ハッピーミディアムプレス「スチームパンク・モデラー」

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「スチームパンク」をテーマにしたSFモデル・スクラッチビルド作品集。128ページのボリュームにイギリスのみならずアメリカ・フランスのモデラー合計12名の作例が写真多数、本文記事分量も多く、濃いめの内容です。

この種の作品集でフランスってちょっと珍しい印象だなあと思ったらジュール・ヴェルヌの「月世界旅行」から始まる構成になるほどなるほど。

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世界初のSF映画としても知られるメリエスのサイレントムービーからの立体化です。日本では某大手インターネット匿名掲示板SF板のバナーとしても有名だな(知らんわ)。しかし1SF者として言わせてもらえばジュール・ヴェルヌはスチームパンクSFじゃなくて古典SFだッ!!と声を大にしたいところでありますが、19世紀的蒸気機関で構成されたSF世界という観点ではスチームパンク的と言えなくはないのかいやまてヴェルヌの「月世界旅行」は別に蒸気機関で宇宙に行く訳じゃなくてあれは当時の普通のテクノロジーで如何に月に向かうかというシミュレーション的要素ががががががが

あ、いや、すいませんどーもどーも。これだからSFのひとっていややわあ。細かいこと気にしないで続けまショー!同じく19世紀の巨匠としてはH・G・ウェルズが挙げられますが、この人の小説では「宇宙戦争」の火星人トリポッドを出してくるのが定番ですね。

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作っているのがフランス人モデラーなんで、背景に映っているのがフランス語版の翻訳書なのはちょっと面白い。しかしウェルズでも「月世界探検」はまず取り上げられませんね。やっぱビジュアル的に弱いですかねー。他にも19世紀のフランスで描かれていた旅客飛行船の想像図を立体化したりバロウズの「地底世界ペルシダー」シリーズから「鉄モグラ」をスクラッチとかレトロフューチャーな作例満載です。ああ、いい響きだな「レトロフューチャー」って。

けれどもね、狭義に「スチームパンク」ってそんなんじゃないよな。大抵の日本人に「スチームパンクってどんなの?」とたずねれば、返ってくるのは 「知らんがな。」 「サクラ大戦。」とかじゃないかなーと思うんだけど、だが、ちょっと待ってほしい。サクラ大戦は確かに「スチーム」だが少しも「パンク」ではないだろ?日本におけるスチームパンクSFの受容態度はガジェットばかりで精神が反映されていない。もっとオルタネイティブでどこかインモラルで病的で明らかになにかが間違ってる。それが内燃機関として石油の代わりに石炭を用いて立ちこめる蒸気で驀進する文明世界を描いたビョーキィでスラップなスチーム!パンク!!つまり こ ん な の だ m9(`・ω・´)ビシッ!!

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…まぁ、大抵の日本人ならサクラ大戦のほうを好むかもだ(´・ω・`)

K・W・ジーターとかジェイムズ・P・ブレイロックとか好きな人たちにオススメですよってなんて狭いニッチ…

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オリジナル作品ではエアフィックスのビームエンジンとか蒸気機関車が大活躍でなるほどあのキットってこーゆーふうに楽しむのか。いやまてそれは正しい楽しみ方じゃないだろ!とツッコミ入れる、その間違ってる加減がまさしくスチームパンクなんだよなァと思わされます。それは例えばスマートフォン全盛のいまにビクトリア朝風の携帯電話をこさえてみるような間違い加減なんだよな。

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実際には携帯電話ではなくて「スタートレックのコミュニケーターをスチームパンク風にしてみる」トレッキーにしてもトリッキーな作品ですけど、ケータイ屋の店先に並んでたら面白いでしょうねえこれ。ガラパゴスどころの話じゃないと思いますけど(笑)

スチームパンクは蒸気の問題じゃない、むしろ狂気の問題だと、あらためてそんなことを考えさえてくれる一冊で、例えて言うならむかしホビージャパンで連載されていた「ファンキュア」とか「SMH」の路線がいちばん近いかなあ。「漁師の角度」や「旅行惑星」他にもいろいろありましたね。当時それらは全部まとめて「アート」路線でくくられていて、それもまたなんか違うんじゃなかろうかと、あの頃は思ったものです、はい。

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ありきたりじゃないものを探しているモデラー諸氏には必見の内容かと思われます。ワンフェスも近いですね。

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