パンダホビー「1/35 M-ATV 全地形対応対地雷軽装甲機動車」
中国の新規模型メーカー、パンダホビーによるインジェクションキット第一弾です。実車は現在イラクやアフガニスタンでハンヴィーに代わって急速に配備が進められているMRAP(耐地雷・伏撃防御)車両の一種で、プロジェクトのなかでは最も小型の4人乗り装甲兵員輸送車です。
パンダホビーの内部事情には疎いのですが、いくらTVやウェブのニュースなどで「旬」の車両とはいえ、未だ陸軍の正式ナンバーすら付いていない最新鋭の兵器を即座にリリース出来る開発能力やスピーディな情報入手などは一体どこから……あれ?
うん、この件についてはあんまり深く考えないことに (・∀・) シヨウ!きっとぜんぶこうかいじょうほうですよ。
外観では特徴的なキャビン・ボンネット部分はスライド金型使用の一体成形です。
そしてあとは怒涛のようなパーツ群です。新興メーカー初めてのプラスチックモデルにしてこのボリューム、インジェクションパーツ総数392個ですってよ奥様!!ホビーリンクジャパン初のインジェクションキット“外はパリパリ中はジューシー!?こだわりジューシー具材パーツ入り!”「1/1プラギョーザ」のパーツ総数が20点だったのを基本単位とすると、本キットのパーツ総数は約19プラギョーザであるということになるわけなのであります。
さらに今回、これに加えて
デカールは勿論、なんと3枚ものエッチングパーツが洩れなく付いてきます!えーっ!!(外野の声)
…などと平日昼間のテレビショッピングみたいなことやってる場合じゃありませんな。ご覧の通りしょっぱなからスゴいプラモデルを出したもんですパンダホビー。あんまりスゴいので今回は組み立てることなくパーツの詳細だけみてお腹いっぱいのレポートになりますから最後まで見ても完成しませんよと、あらかじめ申し上げておきますよ?
初めてハンヴィーを見たときに随分でかい車両だなーと思ったものですが、こいつはそれに輪をかけて巨大な車両です。それでもMRAP計画では小型のカテゴリー1車両が大きすぎで機動運用に向かないとか開発されたんだったか、とにかくこれでもミニマムなのだという事実が、現在のアメリカ軍が対峙しているIEDや対戦車地雷の脅威の大きさを物語っているといえましょうか。
車体底部の大型装甲板は最近の装甲車両の特徴、定番と言えるかもしれません。底板が定番(ゴクリ)でもこーゆーの見てすぐ「自衛隊の車両は未装備でケシカラン」とか言いだしちゃう人がいるのは痛いですね。米軍だって国内じゃ運用してませんからねこれ。
車両全体に渡っていくつものアンテナやセンサー類が林立しているだけに、メーターパネルにもそれらをコントロールする機能が備わってそうなものですが、さすがにそこまではわかりませんねー。ところで1/35スケールで東芝タフブックをキット化するメーカーはおらぬか。
ルーフ上の兵装ステーションには様々なバリエーションがあるようなのですが、キットでは一般的なM2重機関銃を備えた半開放式の銃塔をパーツ化しています。
ハッチや各装甲板も良い出来、しかしながらM2重機はその、ちょっとゴニョゴニョなのでここは…いやクローズアップ撮らなかったですけどね。ちょっと残念ポイントです(むしろM2重機関銃って色んなメーカーから出来の良いのが出てますから、敢えて力を入れなかったのかなーとも思います。なんとなく)
サスペンションのスプリングも4人乗り車両とは思えないほどゴツくて太いのが入ってます。大抵のSFアニメよりも現実の方が余程SFです…
OSHKOSHのメーカーロゴが入ったマッドフラップ。
微小なパーツも多数なのですがごらんのとおりにバリも発生しています。成形の限界なのか、ともかく一筋縄ではいかないプラモなのは間違いないでしょう。
エイッチングは折れ線も太く入り表面には防護シートも貼られていて、これ自体はよいものです。が、組み立て説明書の扱いがちょっとぞんざい…各工程で加工後の状態しかイラストが掲載されていません。「パーツ見りゃ曲げる方向ぐらいわかるでしょ」ってなもんです。
完成後はほとんど見えなくなるキャビン中央のラック(銃塔のステップを兼ねるようです)もエッチングパーツ大量使用で非常に意欲的な構成を見せているだけに、もうちょっと親切に図示してもバチはあたらんでしょー。
サスペンション基部も妥協の無い驚異の再現度です!いや実車見たこと無いんですけど多分「再現」なんだろう(w
組み立ては決して平易なものではないでしょう。「上級者向き」と言ってしまえばそれまでですが、それで済ませるには勿体ない車両であるのも確かでちょっと複雑。
キャビン背部にあるのは多分これ消火器で、いざって時には天井からシャワーのように消火剤が降り注ぐのでありましょう。消火剤に何を使ってるんだか不明ですが(さすがに炭酸ガス系ではあるまい)、現代戦って怖いなーとここだけ見ても想像できる…
説明書は全般に不親切な印象を受けます。どうもひとつの製品パッケージとしてはチグハグなところが見受けられるようで。
デカールの貼付指示があるのは計器類のみ、車体外部のマーキングは四面図があるのでそれ見て参考にしてね!と、いうことらしい…
しかし四面図の方もどうやらオリジナルではカラーだったイラストを、なぜだか白黒で印刷してるようでマーキング類はともかくカラーガイドがさっぱりガイドの機能を果たしていないという衝撃の事実Σ(゚д゚lll)
ダメ出しばっかりしちゃいましたが基本的にはよく出来た模型だと思います。組み立ては難易度の高いものでしょうがAKインタラクティブの写真集など資料も出揃って来ていますから、チャレンジする価値はあるかと思われます。例えハードルは高くても、それを越えて見える景色は素敵なものとなるでしょう。
ところでコイツがウルトラマンタロウに出てきた「ラビットパンダ」にみえるワタシは目が腐っていますかそうですか。