トランペッター「1/72 BACライトニングF.6/F.2A」
純英国製超音速戦闘機イングリッシュ・エレクトロニック(後にブリテイッシュ・エアロスペース)「ライトニング」の1/72スケールプラスチックモデルです。最終生産型F.Mk6と初期型をアップグレードしたF.Mk2Aの2タイプ選択式。キットは最近冷戦時代のジェット戦闘機を精力的に新キットでリリースしているトランペッター製。まさか21世紀になってライトニングの新作キットが見られるだなんて!
同じくトランペッターのライトニングF.1A/F.2のキットとパーツを共有している関係上、本キットにはAランナーとCランナーがそもそも含まれていません。Bランナーから始まる製品内容というのも何だかフシギなキブン。
後期型ライトニングに特徴的な二重後退角を持つ主翼部分。
小パーツはすべて1枚のEランナーに収められています。
F枠はスイッチを多用して各型への対応を可能としています。決してメジャーとは言い難い本機に当初からバリエーション展開を考えた設計はメーカーの本気を見る思いだ。
デカールとクリアーパーツ。イギリス本土防空を担ったF.6「XR753」と西ドイツに展開していたF.2A「XN781」の二種のマーキングが揃っています。部品はすべてプラパーツでエッチングやメタルなどは一切使用していないのも本製品の特徴かな。
機体表面のモールド、パネルラインやリベットなどは明瞭に彫刻されていて(ちょっとヘンな言い方ですが)ガンプラ的なメリハリが効いています。
特徴的なエンジンノズルや計器盤の表現も立体映えのするもの。
コックピットのバスタブ部分も繊細なモールドが明確に表現されています。ここだけ見てても飽きが来ないぞ。
コントロールスティックにはレバーが存在する。恥ずかしながら最近の1/72のジェット戦闘機キット、スタンダードをよく知らないのですがこれはなんか、ちょっとスゴイよ。
ファイアストリークAAMのシーカー部分を再現するためにミサイルごとクリアーで成形してるのはちょいとオシャレですな。
これまでトラペのエアモデルについては初期にリリースされた大スケール製品の印象しかなかったので、正直なところかなり驚かされました。細かいだけならAFVモデルでもいろいろやってますけれど、見ての通りこのキット非常に組み立て易そうです。出来が良くて組み立てが簡単ならそりゃもう勝ったも同然だ。何に?
シートだけでも3パーツから成るコックピット。アナログ機器満載のレイアウトは最新の機体よりも塗り分けが楽しそうだな。
ノーズコーン下部には前脚収容庫内の桁材もモールドされてます。完成するとほとんど見えないのにッ!
機首部分はこのようにスキマ無くパーツが埋まる構成で機能を類推させてくれます。パーツが密集する分オモリを仕込めないのが若干不安になりますが…
なお機体左右の貼り合わせはアンダーゲート処理です。細かいとこまで気配り行き届いてます。
F.6を選択したので外部ケーブルダクトは機首方向に延長されたものを使用。バリエ展開に別パーツ化された部分もフイット感は良好です。
一見するとデルタ翼の内側を切り欠いたように見えるけれども、桁材のラインを見れば極端に角度のついた後退翼だと理解ができる主翼はライトニングの特徴のひとつです。というかこの飛行機って特徴しかないような気が…
平面形では直線的なシルエットを見せる主翼前縁のキャンバー(捻じり下げ)は実に美しい曲線で、よくできた飛行機のプラモデルはエロいねセクシーだね。そんなふうに思います。
インテグラルタンク前部ははっきり違いの分かれるところでF.6ではアデン機関砲を内蔵したパックを使用します。(F.2Aの場合アデン砲は機首上面に装備)
下腹部がぷっくりふくらんだライトニングの機体を見るたび夏でもシシャモが食べたくなる。日本人とは相性の良いカタチをしている。
インテーク・リップを接着するとノーズコーンの合わせ目は完全に隠れるので、この部分を処理する必要はありません。
そしてこれもライトニングの大きな特徴、主翼上面の増槽。こんなところに追加タンクがあっても空力的にはよいことなどひとつもないけど、他に場所が無くて仕方なく乗せているとゆー無理矢理感がハンパないものではありますが、形状的にはユニークで、面白いものです。本来長距離リフト用の装備で戦闘任務時には使われないものですが、これをモチーフにデザインされたSFアニメの戦闘機などではしばしばドロップタンク的に使われてますね(一応実機でもそういう使い方はできるらしひ)古くは「王立宇宙軍」共和国ジェット戦闘機、最近だと「ヤマト2199」の爆装したコスモゼロが主翼上面に ドロップタンク (正しくは「高機動ポッド」でした。コスモ石油で動くらしいぞw)を備えていました。このようにアニメ業界は既に軍事の英国面が多大な影響を及ぼしており…
主脚の取り付けはいささか不明確でここだけ難点…と言いますのもアクチュエーターが極細かつ主脚と一体で成形されているので、既にランナー上で歪んでしまったり切り出し時に捻じれたりしかねないのですな。形状自体は非常によいものなのでここは丁寧に処理しましょう。
で、完成体です。うおおおおカッチョエエ!!現代最新鋭のジェット戦闘機に慣れ親しんだ方々には異形に映るかもしれませんが、80年代後半までは現役だったインターセプター。youtubeなどで全盛期のライトニング動画を目にすれば素晴らしい上昇角度に度肝を抜かれること間違いなしです。
ミサイルに関してはF.6ではレッドトップAAMを使用した方がいいのですが、パーツが面白いんでファイアストリークを積んでみました。こうしてみるとまるで「見えないミサイル」でステルス!ってそーゆー意味じゃねーよ。
空気抵抗を極力減少させるために絞り込まれた胴体部分、インテークの上に無駄なオマケのように人間が乗せられている配置は同時代の航空機にも例がありそうですが、2基のジェットエンジン(F.6はロールスロイス・エイボンを搭載)を縦に且つ前後にずらして配置した設計は実用機体ではライトニングだけ!特徴としては過剰加熱で火災事故を起こしやすいっていいのかソレハ…
全ては機体断面積を押さえて高速性能を存分に発揮するための処置、大柄な身体ながら極限まで体重を切り詰めたアスリートのような戦闘機です。
機体容量に余裕が無いための航続距離の不足と兵装の限定はそれなりに深刻で、そのために機体下部のインテグラルタンクを大型化したのが後期型ライトニングの大きな変更点です。また空中給油用プロープが主翼から伸びているのはこの部分もタンク容量満載だからで、実はフラップの中まで燃タンだったりするぞ。数少ないライトニング輸出国のサウジアラビアとクウェートではロケット弾ポッドなど爆装させて戦術戦闘機としても運用したそうだけど、地上砲火には弱そうな機体であり…
ところで新谷かおるの「エリア88」では脱走兵殺し(エスケープ・キラー)の三人組がこのヒコーキ使ってました。逃げたパイロットをすぐさま追いかけて落とすには向いた機体なんだろうか。まーコミックスでもOVAでもさっぱり活躍しなかったわけであるが(´・ω・`)
飛行機を知るには平面形を見ろ!と教えられたので上方向から。やはりある種の魚、具体的にはトビウオにみえますぜ旦那。ああ、鳥取県名産「あごちくわ」が食いたい。
奥にあるのはハセガワのふる~~~~~い1/72キット。BT帯は絶版だけど今でも「コンボ」シリーズの限定品で流通はしています。いえね当初は二つ並べて「古いものでもこれはこれで味わいがありますね^^」的な記事を考えていたんですけど、ちょっとトランペッターのキット舐め過ぎてましたね比べるべくもありませんね…
えーとそうですね、もしもライトニングについての印象がハセガワの古いキットで止まっている方がおられましたら、是非ともこのトランペッターの新しいキットを試してみることをお勧めします。なんというか昔の映画をHDリマスターで解像度を上げて見るような、そんな感じの新しい発見に満ちているかと思われ。
ちなみにやっぱりシリモチつきました OTL
ウエイトバランスは微妙な案配で、垂直尾翼ひとつの有無で変わってきます。対応としてはノーズコーン先端のE10パーツにわずかな空間の余裕がありますから、そこに納まる金属球(釣り用のオモリなど)を探してくればなんとかなりそう。
何の気なしに組んでみたら予想外に優れたキットだったのでこれは嬉しい驚きでした。形状も存在も独特なE.E./BAC ライトニング、夏の盛りにジンライム片手に愛でるには相応しい逸品だと思われます。
「でも、お高いんでしょう?」
いいえ!そんなライトニングが今ならたったの1.396円、65%割引で手に入るのです!!