デザートイーグルパブリッシング「マガフ 6B ガル&ガル・バダシュ写真集」
東西両国境をアラブ諸国と接しているイスラエル軍は他国に類をみないほど機甲戦力の充足に力を注いでいて、メルカバMBTを暫時新型に更新しつつ同時に第二線級の装備であるM60戦車系列の車両にもアップデートを行っています。本書はそれら一連のイスラエル仕様M60、マガフ戦車シリーズの中から現在稼働中のマガフ6Bガル/ガル・バダシュ戦車を中心とした写真集です。
西側戦後第二世代戦車の中でもベストセラーとなったM60戦車へのイスラエル軍の魔改造ぶりを隅々まで愛でるといった内容の一冊であり、最新鋭の~と書いてしまえば解説書く身としても楽なのですけど、実際のところは更にマガフ7系列あるいはトルコ陸軍に提示されたサブラ戦車へと、パットン将軍の末裔はガリラヤの地で進化し過ぎで島国に生きる我々としてはなにがなんだかよくわかりません…。しかし流石は本国イスラエルの出版物で冒頭にマガフシリーズの進化系統樹が載ってるところはなんて親切!従軍章を使ってどの形式の車両がどの戦役参加したかを表示するのは大変に解り易いデザインだなー。
以前に記事も書いた「メルカバMk.4」と同様、本書も車体各所のクローズアップ、作戦行動中の迫力あるフォト、戦車を運用する兵士たちの様子や表情など豊かな内容は変わりません。既にメルカバ本お持ちの方にはなんの心配もなくお勧め出来る内容、初見の方には全力でプッシュできる良書です、が今回さらに!(だんだんTVの通販番組みたいになってきたな)
各種支援車両の写真も多数掲載されています。近年メルカバ車台をベースとした工兵車両も徐々に配備されていますがいまだこの分野ではマガフシリーズが第一線で任務に就き、砂漠がちなイスラエルの地勢にあっても尚重要な架橋戦車は敷設シークエンスを連続写真とイラストで分かり易く解説。
川は無くとも橋は大事でなにしろゴラン高原には「涙の谷」という名勝がございましてな。
個人的に強く印象に残ったのはこの一枚。
市街地にMBTを投入することに掛けては他国に先んじて運用ノウハウを得ているイスラエル軍ならではの戦車回収車に全身スラットアーマー。何も知らずに見るとトンガリ帽子風で可愛く見えたりするのかな?実態は支援車両とはいえ凄みのある姿なのです。
巻末にはレジェンド社のレジンキット作例が掲載され、前回よりも一層モデラー向きの内容と言えます。ベースキットはエッシーのM60を使用しているようですが、タミヤのM60A3も久々に再生産されたことですし、世紀を越えて尚現役なオールドマン、製作の手引きに是非。
そうそう、「現役」と「オールド」といえばですね。前回メルカバの時も素晴らしい内容に驚かされたデザートイーグルパブリッシング、なんでも著編者の Michael Mass氏は元イスラエル陸軍機甲大佐で実戦にも参加。現在は国防博物館でキュレーターを務めてる方なんだそうで…
そりゃ大学サークルにOBが訪ねてきたようなもので、現役は皆にこやかにむかえますわな。
そして大学サークルにOBが訪ねてきた時に現役が内心でどう思っているかは…
それは写真からではわかりませんw