ピットロード「1/35 陸上自衛隊87式自走高射機関砲」

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陸上自衛隊の対空車両、正式な愛称としては防衛省が一般公募して選ばれた「スカイシューター」ってのがありますが「E電」並みに誰にも使われない87AWのインジェクションキットです。

ピットロードの陸物キットで実車の写真パッケージには驚かされましたが、考えてみればモノクロームブランドの陸自車両と同じフォーマットなんですな。

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複雑な形状を持つ砲塔部分はスライド金型使用でパーツ数を抑えた構成です。

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車体上下とも基本となるパーツはワンピース成形(と書いておくと「ワンピース」で検索ヒットするかも知れない)。一度シャーシーを設計しておけばそこからいろいろ開発できるのが戦車模型の良い所なんですけど、そっち方面の展開するかどうかは不明…

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ランナーの一部に保護シートが巻かれていまして、

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開けてみるとスライド金型使用で作られた繊細なパーツが現れます。こういう処置は気が効いてますね。

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この部分、Bランナーは2枚入りです

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Aランナーは4枚入り(画像の順番はアルファベットとまったく一致しとりません…)

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連結キャタピラ部分のTランナーは17枚も入ってる。

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クリアーパーツ、エッチングなど。ポリキャップは車輪関係より砲塔の可動部分に使用する箇所が多いです。

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デカールは全て第7師団第7高射特科連隊隷下中隊所属車両のもの。第3中隊のみおまけとして旧部隊マークが含まれます。第2師団や高射学校のマーキングは無いのね。

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このキットの特徴としては陸自車両に特有の手すり(全部が全部手すりな訳ではなく、大部分は偽装固定ベルト用のタイダウンです)を全て別パーツで再現している点が上げられます。おかげで砲塔パーツは穴だらけだ(笑)

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車体上面もご覧の通りで取り付け穴は綺麗に抜けています。

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これまで陸自車両のプラモデルってどうしてもこの部分がネックでしたから、全てインジェクションパーツでやってることの意義は大きいと思います。そしてほぼ同じ形状なのにサイズの違うブツがいくつもあるのは実に日本的な車両設計だ…

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主砲方向部分の初速計測器にも素晴らしいディティール。配線部分の抜けがたまらん(;゚∀゚)=3

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サスペンションはアーム取り付け角度を選択することで標準車高・低姿勢時の2種類を選べます。射撃時は低姿勢だったかな、ちょっと確信はないんですけど…

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標準姿勢で組んでみましたが、画像が逆さまなのでサッパリである…。起動輪はポリキャップ内蔵、他の転輪などはすべて固定ですけどテンションきつめなので無接着でもイケるかな?なお順番に組んで行けばこのあと履帯ですけど、そこは後回しだッ!

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予備動力装置が搭載されているので開口部分が多いのも本車の特徴、全てのダクト部にはエッチングパーツによる金網が付属します。ピットロードのキットは従来ですとまず通常版が出てその後エッチング付き限定版みたいな流れが多いものでしたが、本車に関しては最初からクライマックスだぜ。

なお操縦席のペリスコープは通常のプラとクリアーパーツの2種から選択です。

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車載工具も当然別パーツなんですけれど、それらも含めて車体上面の取り付け部分はかなりタイト、抜きは綺麗でも結構な箇所をドリルで拡張する必要があります。それとこのキットで不思議なのは細かいパーツよりも大柄なそれにバリが出てるケースが見られることで、処置は簡単ですけどなんだかヘンな感じだなあ。普通逆でね。

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エッチングの多様で無塗装でもゴージャスに見える車体部分。

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車体後部に2個存在する雑具箱は工程で言うと7-Aで取り付けつけるようになってますが、それより先にA-15パーツ(それぞれ)2個を後部デッキに取り付けた方がスムーズだとは後になって気がついた。

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同じような形状の手すりパーツでもA6は取り付け部分が開口されずにケガキによるモールドに従って接着します。また車体前面の滑り止め加工部分は特に処理されていないので、模型各誌で最近のメルカバレビュー記事などを参考にどうぞ。

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砲塔部分もハッチ側面のペリスコープは通常/クリアの選択式。ところでこの車両で砲塔内部から側面を視察する状況って結構なピンチだ。

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左右で微妙に高さの異なる(なんて日本人的!)な砲塔後部のステップもプラパーツかエッチングを選択できます。しかし昔と違って最近ではエッチングよりもプラの金型で設計クオリティを魅せるキットが増えているので、果たしてエッチング使えばそれで全部OKと言えるのだろうか。

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レーダーマストのアクチュエーターは銅パイプ(と記されていますがたぶん真鍮パイプだと思います)により可動します。パイプ内側を前後するB8パーツの切り出し整形は綺麗にやらないと悲惨なことになると思う。幸い無事に、回避されましたが…

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捜索・追跡レーダーともポリキャップ内蔵で自在に可動。この戦車の話になると必ず「ゲパルトのレーダー配置にパテントがあったので仕方なく後部にまとめた」みたいなこと言われるけど本当かな?どうも80年代後半~90年代ぐらいの自衛隊車両に対する批判的な記述って明確なソースも無く、無定見に書かれた揶揄が広まってた気配が濃厚なんだよなー、色々。

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西側主力対空火器、エリコン35mm機関砲。従来から自衛隊が配備していたL-90高射機関砲と同一の火器で砲弾は共通です。

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極小のエッチングパーツPE14を片側5個合計10個貼りつけるのはタイヘン。気がついたら無くなってたりで真っ青になったけれど、予備が2個あったんで事なきを得る…あーあれだ、悪名高い事業仕分けも「自衛隊車両から手すりをなくせばプラモデル化が容易で模型メーカーの開発費用が抑えられます!」とか言ってくれれば支持したかもだ。いやしないけど。

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発煙弾発射機は旧型の75ミリ3連装と新型の76ミリ4連装を選べます。新型の方も取り付け台座はエッチングが使えるんだけど、旧型の方が上手くいってコイツを使おうと思ったら急に気力が削がれた。いや、膝に矢を受けてしまってな。

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で、完成した砲塔(と、このタイミングでデジカメの修理が終わったんで画質が一変)

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この部分だけでも並みの戦車プラモ1台分以上の密度がある機構です。

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後回しにしていたキャタピラ部分。通常姿勢時の上部はガイドパーツがあるので自然にカーブを作れます。その他の部分についてはバルサ材二本をガイドに流し込み接着剤を流し込み過ぎないように、接着部分が固着しない内に、でもある程度は固まってきた頃合いを見計らって…

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結局最後は気合なんだけどな(´・ω・`)

正直に言います、このタイプの連結接着非可動式で全パーツ別体になってるタイプのキャタピラが一番苦手です…よっぽどタミヤの74式からベルト履帯を流用しようかと思ったぐらいで、最近のトラペ製品が軒並みこのタイプになってるのはカンベンして下さい(´;ω;`)

ダブルピン形式の一部連結式だとキネティックのM-109の履帯が面白い設計をしていましたが、キネティックのM-109が面白いのは履体だけだっつー話もありで、どこかで何かブレイクスルーが起きないかなあ(他力本願)

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そんなこんなでともかく形にはなりました、ピットロード製1/3587式自走高射機関砲。ピットロードも最近はずっと組み立て易さを第一に考えたような製品が多かったので、久しぶりの正統派ストロングスタイルに苦戦した気分。

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本車に関しては度々「戦闘ヘリの対戦車ミサイルにはアウトレンジされるから無駄で時代遅れ」みたいな話がされますが、それはサッカーチームで言えば「ディフェンスラインが強固だからキーパーイラネ」みたいな極論で、やはり最終的な防空を担う、本車のように一台でシステムが完結している対空砲の重要性は他に変え難いものです。またロシア製の対空車両によく見られるガン/ミサイル複合のコンプレックス車両は一から設計するならまだしも安直に対空車両にミサイル載せれば済むってものではないでしょう(ドイツがゲパルトにスティンガー?積んでたけどどうなったのかナー)

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調達数が限られることにより高価格化を招いた(というのも一面的な論で全肯定はしたくないのですが)我が国特有の事情はさておき、80年代に三自衛隊全体で起きていた正面装備のハイテク化、高性能化を象徴するひとつの事例として、戦後初の国産自走対空砲である87式自走高射機関砲には一定の評価と地位があってしかるべきと思われます。

第一、非公式の部隊内ニックネームが「ガンタンク」なんて格好良すぎるじゃありませんかキリッ!(要出典)

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