ハセガワ「1/72 ハリアーGR Mk.3」

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久し振りに絶版キットを紹介してみるシリーズ、ハセガワの品番BT7、ホーカーシドレーじゃなかったBAeハリアーです。流石にこれは在庫していませんねー。しかし現在では同一内容のままパッケージデザインを変更して品番で言うとB6で流通している製品でもありますから、そちらのレビューとしてお読み戴ければ幸いです

スタイリッシュな現行版に比べて小池繁夫画伯のイラストをより大判でみられる旧製品のパッケージもこれはこれで良いものですね。背景の岩山がヨーロッパ正面というよりアメリカ中西部みたいなのには理由があるのでしょうか?

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製品の著作表記は1986年になっています。それなりにベテランキットというわけで……

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とはいえ、80年代のハセガワは1/72スケールで意欲的に新製品開発を行っていたかと記憶しています。AH-64アパッチとかF-20タイガーシャークとか、低価格ながら優れた品質のキットは現在でも十分通用するもの(実際流通してますしね)。

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このイギリス空軍仕様GR Mk.3の他海軍仕様のシーハリアーFRS Mk.1、アメリカ海兵隊仕様のAV-8Aがバリエーションとして開発され、主に機首部分を中心にしたCランナーの変更で対応されているハズです。

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前後キャノピーの他HUDもクリアーパーツ化され、後部キャノピーには脱出用爆砕コードもモールドされています。80年代でこのディティールはなかなかのものだったのではないか……と、思われ。

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対地攻撃迷彩が施されているのに派手目なカラーで各種マーキングが描かれているのには時代を感じますが、最も時代性を感じるのは付属デカールの機体が駐西独イギリス空軍のものだという点でしょう。むかしはドイツに西とか東とかありまして、サーカス団員に化けたアルベルト・ハインリッヒが亡命してきたりベルリンで赤い雨が降ったりしてました。遠い昔の話だ……

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パネルラインそのほかすべて凹モールド、若干のバリはありますが成型状態は概ね良好です。

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パーツ総数を抑えて低価格でも組み立てやすいコンパクトな航空機プラモデルを展開しているハセガワの1/72シリーズ、80年代のそのころは今ほどジャンル間の差が大きくは無く、10代半ばの小僧にとってはガンダムも戦車もヒコーキも総じて皆「プラモデル」だったように記憶しています。ガンダム見たらガンプラ作ってエリア88読んだら飛行機作る。その無節操さが楽しいのさ。

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さすがにパイロットのモールドは甘めではありますが、「お地蔵様」や「道祖神」とは化しておらず十分人間で通ります。サイドパネルと主計基盤はデカール表現で、この時期のスタンダードなもの。

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レーザー測距儀を内蔵した特長的な機首部分。シートと計器盤の接着位置がちょっとあやふやだったので、このあたりは慎重に仮組みしながら進めていきます。

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コックピットの真後ろにはロールス・ロイス ペガサスエンジンのインテークファンが鎮座します。そんな事起こらないんだけどひゅん!と吸い込まれそうで不安になるレイアウトだ(笑)

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推力偏向ノズルを両サイドに四基搭載し尾部に向かって鋭く絞り込まれる特異な構造の胴体部分。四つのノズルを脚に見立てての「ペガサス」ネーミングなのでしょうが、イギリス人のセンスってまれに直球で中二病ですねい。でも形状を見るとペガサスというより食肉加工されたブタさんみたいなのですけれど。

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そのベクタード・ノズルは可動します。ディスプレイ一色だった当時のハセガワキットにあっては数少ない可動ギミックと言えるのではないかしら? このVTOL機がもつユニークな構造を再現する配慮は実にユーザーフレンドリーでナイス!ただ可動軸を設けるのではなく単にプラのテンションで押さえているので、塗装したら固着してしまうでしょうね。それでもなお、ノズル角度をフリーに設定できる構造ではある。

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ハリアーのバリエーションでもノーズ形状に特徴があるこの機体、緩やかにカーブした主翼のラインともあいまって翼を生やすとイルカとか魚竜とか、なんだかそんなものに見えるカタチをしていますなー。このクラスの単座戦闘/攻撃機でここまで上翼配置の機体も珍しい……かな? 昔から有名で見慣れた飛行機ではありますが、よく見れば相当に変なヒコーキなのである。それがいいんだけどね。

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底面にはオプションでアデン30mm機関砲のガンポッドを2基懸架することができます。前後タンデムに配置された主脚と両翼先端部分の補助輪もユニークなところでって機体中央のパイロン取り付け部を穴開けするの忘れた!!!!!

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武装関係はガンポットに加えてマトラLR155ロケットランチャー、1000ポンド爆弾が各2個、そしてGBL755クラスター爆弾1個がどれもパイロンを通じて接続されます。小さな機体でも豊富な兵装は作っていて楽しいもの。また増槽の類は無いのですがオプションパーツで空中給油用のプローブが付属します。

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ラインを崩すのにちと躊躇いがあったのでプローブは取り付けずにこれで完成体。フォークランド紛争でのシーハリアーの運用や、なんと言ってもエリア88での活躍でハリアーといえば空対空戦闘を想起しがちかも知れませんが、第一義的には対地攻撃を主任務とする機体です。米軍の機体記号が「AV」なのは攻撃機・垂直離着陸の略であって、俺が中学生の頃考えたのとは違うぞ!

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あらためて見てみれば主翼の平面形状はA-4スカイホークになんとな~く近しいものを感じますし、F-15や16よりはA-10の、まあ仲間といえるのかな。昔の本にはよく「活躍想像図」的に最前線の不整地からびゅんびゅん飛んでくハリアーのイラストを見たよーな気がしますが、いかなVTOL機とはいえそんな運用は(基本的には)やらんそーなのですが。

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水平尾翼は機体内部で接続され左右で連動します。やっぱり製品開発にあたってのギミック指向はあったようですね。

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古くから様々なメーカーの様々なスケールで発売されてきた人気機種、ハセガワのベテラン製品は機体バージョンとしても第一世代の古いハリアーではありますが、この低価格と作り易さはいまでも十分大きなアドバンテージではないでしょうか。

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開発当初のコンセプトであった地上配備のSTOVL機としてよりも、むしろ母艦運用の方面でハリアーの性能は花ひらいたといえるでしょう。スキージャンプ方式の滑走離陸を開発したことは小型の揚陸艦にも幅広い作戦能力を付与することが出来、イギリスのみならず世界の様々な国々で海軍力を進歩させたことは航空史上に名を残す偉業で、いずれはF-35Bに代替される日が来るのでしょうがそれまでは「世界唯一の戦力化されたVTOLジェット戦闘機」の地位と栄光を保ち続けることと思われます。

え、フォージャー? やですねあんなのハナから戦力外じゃないですか(´∀`*)ウフフ

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