ハセガワ「1/72 しんかい 6500」

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ハセガワサイエンスワールドシリーズ第1弾、日本が世界に誇る有人潜水調査船「しんかい6500」の1/72スケールキットです。

小松左京のSFや日本海溝を身近に控えることもあってか、日本に於ける深海調査は昔から活発です。しんかい6500は日本の潜水調査船としては「しんかい」「しんかい2000」に続く三代目の存在で1990年に運用が開始された文字通り海面下6500mまで潜航可能な、調査船としては世界最高の性能を持つ潜水艇です。20年以上運用されているだけに以前から立体化されることもあったように記憶していますが、昨年ハセガワ及びバンダイからスケール違いで相次いでリリースされ、ちょっとした話題になりました。内部再現や発光ギミック盛りだくさんのバンダイ1/48スケールに比べて、このハセガワの1/72スケールは気軽に作れるデスクトップモデル感覚と言えましょうか。

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基本の船体は上下二分割で再現。小さいながらもパネルラインやリベットのモールドなどはハセガワスタンダードの精密なディティールが施されています。

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組み立てにはプラモデル用接着剤が必要なごく普通のスケールモデルですが、成形色を活かすためのパーツ分割は最近話題になった「学校の机と椅子」と同じような設計思想を感じます。無塗装でもそれなりにカタチになるプラモです。

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デカールシート、揺れる波濤のマークはしんかい6500を運行する海洋開発機構(JAMSTEC)のシンボルマーク。どことなく「富士山」のような曲線だなーと思ったらどうも葛飾北斎っぽいのですな、雰囲気が。

宇宙関係と違って特にミッションごとに特殊なマーキングを施すことは無いでしょうし取り立ててバリエーションってのも無いだろうと思われますが、ちと毛色の変わったところではTV番組「飛び出せ!科学くん」撮影に使用されたときに、船体に番組ロゴとマスコットキャラ「科学くん」をあしらったステッカーが貼られていました。詳しくは中川翔子さんのオフィシャルブログをどうぞ。

いや~、この番組のおかげだと思うんですよね、しんかい6500に注目が集まって2社で同時に新作キットリリースなんてお祭り騒ぎになったのは。

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また本キットにはしんかい6500各部の機能や運用シークエンスについてフルカラーで解説したデータカードが付属します。ハセガワらしからぬ(失礼!)ユーザーフレンドリーな製品パッケージは近年マシーネンクリーガーやアイドルマスター航空機など「ハセガワらしくない」製品群を積極的にリリースしてきた蓄積が反映されているのでしょう。実際刷り物一枚あるだけでずいぶん楽しくモデリング出来るものです。

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ひとつひとつのパーツは小さなものですが、形状・ディティール共にキレのよい出来映えです。マニュピレータよいわぁ( ^ω^)

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組み立てていくと(あたりまえなんですが)やっぱり「船」なんだなーと、あらためて思わされる。

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垂直/水平スラスター内部のスクリュープロペラもばっちり再現。タイトな作りですが吸いつくようにパーツがはまる。ところでしんかい6500、垂直スラスターは左右両舷にあるのですが水平スラスターは船首部分だけで後部にはないんですね。海中ではどのように動くのか、そんなことを考えながら組み立てるのも楽しい作業です。

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楽しんでいるとあっという間に完成。これはヽ(・∀・ )ノイイ! プラモデルですねー。ストレスを感じることなく適度な作業時間で文句ない立体が手に入ります。

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ホワイトとオレンジのカラーリングは成形色のまま(撮影を考慮してつや消しクリアは吹いてます)ですけど、船首付近を中心にちょこちょこ色を乗せてみました。アーム基部とか投光器とか塗ってないとこもありますが、チョイ足しでも実感マシマシ。

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上甲板(と、言うのだろうか…)デカール貼りにはちょっと慄いたのですが、軟化剤も定着剤も無しでちゃんと曲面に追随し、表面に凸モールドがあってもビクともしません。近年だとこの種の一般(?)向けアイテムではステッカー処理になりがちなものですが、ここは老舗の矜持というものか。

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主推進機は左右に可動します。この部分のスクリューは未接着のままですので、息吹きかければグルグル回ります。ドライヤーを利用してギュンギュン回転する様を撮ろうかと思ったけれど、冷静に考えたらそんなに高速推進する機械じゃないよな。

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船底にはウェイト4つ。スタンドに飾ると見え難いものですが、ちょっとしたアクセントになります。この4つのウェイトって潜航する度に使い捨てるんですねえ。遠い将来、海が干上がった後の地球にやってきた人たちがきっとこの正体不明の鉄のカタマリ見つけて悩むんだぜ、きっと。

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バトルダメージもあるまいと特に汚しはやらなかったんですが、運用中の実機写真なんかみてるとパネルラインはくっきり目視できますね。組んだ後で見るもんじゃないですね(w;

まー、以前にお台場の日本科学未来館でみた実物大模型が綺麗だったんで、その辺の印象で…。科学未来館のレプリカは耐圧殻内部にも乗り込めてなかなか楽しい展示物でした、都内近郊お住まいの方、オススメですよん。

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ちょっと前に流行った海洋堂原型の深海生物ボトルコレクションなどがあれば、サイズの違いは無視してでも「水の無い水族館」を作れるかも知れません。大王イカのアクションフィギュアでもあれば深海の大決闘をディスプレイ出来るのだが……あ、

あ る じ ゃ な イカ 。

と、いうわけで科学の世界に勤しむお子様方から触手好きな紳士諸兄にまでひろくオススメできる優れた教材・玩具として、実によくできた製品なのです。購入された方が謎と神秘に満ちた深海に興味を持ったり、海洋学研究の道に踏み込んだりするきっかけになったら良いでしょうなあ…

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おつかいいてきたー ε=ε=ε=( ゚∀゚)ノ

いや、ホントはこんなアップトリムで浮上するフネじゃないんですけど。

いあ、ツッコむところはそこじゃないだろうってわかっていますけれど。

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