ペコパブリッシング「ペコブック #1: T-34 」
ハンガリー、ペコパブリッシング刊行の第二次世界大戦フォトブックシリーズ第一弾“T-34 ON THE BATTLEFIELD”です。A4横開きのハードカバーで端正な製本、編集スタッフには軍事研究家として古くから日本でも著名なトーマス・アンダーソン氏の名前もあり、内容はお墨付きといっても差し支えないでしょう。
前ページモノクロながらも1ページに付き1枚のフォトを掲載するスタイル、初公開も数多く含まれる大判の写真はすべてコンディションも良好なものばかりで情報量の多い一冊です。キャプションはハンガリー語/英語併記で、平易な文章で撮影時期や場所、車両の形式分類などを的確に解説しています。
特徴としてはドイツ軍による記録写真・個人撮影のフォトを集めていること、撃破あるいは遺棄された車両の写真が殆どだということが挙げられます。バルバロッサ作戦の開始時期から年代を追っていく編集構成から、いわゆる1940年型から始まるT-34戦車の発達を見て取ることも可能でしょう。みんなブチ壊されてますけど……
勇壮な構図は少なめですが、アーマーモデリング2月号で特集されているような廃墟的情景を製作するアイデアソースに成り得るかも知れません。以前「バラトン湖の戦い」って良書がありましたが、雰囲気的にはあれと似たものを感じます。
もうひとつの特色として、ドイツ軍に鹵獲され運用されている車両のフォトも見られます。T-34の一風変わった塗装やマーキングを知りたい方には格好の資料集となるでしょう。
本書内容の9割方はT-34/76の写真で戦争後半に登場したT-34/85のページはおどろくほど限られたものです。思うにこれはT-34/85が前線に姿を現した頃はドイツ側に記念写真撮ってる余裕がなかったから…かどうかはわかりません……ただ、もしもT-34/85の写真を期待していたらそれはちょっと少なめですよーと、それは申し添えて置いた方がよいでしょう。あんまり営業的なセリフではないが、むしろそれが営業的だって局面もあるのさっ。
むしろ骨の髄まで共産趣味的な同志諸君にとってはいささかムシの居所が悪くなるような内容かも知れない。なにしろドイツ軍が調子づいてるような写真が連続して続きます(笑)そして珍しい割には既視感のあるマーキングや塗装の個体が多いなあと思ったら、以前ドラゴンモデルが完成品でリリースしていた「ドラゴンアーマー」シリーズの、いくつかのT-34のネタ元ってこの辺だったんでは…と思われる。
表紙にもなっているグリーンの上に独特の冬季迷彩を施したこの塗装パターンはよく覚えています。製品そのものはごく普通の1941年型でしたが、実車はこの通り車体前面に増加装甲板を装備していたのですね。あれをよく売っていた当時はイマイチわかってなかったが、知ってしまうといろいろ気まずいところもありますな。つげ義春風に言うとその後あのT-34がどうなったかと言えば、
まーその、なんですな第一親衛戦車旅団のT-34がぜんぶ増加装甲付きだったわけじゃなし、これはこれで写真と関係無く良いものであって……
いろいろ気まずい。調べるべきではなかったかもしれない OTL
こんなとき「アオシマのあおこ」さんを見習いたいものだなと、つくづく思いますねぇ……