ハセガワ「1/700 日本海軍 駆逐艦 若竹」

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ウォーターラインシリーズNo.437、ハセガワ製の駆逐艦プラモです。

メジャー艦からマイナーどころまで幅広く押さえたWLシリーズの中でも一、二を争うほどのマイナー艦じゃなかろうかと思います。まあ最近では河川砲艦までラインナップされてるご時世ですからあんまりウカツなことは言えないか…

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「若竹」は大正七年度に計画された若竹型二等駆逐艦の一番艦です。二等駆逐艦としては前作樅型を発展改良したものとして23隻の建造が予定されていましたが、海軍軍縮と建艦計画の変更に伴い8隻で中止となりました。以降の日本海軍は重武装を施し航続距離の長い、より大型の駆逐艦建造を指向したために二等駆逐艦としては本型が最後の存在となります。全長基準排水量820t、水線長85.34m(キット解説に依る)主力兵装として12サンチ単装砲3門と53cm連装魚雷発射管二基が搭載されていました。

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いうまでもなくWLシリーズの駆逐艦は小さいものですが、とりわけコイツは小さな艦です。Aランナー+Bランナー。

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Bランナーもう一枚に加えてCランナー。若竹を構成するパーツはこれで全てです、少ねー。ちなみに同じくハセガワから発売されている二等駆逐艦「樅」とまったく同一のパーツが入ってます。実際には若竹型と樅型では艦幅など若干異なるそうですが、このスケールでは誤差の範囲内でありましょうか??

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デカールはWLシリーズとして標準的な内容です。「ケタカワ ケタカワ」の文字列に一瞬「タケカワユキヒデ」を空目する(知らんわ)

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封入パーツ数が少ないのは「小型艦装備品セット」の共通ランナーが入っていないという大正時代の艦艇ならではの事情がある為なのですが、本製品は初回発売1995年と最近のものなので現在でも十分に通用するディティールを持っています。90年代は日本国内の模型メーカー各社で金型加工技術の向上、シリーズラインナップの再構築など様々な底上げが起きた時代で、89年発売のタミヤ新生タイガーを経てバンダイのガンプラマスターグレード開始、ハセガワではJTシリーズの紫電改などがこの時期発売のアイテムだったように記憶しています。

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ことウォーターラインに関しては92年のフジミの脱退がターニングポイントではあるのでしょうが、結果として従来製品のリニューアルや従来なかった種類の艦艇がラインナップに揃ったことはいち模型ファンとしては喜ばしいことでありますな。

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組み立てに関して、注意点としてはとにかく物が小さいことに尽きるでしょう。日ごろこのサイズの艦艇模型作り慣れてる方ならばともかく、物は試しで的に手を出すならもう少し大型艦の方が組んでて楽しい…と思う。ひたすら地味。だがそれが良い。

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12サンチ単装砲は先に台座に接着した方が防盾の位置決めが楽かと思われます。しかしながら一番目立つ先頭の一番砲には使えない工夫だったりする…

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カタチにするだけなら小一時間と掛りませんが、露天艦橋のキャンバスと艦底部分だけでも塗ってみました。艦名デカール貼ってないのはもちろん戦時下を意識したためですよもちろん。若竹は大正十一年に竣工し長く第一艦隊直衛の任務に就いていたとのことですから、長門や陸奥などのお供に据えるのがよいのかな?マイナー艦ゆえ資料は少なそうですが…

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一段高くなった大型の船首楼は昭和時代の駆逐艦には見られない特徴です。

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艦尾にあるのは爆雷投下軌条か。元より小型の護衛駆逐艦ですが、実際に米軍と砲火を交える段に合っては砲雷戦とも能力不足の感は否めず、主力艦隊の任から外れて若竹は1942年に編成された第一海上護衛隊の所属となりました。

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若竹では不要パーツ扱いの6.5ミリ単装機銃。前述の通り本キットは樅とまったく同一なのですが、樅寄りに立体化されてて考証的にはいささか難アリ、若竹を正確に再現するにはいくつか修正を必要とする箇所があるらしい…です。一応今回は説明書の指示通りで組み立てましたが、戦時中は機銃増設ぐらいやってたんだろうか?

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特設艦や老朽艦を集積したこの第一海上護衛隊は、当初は安全な南方航路の輸送船を護衛するため南西方面艦隊指揮下に設立されたものでした。しかし1943(昭和18)年以降は米軍の反抗作戦によって輸送航路の危険が増し、第一護衛艦隊へと増強改編されています。連合艦隊司令部と同格である海上護衛隊司令部を設立した上でのシーレーン防衛の強化ではありましたが、艦隊決戦思想一色だった海軍上層部が輸送船舶への護衛活動を重視することはなく、海上護衛隊は終戦まで苦しい戦いを続けました。太平洋戦争後半には鉄鉱や原油などの資源、さらには食糧に至るまで、当時の日本の国力と国民を養うためには必須であった貴重な物資とその運搬に携わった多くの人員が無為に海没しています。

駆逐艦若竹も1944(昭和19)年3月30日、パラオ湾口で空襲を受け戦没しています。若竹型8隻のうち終戦まで生き残ったのは5番艦「朝顔」のみですが、朝顔も終戦後わずか一週間で触雷沈没、同型艦の悉くが海上航路の防衛に敗れました。戦艦や空母といった主力艦の華々しさとは違った最期、決して多くを語られることのない戦歴ですが、これら護衛部隊の働きが無ければそもそも国が成り立ちません。

海上護衛総司令部の大井篤参謀は戦艦大和の沖縄特攻作戦の報を聞いて「国を挙げての戦争に、水上部隊の栄光がなんだ、水上部隊の伝統がなんだ、馬鹿野郎」と痛罵したそうですが、栄光と伝統ってのはそもそも一体何でしょうね。

そんなことを考えながら、この小さなフネを作ってみるのもよいかも知れませんがまだ、その前に、

もうひとつ紹介する物があります。今日の本題は実はこっちです。なんてぇ長い前置きだい。

先ほど「若竹を構成するパーツはこれで全てです」などと白々しく書いてますけれど、実はこのキットにはもう1ランナー入っているのだ。

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これがそのZランナーですよじゃじゃん!あ、集中線入れたいなー。は、ともかくとしてハセガワの若竹と樅にはもれなくオマケで「第一号型哨戒特務艇」がついてくるのだ。

哨戒特務艇とは何ぞや。

海軍が戦時中に民間の漁船を徴用して監視任務に付けていたのはドーリットル爆撃隊を発見した第二十三日東丸や宮崎駿の雑草ノートで有名ですが(最近では光人社から「戦う日本漁船」という良書が刊行されています)、いよいよ戦争も末期になるとそれら特設監視艇は続々と被害を受け喪われ、ついには海軍によって公的に建造された漁船型の軍用船舶です。全木製の船体は日本各地の造船所を動員した200隻の建造計画がブチ上げられましたが、終戦までに竣工したのは27隻。一番艇が就役したのが昭和20年1月とまさに最末期の産物か…

小さな船体に貧弱な武装を施した哨戒特務艇、ウォーターラインシリーズの水上戦闘艦では13号型駆潜艇よりもさらに小さく一層マイナーな存在で、マイナー嗜好なこの身としてはこいつを紹介しないわけにはいかないのです。いかないのです。

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…しかしまさかの成形不良だ OTL

もし万が一このような不良品であった場合、お買い上げになった店舗に言って良品と交換するのが常ですがまーそのなんだ、流石にそうも行かないので…

むしろこれは最貧らしさを表現する手段!と割り切り、

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25ミリ機関砲は一門欠の状態で組む事にしました。これはこれでよしとする。

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船腹の形状など、やはり一般の軍艦とは異なるシルエットです。本艇はあくまで海軍製造の特務艇ですが、「武装漁船」って言葉にはロマンの響きがあるのさ!

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船体は1パーツ構成ですが、一応爆雷や短艇などもモールドされています。

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太平洋戦争の戦局には全く寄与しなかった本型ですが、むしろ活躍の場は戦後にやってきました。終戦直後はGHQの統制下で木造船体を活かした掃海艇となり、海上保安庁設立後は日本近海の航路啓開に従事し一部は朝鮮戦争の掃海作業にも出動しています。のちには海上自衛隊に移管した艇もありで…

つまりなにが言いたいかといえばですね、

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水上部隊の栄光と伝統は、この方々にこそあるのです!!

などと主張したい。

異論は認める。(えー

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