キャラアニ.com「バンダイボックスアートコレクション 小松崎茂」

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旧トイズワークス発売の箱入り装丁イラスト集です。シュリンクはがして箱から出したらこんな表紙。

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いまなら破格の75%オフで入手可能!てなところから入るのはあまり好きではないですが、この内容が1000円というのはお買い得でありましょう。言わずと知れた小松崎茂画伯、いまでこそ「画伯」なるワードはヘタウマとか単純に下手糞であるとか皮肉めいて用いられる単語ですが、業績と尊敬を以て文字通りに画伯と讃えられたひとりの画家の膨大な作品の中から、70年代バンダイ製プラモデル、特にキャラクターモデルのボックスアートを中心とした内容です。

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バンダイのプラモデルが旧イマイ製品を引き取る形でスタートしたのは日本模型史上に残る有名な出来事です。この本の収録内容も「サンダーバード」や「サブマリン707」を始めとする旧イマイ製品のバンダイパッケージから始まっていて、その点では「今井科学キャラクタープラモ全集」を補完するような意味合いを持つものかも知れませんね。バンダイオリジナルではないこれらの製品、復刻というのもなさそうですし生産数も(おそらく)そんなに多くないでしょうから、資料的には貴重な内容かな。

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旧イマイ製の「アタックボーイ」バンダイ版に見られるような、戦前から少年雑誌の口絵等に幾度も描かれて来た「空想科学」感全開の一枚から「仮面ライダー」シリーズのようにTV番組の映像を臨場感豊かにキャンバスに落とし込む様なものなどスタイルは様々なのですが、Xライダーの愛車クルーザーに見られるような細密な書き込みが、それら対象物に存在感を与えているのは間違いのないところです。レトロタッチのロボットが恐竜と激闘する「リベットボーイ」の原画は迫力満点で鼻血が出そうなほどコーフンしますがスキャンはせずに買った人だけのお楽しみにと(ググればすぐ出るとか、言わんよーに)

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1972年のアニメーション版「月光仮面」といった存在自体が珍しい物や、ブツ自体は超メジャーなライディーンのゴットバードを、しかしあまり類を見ない真正面から捉えた構図など面白いイラストがいくつも発見されます。例えば小松崎茂の画業全体を回顧するような大仰に構えた観点だと、こういうモノは見落とされちゃうかもしれないなあ。

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珍しいと言えばモノトーンで彩色されたイラストはちょっと珍しいかもしれません。絵物語などの「挿絵」はともかく一枚絵としては総天然色(懐かしいフレーズ)の画を数多く手がけてきたように思われますので、これらの作品のように色合いを抑えたイラストはちょっと目新しく感じます。玩具を貼りつける台紙の背景として描かれたためのモノトーンなので、当時の子供たちの目線で一枚の絵画として見られていたのかはともかく、色数が少ない分を筆使いの繊細さで補っているような、なんでしょうね……ゴレンジャーなんかはフルカラーより写実的に見えるんでちょっとフシギ。

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そのほとんどは当然のように絶版商品なのですが、いくつかは近年に復刻再生産された物も含まれています。ゲットマシン各機やグレートマジンガー秘密基地などは未だ記憶に新しい人も多いでしょう。巻末には関係者による対談が掲載され、特にこのゲットマシンのイーグル、ジャガー、ベアーそれぞれの箱絵についての配色の妙などが語られています。絵心をまったく持たない自分には判り難い話でもあるのですが…

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この大恐竜シリーズ「イグアノドン」を例にとってみましょう。実はこのイラストってイグアノドン業界(何?)では有名なハイデルマンの「走るイグアノドン」復元想像図をトレース・再構築して描かれたものです。

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(国立博物館「特別展イグアノドン」図録より抜粋)

オリジナルと比べてみると小松画では荒々しいタッチを強めた皮膚、眼光鋭い目元など、いかにも凶暴そうな全身像は子どもの好きな「怪獣」と化した姿。背景に描かれた噴火する火山も緊張感を与える要素として重要ですが、オリジナルでは2頭が並走していた構図に手を加え、手前の1頭だけに焦点を絞っているのが特徴だろうと思います。主題を明確にすること、購買意欲を刺激すること、ボックスアートに大事なのはそんな要素か。

パッケージと中身が全然違うことは対談でも語られています。それが問題にもならなかった70年代から、技術が進歩しより「実物」に近づいたプラモデルが求められるようになった80年代にはボックスアートから小松崎画が消えて行ったことなどが語られています。初版ゼンマイボックス付きとそれ以降の「宇宙戦艦ヤマト」パッケージ画の変化は象徴的です。

個人的にはプラモデルは購入時から製作途中、完成した後の時期になってもその魅力の多くを「人の想像力を刺激する」所に負っているだろうと考えるので、例え箱の中身とどれほど違っていたとしても、いやむしろ違っているからこそ、これらの絵画には意味があり、魅力を持ち続けるのだろうなーと、

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「動物ボウリング・いのしし」原画を見ながらしみじみ思う。いや、笑うのは簡単ですよ「タモリ倶楽部」にも取り上げられてた気がしますし…けれどもその、「動物を使ったボウリングのプラモデルを作ります。現物はこれです」と言われてどれだけのひとがここまでの画を描けるだろうなあとか、まあそんなところです。

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