タミヤ「1/24 ラ フェラーリ」
タミヤ1/24スケールNo.333、「ラ フェラーリ」です。おお、ゾロ目ですな。なお今回のレビューは例によって正式発売以前に頒布されたサンプルを使用しているので、例によって正規流通製品とは異なる部分が存在する可能性があることを、例によってあらかじめお断りしておきますので、例によってそのように受け止めていただければ幸いです(一礼)
タミヤのニューキットを紹介するのはこれまでもたびたびやってきましたが、カーモデルは初めて……かな? 箱開けて製品内容初見でのインプレッションは「パーツ少なッ!」って感じなのですが、カーモデル一般と比べてではなく9月のホビーショーで見た完成品が非常に密度の高いものでしたので、そっちの印象に引っ張られた面が強いか。でもなんとなく10式戦車などとも通じるところがあるような、タミヤらしいパーツ構成です。
タイヤとその他小パーツ類。タイヤ自体も非常に美しいディティールが表現されておりますので、ぜひ実際に現物を目にしていただきたいものですね。
デカールとインレットマーク、ウインドウ塗装用のマスクシールに加えてメッシュ2枚が付属します。
適度な一体化と直線や曲面のメリハリの効いたシャープさは流石の一言に尽きますな。
タミヤによるフェラーリGTマシンのキット化は2007年のエンツォ以来で(実車と同様に)久しぶりのフラッグシップ交替と言えましょうか、タミヤってFRのフェラーリ車は出さないんだな……。ともあれ近年のアイテム開発はずっとメーカー公認で実車取材や資料の提供も盛んでしょうし、3DCADによる設計は実物と寸分違わぬ模型を生み出すことが可能なのでしょうね。モデルグラフィックス誌の本年5月号ではエブロの木谷氏がタミヤ在籍当時に手がけたフェラーリF40の設計エピソードを語られていますが、良し悪しはともかくとしてそういう「職人芸」的なものは見られなくなっているのが昨今ですか。
以下、取説手順に従って工程ごとの組み立て過程を見ていきます。
・1:エンジンの組み立て
フェラーリ初のハイブリッドエンジンということでとても重要な部品です。このエンジンの仕様やスペックなどは同封される実車解説に詳しいのでしょうが、残念ながら本サンプルには未封入でした。モーターはどんなんだとかミッションはどういう仕組みなんだろうかと興味は尽きませんがここは敢えて何も調べない。そのほうがきっとトンチキな記事になるからだ(なるなよ)
・2:エンジンの取り付け
ユニットとしてはやはり巨大なものですね。以前はF1で熟成された技術が市販スポーツに反映されたものですが(マクラーレンF1なんか代表的です)、いずれ逆転する日が来るのかな? もっともあのエンジン音こそがF1であって、ハイブリッド指向はあまり望まれ得ないものかも知れません。自動車メーカーが企業的に目指していることとモータースポーツが競技的に目指していることとの差、違いはいずれいや、まあそれはいいか……
・3:マフラーの組み立て
フツーに組んで何の問題もないところです。排気管に付属する円盤形の補機(すいませんねー名前知らないんですよねーうーむ)を押し出しピンか何かと間違えてブッ千切るひとなんていやだなあ、いるわけないじゃないですかあ(視線をそらしながら)
・4:マフラーの取り付け ~ 5:ドライブシャフトの取り付け
大体においてどこもかしこもピタピタはまっていくもので、いくつかの過程はひとつにまとめてしまいます。シャーシー後半部のごっついフレームは実に剛性が高そうですね。
・6:ロワアームの取り付け
この工程ではラジエーターを組み、ロワアームをモノコック前部下面に取り付けるのですが、
モノコック部分D33パーツは複雑な形状のみならず前後輪の支持架までもが一体成型されたものとなっています。微妙な曲線のうねりと繊細なアーム部分の突出は本来もっと分割されたパーツの結合で成り立っている実物以上の造形美で、ある種のプラモデルのパーツはそれ自体がモダンでポップなアートなのかも知れません。このあたりの工程からちょっと背筋を正して作るようになります、気持ちの問題ですけれど……
・7:モノコックの組み立て
はやそう(小学生並みの感想)
だってほかにいうことがないのぢゃ!
・8:サスペンションの取り付け ~ 9:フロントアップライトの取り付け ~ 10:リヤアップライトの取り付け
吸い付くようにピタリとはまります(テンプレ)いやほんと、そんな感じなのよ。
・11:アンダーパネルの取り付け
F1マシンの血を引いてることがありありと分かる車体底面、リアのディフューザーやフロント部分のボルテックスジェネレーター(って呼び方でいいのか?)は現在のF1よりもよっぽど「F1らしい」親しみすら感じますけれど、もっと面白いのは底面中央、クリアー素材で別体成型されてるパネル部分か。
塗装指定は他の部分と同じくフラットブラックですけれど、あえて無塗装で済ませて完成後も車体内部の機器を観察することが可能な、遊び心にあふれた設計。それだけ重要な意味を持つこの機器はいったいなんであろうか、位置的にはちょうどシートの真下にそれぞれ位置するのであっ(察し)これはね、実車解説もwikipedia参照もなしにピン!と来ましたよええ。ハイブリッドの電気駆動車ならばこそ、冬場にシートのなかでおしりをほかほか暖めるこれはヒーターだな、ヒーターに相違あるまい!!
電車か。
取説ではここでメッシュの切り取りが指示されます。型紙の原寸図が掲載されていますのでコピーし両面テープで貼り付けよ、と。メッシュ目の方向に対して斜めの位置に来るように配置されていますので、10式戦車の組み立てで散見された、うっかり垂直に切り出してしまう悲劇は回避出来そうですね。
しかし、両面テープの糊の強弱は、剥がしてみるまで判らないものであり……
・12:リヤホイールハウスの組み立て
うっかりすると生まれたての小犬のような、あられもない悲鳴を上げることに成増OTL いくらテープに「はがしやすい」と書かれていても、それはあくまで事務作業としての話であり、プラモデル用メッシュに対してのその、まあなんだな……
・13:リヤホイールハウスの取り付け
幸い完成後はあまり目立たない位置に来るところでしたああよかった。このような悲劇を繰り返さないためには別売りのエッチングパーツか、あるいはテープ剥がしにジッポーのライターオイルを用いることが推奨されます。最初からやろうよ俺。
・14:エアボックスの組み立て ~ 15:エアボックスの取り付け
このあたりのレイアウトについても詳しい解説がありそうですね。ところでインレットマークっていまだに慣れないんだよな……(と布石を打っておく)
マスクシールの使い方については割愛します
・16バルクヘッドの組み立て ~ 17:タンクカバー/シート ~ 18:内装の取り付け
タミヤのプラモデルは組み立ての工程をかなり分割していて他のメーカーならもっとまとめそうにも思えますが、ひとつひとつのパートに作業量を細かく分担することで、組み立てのミスや順番の取り違えが起こらないように配慮しているのでしょうねえと改めて感心することしきり。
・19:メーターパネル/ステアリング/ダッシュボード ~ 20:ダッシュボードの取り付け
この辺の工程から「ピタリと吸い付く」どころかパーツ自体が自分の行き先を知っていて勝手にそこにはまっていくような感覚を覚えます。なんて言うかな、組み立ての主体がプラモの方にあって人間がそれに教導されているような、ちょっと不思議な感覚でこんな思いをするのは初めてだ。ある種の危うさすら感じるこの気分は……
プラモデル「モデラー、あなたは幸福ですか?」
モデラー 「もちろんです、プラモデル。幸福でいることはモデラーの義務です」
「パラノイア」は楽しいゲームですよ? 完成品組み立てラインのひとも作業が簡単ではかどるだろうなんて思っちゃいませんよコンピューター
・21:ルームミラーの取り付け ~ 22:フロントウインドウの取り付け
例えば、世の中には完成品リリースが前提となっていてプラモデルというより「未組み立ての完成品トイ」を組まされているようなキットもありますが、そういう不自然さを一切感じさせることなくライン的に組み易そうだってあー、最近のタミヤのカーモデルをもっとまじめに見とくんだったな。こういうようなコンセプト(?)は果たしてこのラ フェラーリがお初なのか、そのへんどうなんでしょ??
・23:フロントカウルの組み立て ~ 24:ヘッドライトの取り付け ~ 25:エアインテークの組み立て ~ 26:エアインテークの取り付け
ザクレロだ、ザクレロがおる。
メッシュの切り口はすべてカバーされるので多少ギザっても大丈夫そう。そしてザクレロを赤く塗ってツノを生やしてガンダムビルドファイターズのコンテストに応募しよう!名前は「ザクレロGTR」とかで!!
なぜバンダイホビーサイト内部のページにホビーサイトのトップからではなく一旦アニメ公式を経由しないと辿り着けないのか。この謎を解くために取材班は大量のピザとパスタ食いたい(願望)
・27:ドアの組み立て1 ~ 28:ドア内張りの組み立て ~ 29:ドアの組み立て2
大別して3つのユニットからなるドアはかなりのボリューム感です。またこの部分に限らず外装に貼るデカールは大抵取り付け位置がちゃんとモールドされているので位置決めもバッチリ。おかげで
「デカールすら自分の行き先が分かっているのに俺ときたら……」
などと突発性のダウナー発作に襲われたりもします。
・30:ドアの取り付け ~ 31:フロントカウルの取り付け
シンプルなヒンジ機構でも確実にはまって自由に動く、テンション高まるパートです。そして不意に気分が高揚すると事故の原因となるのは自動車ではよくあること。
・32:リヤバンパーの組み立て ~ 33:テールライトの取り付け ~ 34:リヤスポイラーの取り付け ~ 35:リヤバンパーの取り付け
ボディ後部のセクションはトラブル頻発でとっ散らかっちゃいました……。デカールの12、13を破いてしまったのはマフラーパーツで誤魔化せましたけれど、後部中央にあるべき跳ね馬のインレットマークがどっかに飛んでっちまって……
活きのいい跳ね馬でしたね(棒)
ちなみに工程34番ではリヤスポイラーの取り付け位置を収納時/可動時で選択できます。今回は収納時で組んでいます。
・36:リヤカウル部品の組み立て ~ 37:リヤカウルの組み立て
ここでも切り出したメッシュはパーツの裏面に接着されるよう配慮がなされていますが、それでもメッシュgとhの切り出しは気を使ったほうがよいでしょう。リヤカウルを開いてエンジン見せるディスプレイを考えていれば特に。
・38:フロントホイール/リヤホイール ~ 39:リヤカウルの取り付け ~ 40:リヤカウルの開け方
このパートで目出度く完成と相成ります。カーモデルの本領は塗装で発揮されるものであり、このような無塗装素組みでどこまで魅力を伝えられるかはいささかあやしい部分もあるのですが、組み立て過程そのものも十分楽しめるものでした。
当初は“LaFerrari”なんて随分と大それたネーミングが洋梨の「ラフランス」にも通じて、そこから「用無し」に転じるような冗談を考えなくもなかったのですがいつのまにやらそんな気分は吹き飛んで。
ホビーショーでサンプル見たときよりもずっとずっと格好良く見えるのはやはり製作プロセスが楽しかったからか。
リヤカウルを開けて位置するV12ハイブリッドエンジンこそが、新世紀にあってもスポーツカーのトップブランドを走り続けるフェラーリの新しいスタンダードで「THE FERRARI」の名前も決して伊達や酔狂で付けられたわけではないでしょう。生来「トップブランド」をあまり好まぬ性質ですが、本車はたいへん魅力的に映ります。全世界で499台のみの生産台数、日本でも走ってるのを見られるかな?。エンツォは一度、たしか銀座で目撃した記憶があります。
バタフライ・タイプのドアを開くとシルエットが一変して楽しいのだけれど、自重のためか取説通りの固定が出来ずに仕方なく指で押さえるという暴挙(汗)イカルス星人の耳だって人の手がパタパタ動かしてたんだからいいぢゃないか。
以上タミヤのラ フェラーリでした。普段それほどカーモデルに詳しく接しているわけではないけれど、カーモデルのスタンダードについて認識を改める機会にはなりましたねぇ。
それでもミナルディが好きだよおれわ