フジミ「1/72 陸上自衛隊 10式戦車」
陸上自衛隊最新鋭の戦車、10式戦車(ジュッしきじゃありませんよ、ヒトマルしきですよ)のキットレビューです。これまで1/144スケールのレジンモデルや雑誌作例でのフルスクラッチはありましたが、初のインジェクションキット化は1/72スケールでフジミから。この一報を聞いた時にはそれなりに驚きましたが、
考えてみればフジミはこのスケールで61式・74式・90式の歴代自衛隊戦車をキット化していますので、自然なラインナップと言えるでしょう。ミニスケ自衛隊戦車インジェクションと言えば<ピー!>社もですけどぉ、そっちについてはぁ、ノーコメントのぉ、方向で…。
パーツ関係見て行きます。こちらは砲塔周りで砲塔上面はスライド金型使用の一体成型。さすがに各部の小フックも込みですけれど、このサイズなら致し方ないかな。なお事前にメーカーから公表されていたCGによる線画では試作1号車が描かれていましたが、実際の製品は試作3号車と思しき構成になっていて車長ハッチの構造も3号車に準じたものとなっています。
車体関係ではサスペンションアームが車体下面と一体化されて、こちらも1/72スケール標準の出来かと思います。全車輪独立懸架のアクションを再現するのはちょいと難しいかと思われ。
自衛隊車両では初の装備品となる側面下部のゴムスカートは若干波打ったような状態でモールド化されています。こういった処置は35だといささか煩く感じられもしますが、このサイズに於いては派手目で良いですね。
各2セット入っている足周り。キャタピラは部分連結式、曲面部分も一体化がすすめられての片側4パーツ構成。転輪部分はアンダーゲート処理でパーツ化されています。起動輪や誘導輪はごく一般的な出来栄えです。
このキットの特徴はキャタピラ用のゴムブロックが別体でパーツになっていることで、ゲリコマ(ゲリラ・コマンド部隊)対応で市街地戦闘をも見据えた10式ならではの部品かと。押○守の映画みたいに好きなだけ戦車を市街地で暴れさせまショー。
デカールはこれまでの公開時に試作各車に施されていたマーキングの他、第71戦車連隊を始めとする陸上自衛隊戦車部隊のシンボルマークや車両番号も含まれています。10式が正式に部隊配備されるのはまだ先、そもそもどこに配備されるのかもまだ不明なのですが、模型でならばいくらでもお好きな部隊に配備可能なのです。
いや、まあ、最初は教導団だろうとは思いますけど。
で、組んでみました。10式は油気圧サスペンションによる全輪独立懸架で74式ばりに自由自在な姿勢制御「も」可能な為か、本キットでも74式に準じた上部転輪無しの構成になってます。しかし実際のところサイドスカートの内側はまだ一般には公開されていない(ハズ)ので、この箇所は想像の域を脱しません。独立懸架も第一義的には主砲発射時の能動的反動吸収「が」役割なんで、ひょっとするとこの部位になにかスゲーひみつがあるかも知れませんが、やっぱりスカートの中はひみつなのです。
ひょっとすると「MCあくしず」誌辺りでは10式スカート内部の想像図が起こされているかも知れませんが、それはたぶんシマシマとか純白とかそーゆー方向性だと思います。
砲塔部分、ハッチは開閉選択式です。初公開当初主砲が44口径120ミリ砲では「90式とおんなじだ」として数値だけ見てブーブー言ってる向きも見受けられましたが、ご覧の通りにラインメタルの120ミリ砲とは違ってエバキューターを持たない日本製鋼独自の設計、使用砲弾も強装薬・強化弾芯の徹甲弾Ⅲ型(10式徹甲弾)が同時に開発されて全体的な砲威力も向上しています。
思うにその、砲弾(特に薬莢)と薬室を省みずに砲身口径「だけ」で強いだ弱いだ言う人はが逆転裁判的に言うと「このド(ry」
そして一応の完成です。起動輪部分や砲塔後部バスケットなど一部で若干ストレスも感じられましたが、このスケールに慣れている方なら何らの問題も無いでしょう。砲塔シルエットは「メルカバに似ている…」なんて言われたりもしますがいちばん似てるのはM8スティングレイだと思う(無責任な発言)
後方から。一体成型のワイヤーは如何にも折れそうで…いや実は折ったんで…皆さん、注意しましょう。キャタピラの組み付けはサイドスカートでほとんど見えなくなるから全然心配いらないよ!
上方から眺めてみるとこの戦車が90式の正常な発達進化形態なように思えます。軽量小型が本車の売りですけれど、外形寸法見るだけだとそんなに違いは感じられなくて、さて同スケールのプラモで並べてみたらどうなのだろう?「比べてみる」って結構大事なことですよん。チョコタンクは手軽にそれが出来て良かった。
そういえばフジミの90式とで砲塔パーツのリング径ってどうなってんでしょ?もし一致するなら砲塔挿げ替えて「90式改」みたいな、誰でも考える…夢をね。
で、こっから若干の苦情をば。前述の通り本キットは試作3号車をモデライズしていると「思しき」仕様でそれに準じて前照灯が車体中央付近に寄った造作になっています。しかしこの「寄り目」の試作3号車は本来がドーザープレート装備車両なのであって、ライトの位置が変更されているのはドーザー基部や駆動装置が置かれているためなんですな。しかしてフジミは特にドーザー付けることなく3号車仕様にしちゃったのでどうもヘンです落ち着きません。なんでだろー。
まー想像ですが試作1、2号車の前照灯が車体前縁エッジ部分、フェンダーとの境目に位置してると金型造りづらかったとか、そんな理由なんだろうなー
もう一点、車体後部のエンジンデッキがツルペタです。ここんところは公開されても視界に収まり難くてニュース映像や雑誌記事なんかを見てもあんまりクリアーな写真が載ってないんですけど、実はこうなってます。
(参考画像:光人社刊「陸上自衛隊の戦車」面白い本だったので近日書評予定です)
大型の砲塔ラックに隠れるようにラジエーターの開口部分が金網で覆われた状態です。なるほど見えにくいんだけど、90式と同様の構造ではあるので、なんかディティールがほしかったなあ…
細かいこと言ってくとアレですけれど雰囲気は抜群の本キット、このタイミングでのプラモデル化をまずは寿ぐことに致しましょう。90式発表当時に比べるとすごくハイスピードです。実車がいまだ試験段階であるのに模型業界でははや日本中に配備可能であり、なんでしたらサンドカラーに塗って好き勝手に海外派兵させたり55口径砲に換装してRWS乗せてAPS装備でKTさんもこれなら大満足仕様とかやりたい放題ですよ!!
…現実の自衛隊がそうであるようにプラモデルの自衛隊でも「最大の敵は財務省」なのだろうな。
「この戦車は強いのか弱いのか」いろいろ議論はなされるところですが、軍事研究家の(故)江畑健介氏が生前何度も語っていたように「実戦を体験していないので、わかりません」というのが正解で、そしてもっとも望ましい解答なのでしょうと最後に書いてまとめます。
…結局キャタピラゴムブロックは付けなかったんだけど、誰も気がつかないよね??