デザートイーグルパブリッシング「メルカバMK.3D写真集」

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最新鋭の座こそMk.4に譲ったものの未だ第一線で機甲部隊の中核を占める、イスラエル陸軍メルカバMK.3D主力戦車の写真集です。

サブタイトルにPART2とあるのは以前デザートイーグルパブリッシング社から素のメルカバMK3を扱った本が発行されていたからで、FCSを更新し新型の複合装甲モジュールを砲塔側面に装備したMK.3Dに関してはこの一冊でOKな内容となっています。

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ページ構成は同社既存の書籍と変わらぬ豊かで濃い内容です。開発経緯や実際の運用、人とマシンの関わりにディティールのクローズアップと本シリーズ既読の方ならご存じの通りに日本国の関連書籍では到底考えられない充実したもの。特に今回ネゲブ砂漠の演習場で撮影された市街戦訓練の様子からは、現在のイスラエル機甲部隊が想定している戦闘状況や歩兵と戦車の共同運用などのドクトリンが観察できます(一枚だけですが、アチザリット重APCとチームを組んでる写真があります)。

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とりわけ印象的なのは一部の車両が装備している防弾ガラスを装備したビジョンブロック付きの車長用ハッチでしょう。背が高く且つ安全に周囲を監視できるこのタイプのキューポラは市街地域に於ける低強度紛争を見越しての装備品で、かつてイスラエル戦車部隊が広大な砂漠を最前線にシリアやエジプトなどの正規の機甲部隊を主要敵と目していた時代、戦車のシルエットを高く見せるM48/M60シリーズの大型銃塔を廃してウルダンキューポラを独自開発していた時代とは隔世の感があります。

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伝統のチェーンカーテンも砲塔ラック下部からの撮影という、ローアングルハァハァとか言ってる場合じゃないほど貴重なカットです。予備キャタピラシューの固定方法も要チェック項目のひとつ。

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既刊のものに比べて和やかな雰囲気のフォトが多いのは今巻の特徴かも知れません。シミュレーターと接続して訓練中の一枚にはユニークな日傘をさしたメルカバの姿が。なんだかのんびりしますわー(アフガニスタンのチャンレンジャー2でも同様の日傘を見た覚えが。あちらは戦地でしたけれど)

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ステンシルを利用した車両マーキングはクルーが自ら行っているのですが、みなさんこれスポンジ技法ですよ!プラモみたいですよ!!実際のマークもアップで見ると結構よれよれなので、例えデカール貼りにしくじっても泣いたりしなくて良い。そういう自信はもてるかもしれない…

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とはいえやっぱり「見なきゃよかった」と思わず呻く、情報過多で脳がオーバーフローしそうなクローズアップが連続するのも確かです。例えば車体表面の滑り止め加工は不自然な形で剥がれてるもので、これを1/35スケールで再現するのは一苦労しそう。黙っていればわからないだろうと思いきや、

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巻末に掲載されているアカデミーキット、レジェンド改造パーツをベースにした(本当にただベースにしかなってない)素晴らしい作品では、確かにこの不自然な車体表面が見事に再現されているのです。画一的なパターンではここまで魅力は引き出せますまいうううむ。

てなことを考えるのもMENGモデルのメルカバMK.3D発売を控えているからであって、本写真集をはじめデザートイーグル社から潤沢に資料提供を経て開発されるMENGのメルカバには期待しています。

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ある意味では洗練されているMK.4に比べ、見る角度によって様々に変化する獰猛なシルエットを垣間見せるMK.3Dの方が立体映えはするかも知れません。現在ただ今でも不安や危険と隣り合わせな中東情勢ではありますが、趣味の一環としてこういう本やプラモデルを入手できる平和をこそ、褒むべきなのでありましょう。

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