プライザー「1/32プロシア兵 1756 13体入」

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日本では鉄道模型用のフィギュアを出してるメーカーだって印象がいちばん強いんじゃないでしょうか?ドイツの老舗模型メーカー、プライザー社のヒストリックフィギュアの紹介です。

「ヒストリックフィギュア」と言われるとまあなんとな~くこのへんの時代だろうなーという最大公約数みたいなものがありますけれど、実際はさかのぼる事どこまでだったら「ミリタリー」の範疇で、どこから先が「ヒストリカル」アイテムの領域になるのでしょう?冷静に考えてみれば「20世紀」とか「昭和」なんて最早歴史の彼方の事象ですぜHAHAHA!

すいません、笑い飛ばせるほど若くないです…

しかしいわゆるヒストリカルな関連ならば、ナポレオニックすなわちナポレオン時代のファン層というのが確固として存在していますね。お金持ちの人なら山ほどフィギュアを揃えて「ワーテルローの戦い」のウンザリするほど巨大なパノラマを作ったりしますし、そうでない人なら脳内で「ダヴー元帥は麗しのハゲ」とか思ってウットリしているのものなのです(偏見)。最近では長谷川哲也のマンガ「ナポレオン―獅子の時代―」のおかげでこの分野も随分裾野が広がってきているそうなのです、が――

今回紹介するアイテムはナポレオニックでもなんでもなかったりする(´・ω・`)

1756年という年号は歴史的には「七年戦争」の始まった年として知られています。直接的にはシュレジエン州の継承権をめぐるオーストリアとプロイセンの争いですが、間接的には「欧州情勢は複雑怪奇」どころの話じゃないほどメンドーくさいので皆さん勉強しまうま。ちなみにその頃の日本は暴れん坊将軍が死んで江戸中の悪者が一安心してる頃合いでした。なんと平和な。ってなあたりで大体の歴史的位置づけはお分かりいただけたでしょうか?

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ドイツ史的に言えば彼らは「フリードリヒ大王の軍隊」として知られ、新興国家プロイセンを発展せしめ今日まで続くドイツ国家の礎石となった人物・時代として歴史的に重要な地位を占めています。本製品はその18世紀プロイセン軍の中核となった擲弾兵を立体化した、5種類合計13体に及ぶ豪勢なフィギュアセットです。

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いわゆるキャラメル箱を開くと内箱の中には み っ し り パーツが詰まっています。開けたら二度と閉まらないんじゃないかと思った方、正解です。成形色が真っ白なのはプライザー社の伝統ですけど、もっと積極的にディティールを誇示するつくりでもバチは当たらないと思います。

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キャラメル箱の内側が組み立て説明書なのできれいに切り開きましょう。いろいろと解説文が記されていますが全部ドイツ語です。ユーロ文化圏にあるまじき唯独主義の甚だしさで少しはドイツレベルを見習いましょうよどっちも日本語書いてくださいよと泣きが入りますが、大学教養課程より小林源文のマンガでドイツ語を勉強してたツケをいま払ってる気分だ…

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パーツ自体は実にふるくsあーいや、伝統的なモデルです。こちらは「擲弾兵,歩兵第7連隊」。マスケット銃を持ち司教冠型の縁なし帽を被った典型的なプロイセンのグレナディアで5体封入されています。

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同じく「フュージリア兵,歩兵第38連隊」フュージリアとは聞き慣れない名称ですが「フュージリア銃」と呼ばれる軽小銃を持ち、比較的小柄な兵士によって構成された部隊だそうです。などと本で読んだことをそのまま書いてみたけれど、得物も身体もそんなに変わりがありません(笑)こちらも5体入り。

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「下級将校,マスケット銃兵,歩兵第7連隊」ステッキを携えているのは階級的な象徴。連隊では中隊を指揮する大尉、その下の中尉といった指揮官が置かれました。頭の三角帽(tricon)自体は将校特有ではなく一般的兵士も着用したものですが、レースの刺繍や玉房飾りなどのデコレーションは階級格差によって異なりました(階級は有っても階級章が無い時代の軍隊なのです)。

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「将校、歩兵第7連隊」連隊指揮官には大佐、大隊結節を指揮する中佐少佐などの上級将校が置かれますが連隊長(Chef)は将官階級です。プロイセン歩兵連隊で「シェフを呼べ!」と怒鳴るとドスドスやってくるのは海原雄山です。

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「ファーネンユンカー,フュージリア,歩兵第38連隊」また見慣れぬ階級が出て来ました。「ユンカー」というのが新興地主階級だとは高校世界史の教科書でも教えてくれますが「自由伍長」として実態は「士官候補生」のような位置づけです。で、実際ユンカーの出自で士官登用されるにはまだまだ家柄が重要だった、そんな時代。

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箱絵写真見れば判る通りに彼は旗手でして、旗棹につけるための連隊旗が第7、第38連隊の2種類付属しています。紙製、両面印刷のもの。

#各フィギュアの解説については新紀元社刊オスプレイ・メンアットアームズ・シリーズ「フルードリヒ大王の歩兵」を参考にしました。誤読誤解の類があれば、それらはすべてブログ担当の責であります。

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各フィギュアには簡易なスタンドベースが付属。

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パーツをみっしりさせていた理由の一つは帽子の多さです。単に三角帽・縁なし帽だけでなく、連隊ごとに異なる縁なし帽の前立てや階級による三角帽のディティールなどで第7連隊・第38連隊を作りかえられるのがこのセットの特徴…なんですけど、組み立ては説明書の指示通りにやりました。べ…別にただ指示読んで普通に組んだあとで遅まきながらようやくセットの意味に気がついて真っ青とか、そーゆー訳じゃないんだからねッ!!(強弁)

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擲弾兵、前後。

縁なし帽の天辺に玉房飾りを付けているのが擲弾兵のシンボルです。プロイセン王国もフリードリヒ・ヴィルヘルム王の時代には、全ヨーロッパから大男を探して雇ったり時には強制徴募(つまりひとさらいだ)までしたりで「巨人」の擲弾兵部隊を組織し特に戦争もせずパレードさせたりしてましたが、その息子フリードリヒ2世は馬鹿な真似やめてヨーロッパでも一、二をあらそう精強な軍隊を作り上げました。

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フュージリア兵。

肩から提げている薬包箱こそ擲弾兵と同様ですが、縁なし帽に玉房飾りがついてないことに注意。人口500万に満たない小国であったにも関わらずプロイセン軍が強力であった理由は常備軍を維持するための徴兵制度を施行したためです。とはいえ外国人兵士・部隊も多数抱えていたのが「君主制国家」の限界であり、国民皆兵制度による前例のない大規模動員・損害回復能力をもつ「国軍」が成立するのはフランス革命を経たのちの時代のお話。

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下級将校。

ドイツで軍隊と言えば「鉄の規律」。それが成立したのがこの時代で高度に訓練されたプロイセン軍は同時代のヨーロッパ諸国の軍隊に比べて遥かに機動性に富み高い展開能力を持ち、巧みな戦術機動で敵軍の側面を突く「斜形戦術」を得意としました。1757年の「ロイテンの戦い」はプロイセン軍の斜形戦術が一面的なオーストリア軍の横隊を打ち破った代表的な戦例です。

ヘンな話だけど日本で近世後期~近代初期の陸軍戦術について学んだり誰かに説明するときって「銀河英雄伝説」に例えると判り易いと思う。ツクダのボードゲーム知ってると尚更(w

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上級将校。長髪をおさげにまとめたヘアスタイルがこの時代の特徴ですが、彼のみリボンが結ばれています。オサレなことです。

「敵兵よりも味方を恐れよ」と言われたほどの軍規が徹底されていたのは少なからず兵士の脱走例が相次いだことの裏返しでもあります。銃兵を直接指揮する下士官はハーフ・パイク(歩兵槍)を持って逃亡を防ぎましたし、上級将校であっても果敢に突撃の先頭に立つ例が多く見られます(で、即死したりする)「君主は国家第一の下僕」といって庶民的なアピールを行ったのがまさにフリードリヒ大王の言葉なんですが、それはつまりその他の連中は全部二番手以下ですって意味でいつの時代もケンリョクなんてそんなもんさー

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ファーネンユンカー。

もう書くことがないOTL

えー、そうさな、「擲弾兵」とはいえ既にこの時期主力兵装としては小銃であって、そんなにぽいぽいバクダン投げつけてたわけじゃない…ようです。黒色火薬の時代ですから軍旗を振り軍勢を明らかにするのは大変重要な役割で、ヨーロッパ各国の軍服がきらびやかだったのは同志討ちを避ける意味合いが強かったそうです。プロイセン陸軍の場合上衣は「プロイセン・ブルー」と称される紺青で統一されているのですが、襟の折り返しやシャツ・ズボンの色は所属連隊ごとに固有の配色でありました。

このセットでフィギュアごとに第○連隊と注記してあるのは帽子パーツのみならず塗装指示でもあったりするのです。

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が、スミ入れだけで済ませるとあんまり関係ありません(´・ω・`)

い、いや…チェス駒みたいでいいかなあと、思うんですけど。

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フルカラーでペイントすれば18世紀当時の軍隊の華やかな戦列を再現することが可能でしょう。そこを敢えて白の成形色のままでも石膏像のような美術品的イメージを保てるかも知れません。プライザー社の製品ってそういうニュアンスもあるように思います。しかしまー白いままだと撮影してもいまひとつモールドが映えないんで…

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ちなみにスミ入れにはタミヤの新製品「スミ入れ塗料(ブラウン)」使ってみましたが…

「よく溶いたエナメル塗料」以上でも以下でもないって感じですね。はじめてエナメルに接するひとには良い製品だと思います。

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