エデュアルド「1/72 メッサーシュミットBf 110Dウィークエンド」
第二次大戦中のドイツ空軍複座戦闘機のインジェクションキットです。エッチングで有名なエデュアルドにはいくつかインジェクションキットのフォーマットがありますが、本製品はプラスチックパーツのみで構成された「ウィークエンド・エディション」のシリーズです。
クリアーパーツが円形ランナー枠の内側で放射状に成形されている配置は初めて見ました。どんなメリットがあるんだろう?
本製品は大戦初期に航続距離を延長したD型をモデライズしています。エデュアルドの1/72Bf110としては後発のバリエーション製品で、先行キットの不用パーツがほぼそのまま入っていますから組み立てを間違えないよう、その点には注意しましょう。ランナー画像を見ればわかるのですが胴体が丸々一機分余剰になるんでビビった……
デカールもシンプルに一機分のみ、1940年にノルウェーに配備されていた「M8 0K」機です。ハーケンクロイツはヨーロッパ市場の特性に併せて2種用意されているのに注意。
パネルラインのディティールなどは現在の1/72エアキットとしてはごく一般的な、非常に丁寧な彫刻が施されています。最近の大抵のインジェクションキットはどこもレベルが高くてなかなか比較になりません。まれにスゴくヘンなものとか、出てきますけどね……
計器盤やパネルなども繊細なつくりになっています。このあたりは元々エッチングなどのディティールアップパーツを出してたところだって言う、メーカーの性格が設計にも反映されているのかしらん。
コックピット部分はインジェクションパーツのみでもここまでの解像度です。近年の1/72モデルはこの部分に傾注するのが流行りなのか、タミヤやファインモールドの零戦となにか同じような空気を感じます。
三人乗りの人員区画、中央部分に所狭しと並べられたMGFF20ミリ機関砲の弾倉(予備を含む)が異様な存在感で、航法士の仕事って大変だったんだろうなぁとか思わされます。御覧の通りシートは一番貧弱です……フィギュアを配置せずとも乗員の動きが目に見えるようで、人の想像力を刺激するのは良くできたプラモデルの効用ですね。
主翼の貼り合わせはぴったり決まりますが、エンジンナセルの組み付けには若干ズレが出るようです。バリエーションキットとしては、よくあることではありますが。
コックピット内壁部分、一部の計器はデカールが用意されています。モールドで再現された主計器盤とは表現に差が出る処理ですが、一応主計器盤もモールドなしのパーツとデカールは用意されています。
スマートな胴体部分の貼り合わせは主翼と同様にピッタリはまります。が、
やはりここでも機首先端の取り付けは隙間が出来ます。エアモデルの通例としてはパテによる処理とパネルラインの再生作業が必須となるのかも知れません。でも「ウィークエンドの作業時間で気軽に形にする」ことを第一にするならば、あまり気にしなくてもいいのかな?や、別段土日だけで完成させなきゃイカンって話でもないのですけど。
後席のMG15機関銃、機関部下方についてるなんだか「提灯」みたいな部品は薬莢受け。1/72スケールのインジェクションパーツではまず見かけないもので、こういう細かいところの気の使い方に好感を抱きますはい。
1930年代に開発された双発戦闘機としては小型でスマートな部類に入る機体だそうですが、士の字に組めばそれなりに大柄です。
キャノピーは操縦席部分のみ開閉選択式、前面の防弾ガラスも別パーツ化されています。フレームは桁数が多くマスキングシートも付属しないので塗り分けは大変かも知れないな……
主脚柱はそれなりに複雑な構造です。なんとなく華奢に感じるのは同じメッサーシュミットのBf109から受けた先入観で、根拠のないサベツ意識である(ヒドい)
D型の特徴となる胴体下面のコンフォーマルタンク。ある種の海鳥を思わせる独特な作りはBf110の系列では相当特異な存在なんですが、このタイプのBf110ってむかしフジミが1/48・1/72で共にリリースしていて長年プラモを見かけていたので、個人的にはBf110と聞いてすぐ思い浮かぶカタチのひとつだったりします。
Dackelbauch(ダックスフントの腹)と呼ばれたこの機構、飛行性能ガタ落ちで事故もあったりしたのでやがて廃止されてしまうトンデモ的な装備とみなされるかも知れませんが、いわゆる「スリッパタンク」自体は第二次大戦初期の戦闘機には稀に見られるものです。
いろいろ装備品取り付けてひとまずは完成です。プロペラはともかく排気管の取り付けを最後に回す意味って一体。
メッサーシュミットBf110は1930年代中ごろにトレンドだった高速長距離侵攻戦闘機として開発されました。二基の大馬力エンジンと軽量な機体に重武装を備え、爆撃機を護衛し敵国領域に侵入し迎撃機をバタバタ撃ち落として……という当初のコンセプトが「画にかいた餅」だったのはバトル・オブ・ブリテンの戦訓としてよく知られるところです。あ、アンテナ曲がってる……
結果としてスピットファイアなど同時代の単座戦闘機に比べて運動性能に劣るものではありましたが、その高速性能と兵装搭載能力を生かして戦闘爆撃機や夜間戦闘機として終戦まで活躍は続きました。Me210/410といった後継機も暫時開発が続き、双発戦闘機のコンセプトそのものは決して間違いではなかったと言えるでしょう。
イギリス人パイロットもBf110を重武装で警戒すべき敵機とみなしていたとかで、早々御しやすい相手ではなかったようです。ソースは最近見かけたどなたかのツイートです(え)
最近ずっと「ヒコーキ模型は飛ばしてナンボだ」みたいな気持にとりつかれていて、普通に地上姿勢で組むだけではない何かを模索したいとこなんですが、どうもうまいアイデアが見つかりません。ディスプレイスタンドにも汎用のものはありましょうがなんかこー、もっと躍動感あふれるディスプレイってないかな……
欧米のお子様によく見受けられる「天井から吊り下げる」が、意外に正解なんじゃって気もするのですよねうーむ。
不用パーツのなかには爆弾や増槽もあってこれはこれでいろいろ使い勝手がありそうです。のちにD型に搭載された主翼懸架の300L増槽ってどれじゃろか……
ウィークエンドエディションってことで土日の週末だけで組めるのかと聞かれたら「不可能ではないですがご家庭のある方は事前にご家族の了承を取っておくことが絶対に必要でしょう」と申し添えておきます。