タミヤ「1/24 スクーター(4点)セット」
たまにやってる絶版キットの発掘レビュー、今回はタミヤのカーモデル製品の中でも一、二を争うほど(?)マイナーな物ではないかと思われる「MOTOR SCOOTER SET」(英名)です。品番としては「1801」が割り振られています。
ハコ開けてみるとボックス内は中仕切りされて四枚のランナーが入ってます。さて、タミヤ製品に詳しい方なら4ケタの品番が振られた製品はかなり特殊なものだとお気づきでしょうが正体を明かすとこのキット、1/24カーモデルシリーズの一部製品に封入されてるオマケのパーツだけ抜き出して一個の商品パッケージングにしたものです。
1946年から2000年までに発売されたタミヤのカーキットがほぼ網羅されている文藝春秋の名著「田宮模型全仕事2」にもボックスアートがモノクロで一枚掲載されてるだけ、おまけにキット内容の記載に誤認があるというマイナー過ぎに程がある存在で、同書によると発売は1991年12月とあります(記事ページには書いてないけど、巻末の一覧表に載ってる)。ちなみに定価は300円。スクーターのパーツ自体は80年代の開発で、それぞれ1/24スポーツカーシリーズ初期の国産乗用車キットのオマケとして封入されていました。察するにマルティーニポルシェやセリカLBなどサーキットのレースマシンで始まった同シリーズが一般の国産スポーツカーへとラインナップを増やしていく際に、先行他社のキットと差別化を図って…というような位置づけかと思われます。さすがにこの辺の話題が採り上げられた話を聞きませんのであくまで自分の、想像の範疇ですが。
ではキット内容を見ていくことにしましょー。
ヤマハ・ベルーガ:このパーツは元々品番24019のトヨタ・ソアラ・ターボ2000VR、同じく24021トヨタ・セリカXX2800GTに付属していました。
スズキ・ジェンマ:24023ニッサン・スカイライン2000RSに付属。
ホンダ・タクト:タクトいろんなカーモデルに付属していて24018ニッサン・レパード280X・SF-L、24020ニッサン・レパードTR-Xターボ、24025ニッサン・スカイライン2000RSに入ってました。本体のクルマと付属のスクーターについては関連や関係性があるんだかないんだかヨクワカラナイ…
ベスパ50S:このキットだけちょっと素性が変わっていて、24034キャンパスフレンズセットで女子大生のギャル(死語)が乗ってたものです。関係ないすけど「田宮模型全仕事2」に掲載されてるキャンパスフレンズセット新発売当時のタミヤニュース記事は80年代臭がスゴ過ぎてむせる(笑) 「女の子のスカートは、うれし恥ずかし前後2分割」って純朴な時代だよな…
この他タミヤの1/24スクーターモデルとしてはヤマハ・タウニーとホンダ・モトコンポがありますが、この2種はセットに含まれません。タウニーはタクトと並んで多くのモデルに入ってたんですが、なんで省かれたんでしょうね?モトコンポはちょっと別格で初代ホンダシティのお伴としてちょっとしたブームだったのを思い出します。
四車種分を一枚にまとめたデカールと星のマークもおなじみのセメダインが入ってます。あと今回使用した製品には1982年度版タミヤカタログの宣伝短冊が入ってて…ってアレ?このキット本当は何年の発売なんだ??むむむ…
そうそう、10年ほど前にオープンハウスで訪れた田宮模型本社のロビーに小さな射出成型機が置かれていまして、その場で製造されおみやげとして頒布されていたのが何かのスクーターモデルでした。あー、ベスパだったのかな?先日のホビーショー、一般公開日には併せてオープンハウスもやってたはずなんですけど、いまはどうなってるんでしょうね。
基本は2枚合わせのシンプルなモナカ構造ですけれど、実車同様に後輪片手持ちの車種が多いです。その辺りはさすがのタミヤで真面目にスケールモデルしていますね~。
ベスパ50S:イタリアの世界的に有名なスクーターがベスパです。1946年からスクーター生産を手がけているイタリアのピアッジオ社製。ベスパのスタイルはスクーターの原点とも言えます。50Sは49cc2サイクルエンジンに4速ミッションを装備したモデルです。車体色にはホワイトやオレンジ、レッド、ブルーなど6色が揃っています。
スズキ・ジェンマ:1981年、スズキから登場したスクーターがジェンマです。エンジンは2サイクル49ccで3速オートマチックトランスミッションを装備しています。セルなどの装備違いで3機種が用意されていますが、キットはトランクも標準装備されたデラックスタイプです。車体色はレッド、ホワイト、ブルーなど4色があります。
ホンダ・タクト:1980年に初登場、その後のスクーター人気の口火を切ったのがホンダのタクトです。エンジンは2サイクル単気筒49cc、自動変速で軽快な走行を生み出しています。手軽さとファッション性が幅広い人気を集め、スクーターブームを作りだしたのです。車体色はイエロー、レッド、グリーンなど5色があります。
ヤマハ・ベルーガ:1981年、ヤマハが発売した本格的なスクーターがベルーガです。直線的なラインを基調にしたモダンなスタイルが大きな特徴。50cc型と80cc型の2種が用意され、CV80Eは80cc型です。エンジンは79cc2サイクル単気筒でVベルトを使った自動変速機を装備。車体色はレッド、ホワイト、ブルーの3色が揃っています。
簡潔な車種解説はボックス横の説明文から。毎度のことながらタミヤの解説は短い中にも十分に情報が詰まった、模型解説のお手本みたいな文章だなーと思わされますね。それぞれ成形色にクレオスのトップコート光沢を吹いただけですが、ベルーガのみパーツ合わせが宜しくなかったんでパテ使用→白サフ→光沢スプレーの流れで。
並べてみるとベスパとベルーガが大きく、タクトとジェンマは小ぶりです。付属モデルに選ばれる基準はそのあたりの原価差だったりするでしょうか?ブツとしてはあくまでオマケの範疇のものなんで、組み立てるのは簡単でも仕上げるのは難しいかも知れません。一体化が進んだ車体の、くの字状に折れた内側の合わせ目を消していくのは当時としてもそうそう容易いことではなかったろうな…
それでも、「タミヤのスケールモデル」らしくないポップな彩りと手のひらサイズのカワイイ造型には何らかの可能性が見出されそう。「スイーツデコレーション」のシリーズで女性層にもタミヤ製品を積極的にアピールしている昨今ですから、なにがしかの方向性があってもいいのかな、と思います。いまどきはスクーターをモデル化しようと思ったら1/12スケールで且つ完成品だってのが実情でしょうけれど。