能なものは同じ枠内に収めているようですね。このシリーズが今後どう展開するかはわかりませんが、旧タカラの1/35ストライクドッグは再生産がされずにプレ値の高騰が続いてますから、ユーザーの要望や潜在的なニーズは多いことでしょう。

f:id:HueyAndDewey:20140425091541j:image

青枠でもCランナーはラビドリードック専用となるパーツが集中しています。

f:id:HueyAndDewey:20140425091702j:image

f:id:HueyAndDewey:20140425091719j:image

Dランナー、Eランナーはそれぞれ2枚入り。このあたりは小回りが利くように小さな枠に分割されています。特にST版とPS版で大幅に異なる脚関係は簡単に入れ替えが可能なパーツ配置。

f:id:HueyAndDewey:20140425091959j:image

大河原邦男画伯のボックスアートではグレー風味の白と青のツートーンカラーですが、キットパーツはやや緑がかった薄い青。塗装指定ではライトブルーとなっています。このあたりは微妙なところで当時の本編映像や彩色設定でも決してラビドリードッグの差し色は「白」ではないのですが、昔から立体化の際はホワイトに塗られることが多かったように思います。且つてユニオンモデルから発売されていた1/60キットの写真パッケージが既に青白のカラーリングでしてねってあー今回古い話しかしませんからねよろしくね。しかしユニオンの1/60ボトムズって写真パッケージなのに中身と全然違うのがすごいな。ストライクドッグなんて堂々とタカラのキット写真使っていてなあ……(現在ウェーブ版で流通しているものはちゃんと中身通りになってます、よかったよかった)

f:id:HueyAndDewey:20140425094508j:image

Gパーツも2枚入り。パーツ総数は決して多くは無いのですがランナー枚数は多い。

f:id:HueyAndDewey:20140425094754j:image

Hパーツはレンズ類で、このパーツはプロスペック版ではクリアーランナーになる模様です。PS版キットの詳細はウェーブ開発部ブログに紹介されていますが、スタンダード版も当初予想していたほどには差があるものでもなく、ひとつの製品として十分に充実した内容です。

f:id:HueyAndDewey:20140425095157j:image

IパーツはST/PSとも共通でしょう。

f:id:HueyAndDewey:20140425095327j:image

JやKといった小さなランナーはST版専用のようですね。小さな枠でも色分けや形状出しはしっかり成されているのは好印象です。

f:id:HueyAndDewey:20140425095607j:image

完成するとポリキャップが露出するようなこともないのですが、それでもポリパーツにまで気を使った配色がされています。この部分へのスライド金型使用も手馴れた感じで。

f:id:HueyAndDewey:20140425095834j:image

カメラアイなどにはメタリックシールが用意されています。マーキング類のデカールが付属しないのはワイズマンの自動プラントで製造されたった一度の実戦投入で喪われた本機の設定には合致しているのかも知れませんが、ボックスアートにはいろいろ描かれているだけにちと残念。PS版にもデカールの話は聞こえてこないですね今のところ。

f:id:HueyAndDewey:20140425095919j:image

大河原邦男描きおろしによるオリジナルイラストが当時の雰囲気を甦らせてくれますねー。またガイアノーツのボトムズカラーシリーズの宣伝リーフレットも同梱されていました。

f:id:HueyAndDewey:20140425100344j:image

ボトムズのプラモデルといえばタカラの1/24スコープドッグをカミサマのように崇め奉るのが長年の慣習とされて来ましたが、1/35スケールをホームグラウンドとしてきたモデラーも在野には多いものです。1/35派にとっては救世主のような存在、まさに神の子なのであります!(オーバー)

f:id:HueyAndDewey:20140425100822j:image

旧タカラのキットでは頭部や胴体の真正面に合わせ目が来ていたものですが、実にツボを押さえた設計でパーツ見てるだけでもどんどん時間が過ぎていくぞ。

f:id:HueyAndDewey:20140425101026j:image

追加のモールドに関しても決して過剰に陥ることなく適度に施されています。手馴れている感は流石といったところか。

f:id:HueyAndDewey:20140425101216j:image

スナップフィットも気持ちよく合わさって行ってバンダイのガンプラと比べても全く遜色がありません。ウェーブはまだレジンやソフビが主流だった「ガレージキットメーカー」がインジェクションを手がけ出した先駆的な存在で、長年の経験値はこんなところにも結実しています。で、前述のようにST版ではレンズがクリアーパーツではないのですけれど、

f:id:HueyAndDewey:20140425101527j:image

カメラアイの内側にはこのように綺麗なモールドが!これを隠すのはあまりに忍びないので……

f:id:HueyAndDewey:20140425101651j:image

結局H1パーツは未使用で頭部組んじゃいました。なんでもHアイズの角型にぴったり一致するパーツがあるそうで、それを使えばクリアー化も容易だそうな。

f:id:HueyAndDewey:20140425102138j:image

胴体部分に限らず本キットはパーツの合わせ目がほとんど目立たない、あるいはディティールとして成立するような設計がされています。

f:id:HueyAndDewey:20140425102345j:image

スタンダード版でもハッチの開閉ギミックやコックピット内壁は存在していて足りないのはシートとフィギュアぐらい。見せないところでもメカニクスらしさがちゃんと在るのは製作過程を楽しいものにしてくれます。なおJ1パーツはシートの接合部分をふさぐ為の単なるフタなので敢えて使わず。

f:id:HueyAndDewey:20140425102629j:image

このように流し目もバッチリ決まります。やだこれかっこいい…(ビクンビクン

f:id:HueyAndDewey:20140425102726j:image

バックパックくぱぁ。レールのスライド可動も実にスムーズ。この箇所では板状に成型されているC3パーツが本来コの字状のフックなので、数少ないディティールアップのポイントでしょう。

f:id:HueyAndDewey:20140425103024j:image

腕部は一見するとなんてこともない形に見えますが、実は色々工夫があります。上腕部G1パーツは筒状の一体成型で合わせ目もパーティングラインも無く綺麗に組み立てられ、

f:id:HueyAndDewey:20140425103231j:image

肩のアーマーは合わせ目のライン上に存在するリベットのモールドが実に精密な成型でうまく逃がされている。このキットで一番好きなのはここかも知れない、細かすぎて伝わらない選手権です(笑)縁取り部分のモールドが一段盛り上がっているのも嬉しいところで、タカラのキットはこの部分が貧弱だったのですよー。そこでリベットモールドを一旦全部落としてプラ板で縁取り作った上に再度リベットを等間隔で植えつけるのが定番工作だった、そんな時代もあったよねと中島みゆきが……

f:id:HueyAndDewey:20140425103859j:image

肩のブロックは「ブロック」ではなく開放された形状に独立した関節ユニットを収める配置になっています。この構造はバンダイ1/20スケールのスコープドッグいわゆるバンタコに相似していて、他にもいくつか歴代のボトムズ模型を参考にしているようなところも見られます。ささやかな工夫も遥かな時の彼方には人智を越えた神聖を獲得できるとワイズマンもゆってる。

f:id:HueyAndDewey:20140425104231j:image

アイアンクローは勿論可動。パーツそのものは(あまり目立ちませんが)肉抜きされているのでこちらも数少ないディティールアップのポイントか。カギ爪だのヤリだのとボトムズの強メカには大抵原始的な武器が備わってるのはまー慣わしですな。いちおうビーム兵器も存在する世界なんだけどな……

マシンガンの銃身はいささか貧弱にも感じますが、ここんところはクロー部分との兼ね合いから簡単にはいじれないかも知れませんねうーむ。

f:id:HueyAndDewey:20140425105006j:image

専用銃の握り手は軸のパーツにオプションがあって角度を3通りに選べます。これラビドリードッグよりもストライクドッグでこそ活かされるギミックではないだろうか。ところでこのラビタコの専用銃、いまでこそ「ソリッドシューター」が公式設定のようですが、古いムック本みてたら「アサルトマシンガン」とか「16ミリ機関砲」とか記述バラバラで大らかな時代っていいよなあ、なーにATなんて一発当たればなんでも即座に爆裂四散!なので火器の設定なんて別に細かく詰めなくてもいいのだ(えー

f:id:HueyAndDewey:20140425110148j:image

脚部について、大腿部がブロック上ではなく開放式で関節ユニットがあるのは肩と同じく。ギミックよりアクション優先の膝関節はシンプルながら、広い可動範囲から見える部分でふくらはぎの内側を隠す為のパネルがパーツ化されています。実にイイ感じの処理です。

f:id:HueyAndDewey:20140425110538j:image

足首の関節はボールジョイントで動くのですが、元デザインから来る不都合さ、そのまま立体化しても広く取れない可動範囲の問題を、スネへの受けを棒状にして伸縮させることで、デザインを損なわず可動範囲を広げて接地性を高める工夫がなされています。

f:id:HueyAndDewey:20140425110827j:image

なんとな~く古いホビージャパンのボトムズ記事を見ていたら、91年11月号の波佐本英生氏作例記事がまさしくそれをやっていてビックリ。このキットには長年にわたって原形質保存装置に蓄えられたボトムズ野郎どもの知識と力が与えられているのだ!しかしこの記事って当時ウェーブが出していた千葉延生氏原型によるレジン製フルキットのニューキットレビュー記事なんですが、ディティール追加にプロポーション変更、さらには頭部を丸ごと新造とすごい事やってます。この時期波佐本氏はウェーブに在籍してたかとも思いますんでその関係があるのかも知れませんが、それにしても90年代のHJはロックだ(笑)

f:id:HueyAndDewey:20140425111517j:image

膝も足首もよく動いてくれます。むかしの1/35キットは接地性低かったからねえ、こんなによく動くサンゴーのATプラモみたら目から酸の雨が出ますよいやホントに。

f:id:HueyAndDewey:20140425112027j:image

腰部装甲板は当然のようにすべて独立可動、

f:id:HueyAndDewey:20140425112125j:image

裏側にはモールドも存在します。かっけEEEEEE!!ウェーブには嘗て「EDスコープドッグ」というオーパーツみたいな傑作レジンキットがあってだな、なんだかそんな感じである。当時は高価なレジンキットでしかやれなかったことが、いまならインジェクションで出来ます。

f:id:HueyAndDewey:20140425112512j:image

ST版でも股関節軸にはスライドギミックが存在します。本来は降着姿勢を取るための処置ですが、無論アクションシーンでも活用できます。バンタコもそういうことが出来たよなそういえばね。

f:id:HueyAndDewey:20140425112708j:image

ラビドリードッグの立体化そのものは決して珍しいことではありません。ウェーブではそれこそ極初期の改造パーツセットから始まって1/35や1/24で定期的に(?)レジンキットをリリースしていましたし、ガレージキットや完成品トイは各社から大小様々に発売されています。しかしここまで安価且つ簡単に組めていくらでも弄繰り回せるプラモデルとして手に入るのは実に画期的です。最近ではスーパーロボット大戦のゲームにも登場している機体ですから年寄りばかりではなく新規のボトムズファンにも十分アピールし得るキットでありましょう。

f:id:HueyAndDewey:20140425113551j:image

左足をやや斜めに開いた大河原立ちもなんら苦も無く決まります。最近のロボットプラモはスタンド利用で飛んだり跳ねたりするのが定番ですが、しっかりと地に足の着いたスタイルが昭和のリアルロボットなのだ。ラウンドムーバーのことは気にするな。

……ところでスパロボのプレイ動画見てたらATが空中をローラーダッシュしていたんですがあれは。

f:id:HueyAndDewey:20140425113854j:image

バックパックの爆雷投下装置には爆雷も付属します。特に接着するものではないですがレールに仮止めで。しかしこのギミックて仰々しい割りにはあまり役に立ちそうもないよな。クエントでキリコが使用したのはギルガメス・バララントの大軍に追っかけまわされるのが前提だったからで、OVA「ビッグバトル」に登場したパープルカラーのメルキア軍仕様はどーなってましたっけこれ?ビッグバトルのラビタコはエクルビスに瞬殺される雑魚い役どころだったんで全く記憶に残らない……

f:id:HueyAndDewey:20140425114253j:image

プレイステーション用ゲーム「鋼鉄の軍勢」にはギルガメス軍正式採用機に加えて雪上戦仕様の“フィアズリードッグ”が登場します。オリジナル機体を作るための素体としても活用できそうなプラモです。あ、「素体」ってボトムズらしい響きですねー。

f:id:HueyAndDewey:20140425114718j:image

「戦争こそ歴史の創造主だ、進歩の動力源だ」

「全宇宙の奴らに、果てしない地獄を与えてやるんだ」

などとブツブツつぶやきながらテレビシリーズを追憶するのがやはり楽しい。中二病の臭いがプンプン感じるセリフですがキリコさんまだティーンエイジャーだったから仕方ない。設定では18歳ですから名探偵コナンの灰原哀(変身前)や魔法のプリンセスミンキーモモ(変身後)と同い年ですね。おかしいだろ色々。

f:id:HueyAndDewey:20140425115642j:image

1/35スケールですから同スケールのミリタリープラモとは昔から相性が良いものです。ボトムズのミリタリー感覚としてはクメン編で描かれたようなベトナム戦争のスタイル、あるいは(同人誌関係では根強く展開されている)ギルガメスとバララント両陣営を独ソになぞらえた第二次世界大戦風などがありますが、ラビドリードッグなら現用ものが似合いそうに思われます。中国軍などには見慣れない形のAFVが色々ありますから、違和感なく情景に組み込めそうでもあり。

f:id:HueyAndDewey:20140425120119j:image

股関節落として低く身構えさせるとウルトラかっちょええ!!今後もこのシリーズに多くのATがラインナップされることを願います。PS版を待ってST版には手を出してない方が居られましたらそれはちょっと勿体無いかも知れませんようむうむ。なにせこのスタンダード版では脚の動きがかなり良いのですが、降着ギミック盛り込んだPS版で両立できているかは謎であります。

f:id:HueyAndDewey:20140425120442j:image

ほんで股関節を下げて直立させると小顔長脚でHJ91年11月号の波佐本作例にそっくりなプロポーションになるんだけれど、これって意図したものなんでしょうかしら、ちょいと気になります。

あわせて読みたい