タミヤ「1/48 ドイツ対戦車自走砲 マーダー III M (7.5cm Pak40搭載型)」

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最近はちょっと落ち着いちゃった感もあるタミヤヨンパチMMシリーズですが、手軽に形になるのはこのシリーズのよいところで個人的には好きなのです。作った後に場所も取りませんしね。

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基本的には1/35キットのダウンサイジング、無印マーダーIIIを受けての発売もH型を飛ばしているところも35と同じ流れです。H型は1/35ではイタレリキットがあるんでタミヤでは出さなかったんだろうと推察しますが、近年イタレリ製の48キットも増えてますからいずれその辺りを期待してもいいのかな?1/35スケールで38(t)がリニューアルされたこともありますし、そこからヘッツァーへと至る一連の系譜などを並べて見てみたいものです。

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主砲関係のパーツ考えたら無印とM型よりもM型とH型の方が流用効きそうなもんですが、オリジナルの35キットでもマーダーIIIMのPak40関連パーツをその後なにかに使ったってことは無いはずです。応用できそうでいて、なかなかやらないというのは、例えばヨンパチMMではIV号戦車系アイテムよりクルセイダー戦車系アイテムの方が数が多いというなんかフシギな事態が起きたりしている(笑)

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ここだけ共通している足周り。無印マーダーIIIからはキャタピラ履いてる戦闘車両でもダイキャストシャーシをやめて重量感(てか、重量)をウェイトに頼るスタイルになってますね。最初からこーしてくれればよかったのになあ。

ちなみに車体のマーキングは2種類が入っていますが、それ以外に無線機の操作パネルと35ではエッチングが付属していたマフラーガードのパンチングプレートがデカール処理となってます。

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各部ディティールはカッチリしたものが施されていてこのサイズでは十二分のものかと。シャーシ底面もプラ製になってハッチのモールド入ってますからひっくり返った情景とか「裏面」を積極的に見せるも可能でしょう。ところでこのマーダーIIIMの「M型」はドイツ語の中央(Mitte)の頭文字で~とキット解説にはありますけれど、38(t)戦車車台でエンジンが中央配置なのはK型もL型もですわな。自走砲用シャーシとして開発されたこのタイプ、実車ではグリレK型自走砲や38(t)対空戦車に使用されてて模型でもいろいろ応用出来そうなものですが、まぁ、その、なんだな。

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7.5cmPak40/3対戦車砲の魂は細部に宿ります。ドイツで大砲と言えばどいつもこいつも88ミリ推しですけれど、この7.5cm砲の優秀さだってもっとクローズアップされてよいだろうなーと思います。III突やIV号始め様々な車両に搭載された万能の中口径速射砲で、大戦後半のバケモノみたいな重戦車相手にこそ力不足でしたけれどSdkfz.251やRSOまで対戦車/歩兵支援車両に改装出来たのはこの砲あればこそのもの。東西両面のヨーロッパ戦線だけみてると大したことないなーなんて思うかもしれませんが、もしこの砲が太平洋にあったらどれだけ日本軍の助けになっただろうかとか…

いやほら、最近三式砲組んだばかりですからねえ…いろいろと目に悪いな……

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実際組んで行くと小さいながらもツボを押さえた設計で、ほとんど見えなくなるエンジン整備ハッチや折り畳み構造の戦闘室床面モールドなども再現されて、運用状況が想像できるつくりですな。エンジン配置が中央なのはIII/IV号自走砲車台と同型の構造で、設計思想が共通なんだなーとかいろいろ思って作っていくと脳にとてもよい(かどうかは知らない)

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組み立て自体はホントに何の問題も無くさくさく進みます。実にウィークエンドモデリング向きです。プラモデルをつくりあげることの「気持ちの良さ」を簡単にアピールするにはいいサイズだと思うんで、このスケールもっと充実してほしーなと常々思いマッスル。ガンプラで言うところの1/144みたいなものでね。ガンプラと比較するなって言われそうですけど(汗)

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タミヤのマーダーIIIMは操縦手コンパートメントが平面溶接構造になった後期型をモデル化していて、このスケールでもばっちり溶接痕が入ってます。ここは結構目を引くポイントじゃないかな?砲関係を後部にまとめた結果操縦手が孤立している状態なのは是非の判断つき難いところですけれど、車内通話装置が完備されてればこそ出来る配置ですね。

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主砲関連。照準器もちゃんとついてますが35ではマイナスネジ表現だった防盾部分のモールドが、サイズの問題からただの丸型になっちゃってるのは残念なところ。

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あんまり簡単に進むんで今回は塗装までやってしまおーと思います。車体と主砲、前面左右の装甲板ぐらいのとこまで接着すすめて、あとは仮組み。キット塗装図にある「第348歩兵師団第348戦車駆逐大隊第1中隊」を作ってみようと。しかし師団番号が3ケタになってくるといよいよ敗色濃厚ぽいよな。

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タミヤのヨンパチシリーズ開始当初の3アイテムがタイガーIにシャーマン、III突とすべて単色塗装で仕上げられるチョイスだったのは有り難かったなーとか思いながらシンプルにクレオスのダークイエローを吹いた後で上部をマスキングして今度はタミヤのダークイエロー。どちらも缶スプレーどすえ。

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「キャンバスカバーを留めるための金具に沿って、色調の違う2色のダークイエローで塗り分けられた」車体ってなんだか日に焼けて退色したよーだなと、クレオスとタミヤの色調の違う2色のダークイエローで塗り分ける簡単な作業です。キャンバスカバー留めの金具はちゃんとモールドされてるんでそのままマスキングのラインに出来るんだな。

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その2色をベースにパステルやらピグメントやらで汚したりで完成です。車体上部は新品に近いイメージで行こうと意図的に汚しは控えてみたんだけれど、いささか不自然に過ぎたかな?それはちと反省点なんですが、モノが小さいだけにメリハリを強くしたいなと考えたのもまた確か。サイズに見合った表現方法とか模索したいな…

そうそう、これ塗ってる間に出たMG誌11月号が戦車塗装特集だった!間が悪いにも程がありすぎだっ!!

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普段は「全部組んでから塗る」派ではなく、特に今回みたいな連結接着式キャタピラの場合は車体と足周り別々に塗装して最後に組み付けるパターンでやってたんですがまー実際に全部組んでから塗ってみてもキャタピラはなんとかなるものですね。オープントップの戦闘室内部をどうするべきか、何も考えてなかったことは言うまでも無いw

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砲身上下によく動きます。マーダーIIIは歩兵師団の戦車駆逐大隊に配備される車両でその主任務はもちろん機動対戦車防御なんですけど、歩兵の突撃支援で曲射砲撃もやったんだろうなーとか。しかしこの手の車両にもペリスコープ完備なのは贅沢だなドイツ人は。

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砲と車体で装甲を分担させ、半円形となる防盾の可動部分にはそこをカバーするように装甲板を配置する。単純な発想の転換ですけど装甲が車体側で一体化されてた日本軍の自走砲とは可動範囲が随分違うなと、むかしマーダーIIと一式砲を比べて思ったもので、このたびの三式砲→マーダーIIIMの流れはその記憶をトレースさせるものだったり。

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砲弾はともかくフィギュアは未塗装のままで失礼。この辺のパーツも35のダウンサイジングまんまなんですけど、もうちょっと躍動感があったりケレン味溢れるポージングだったりしたほうがサイズ的に見栄えがするだろうなーと昔から思います。

エンジンを車体中央に配し戦闘室を後部に据えて砲の射界を広くとる。大戦後半のドイツ自走砲にはそんな統一された設計思想がほの見えます。マーダーIII対戦車自走砲もこのM型で一応の完成を見、シリーズ最多の942両が生産されました。同型の車台に重歩兵砲を積んだグリレK型、2cm単装機関砲を載せた38(t)対空戦車に比べても、大型で長砲身の7.5cmPak40対戦車砲を小さな車体にバランスよく搭載したマーダーIIIMの外観は自走砲車台の設計思想に合致しているように見受けられます。軽戦車クラスの車体に中戦車並みの火力を持たせるのはなんだかんだ言っても大変な作業でしょう。

一方その頃、イギリス人は主砲を後ろ向きに搭載していた。

…てな感じで颯爽とアーチャーを横に置けたら最高なんだけどな。

現状35より「格下」に見られがちなヨンパチを、なにか別の方向性に出来ればこのスケールによりいっそうの意義や意味を見出せるんではないかと、そんなことを漠然と考えながらの製作でした。

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