ソフトバンククリエイティブ「マスターファイル ラウンドバーニアン FAM-RV-S1バイファム」

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ロボットアニメの登場機体に「リアルな」設定を付加するソフトバンクのマスターファイル、最新刊は今年放映30周年を迎える「銀河漂流バイファム」です。

以前「今年はザブングル31周年です」とか書いた覚えがありますが、それはつまりダンバイン30周年ってことであり、おまけにクリィミーマミも今年が30周年だったりします。なんて濃ゆいんだ1983年。

マスターファイルの既刊をお読みの方ならご存知かと思われますが、本シリーズにおける記述は(本書オビにもある通り)あくまで編集サイドによる「独自解釈」、番組公式の設定ではありません。それもあって「よくできた同人誌」と言われることもありますがさあ、それはどうかな?

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詳細なディティールを存分に観察できる線画と3DCGによるフルカラーイラストを用いてブラッシュアップされたバイファムの姿形は現在の目でみて全く遜色のないものです。奥付にはウェーブの名前も見えるので先ごろ限定販売されたレジンキットのデータも使用されているのでしょうけれど、やはりオリジナルデザインが魅力あふれるものであればこそ、30年後の今でもこのような本が存在し得るものであり。

腹部の機体ナンバーが単なるペイントではなく発行表示パネルになってるところに注目です。未来世界にこのフォントのデジタル数字はナンセンスかもしれないけれど、「80年代の空気」には合致しているように思える好アレンジ。

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例えば、これがガンダムシリーズの機体でありますとプラモのインスト始め設定解説が山ほどあって相矛盾しその解釈をめぐって論争が起きたりするものですが、幸いにしてかバイファムを始めとするラウンドバーニアン各機についてはこれまで殆ど類書や製品の設定記述を見ないもので(昔BクラブのEBシリーズにはあったかも知れない)その辺の瑕疵に悩むことなく記述を読み進められるのは良いことですね。

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モビルスーツやヘビーメタルとは全く異なる設計思想によって作られた「ラウンドバーニアン」の内部構造を解説するパートは本書の中でもいちばんの読みどころと言えるでしょう。全身各所に配置されたラウンドバーニアを駆使して宇宙空間で高機動戦闘を行うためのメカニクスを、現実的な質感を持つ物として再設定する記述とイラスト。

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薄れかけた昔の記憶の解像度を高めるような意味もありますが、本文を読んでいるとそこかしこに「バイファム」の世界観を補強していく記述が見られます。日本サンライズのロボットアニメとしては珍しいことに主人公サイドの方が技術的には優越した戦争を描いたユニークな作品で(なにしろ子供が扱っても敵の正規軍機と十分に渡り合えるのだ)、本編の公式設定の骨子はそのままに、矛盾することなく昇華されている…ような。

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記事のメインとなるのやはりバイファムですけれど、ネオファム・トゥランファムそしてみんな大好きディルファムと、地球軍のRVはすべて網羅されています。唯一の地上用RVディルファムの独特の開発経緯とエラくカッチョイイCGを見ていると猛烈にプラモ作りたくなりますが、とっくの昔に品切れだ(´・ω・`)

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機体のカラーバリエーションや装備の変遷を解説するイラストにはさりげなく(?)本編に登場したRVが並んでるところはニヤニヤして良いんだろうなあ。本書を読んでいると今の技術でリファインされたバイファムのプラモデルが猛烈に欲しくなる欲求に襲われるのは仕方が無いが、まずそんなものは出ないし仮に出てもアレなことしにかならんのだろうなあ…

※ワンフェスで発表があったようにROBOT魂でバイファム発売されるとかで、それには期待しています。洗練された外形とガシガシ遊べる頑健さが兼ね備えられていれば良いですね。

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イラストは豊富に掲載されていますがやっぱりこの本の美味しいところは活字の記述でしょう。硬質でクールな文体から醸成される雰囲気こそが、80年代に求められていたロボットアニメの「リアルな」志向を、今の世の中に伝えるものです。あのころだって公式も非公式もなかったですしね。特にスリングパニアーの開発経緯は読んでいて唸らせられるものでして、何ゆえ旧式のネオファムにバイファムのそれよりは洗練された形状のスリングパニアーが装備されていたか、納得できる独自設定が記述されています。巻末には2本のショートストーリーも掲載され、地球人とククトニアンとの戦いをテレビシリーズとは違った観点で読むことが可能。

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「13」がね、いいよね。

後付け設定を積み重ねても破綻が無いのは大元となるストーリーの設定基盤がしっかりしていたこと、あくまで主人公である子供たちの視点を通じて世界を魅せていた演出の妙など、オリジナルシリーズの構成が優れていたことによるものでしょう。本書の記述内容も原点を尊重しながら巧妙に追加要素を配しているように見受けられます。マスターファイルシリーズは稀に「よくできた同人誌」と揶揄されることもあるのですがそんなことは無く、これはとてもよくできた商業出版書籍です。

読んでいると自分の鼻息が荒くなるのがハッキリ自覚できる一冊で、その興奮を抑えて記事化するのが実は大変だったりする(w;

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