ホビージャパン「ホビージャパン 1997年6月号」

f:id:HueyAndDewey:20120604092028j:image

唐突に15年前の模型雑誌のレビューです。当然のことながら絶版品切で、到底新しい話題が出てくるはずもありません。なぜに今更?

というのも今月はホビーリンクジャパンの設立15周年記念月間でありまして、ではそれに連動してちょっとBack to the 1997してみましょうというキカクであります。HLJが誕生した当時、15年前の模型業界はどんな様相だったでしょう?あなたはどこにいて、なにをしていましたか?

ぼくはまだ生まれてなかったんですけど。

あからさまなウソはこの際無視して、おそらく当時の状況を最もよく知るにはホビージャパンが適任だろうと思われます。他誌を見るとモデルグラフィックスはご存じの通り良くも悪くも個性的、モデルアートはいつも変わらず不動の陣容で、時代の変化や作風の流行をダイレクトに反映しているのはHJ誌でありましょうと。ちなみに1997年にはもうひとつ「B-CLUB」誌が存続していましたが、この頃になると模型雑誌のくくりでは無かったかな…

f:id:HueyAndDewey:20120604094526j:image

表紙を飾っているのは島脇秀樹氏によるLMHGエヴァンゲリオン初号機です。製品的には初号機輸送台仕様のニューキットレビューなんですけれど輸送台は使用せず、兵装類を展開してエヴァ初号機はポーズ固定の情景です(ニュータイプ100%コレクションのイラストをモチーフに、と記事には書かれています)メカ的要素とフィギュア的要素を上手く結合した、いかにもエヴァらしいディオラマ。プラモデル的要素とガレージキット的要素と言ってもいいかな。

f:id:HueyAndDewey:20120604095134j:image

エヴァ特集からもう一点、山田卓司氏によるヤシマ作戦のディオラマ。初号機と零号機のからみとしてはあまりに有名な1シーンですが、この作品はコミック版をモチーフとしているのでTVとは若干異なるシチュエーション。この時期エヴァの模型は大ブームで大抵の場面は立体化されてた故の処置かも知れませんが、コミック版からの立体化って今になるまでもあまり見かけませんし新劇場版ともまた違うヤシマ作戦は却って新鮮に写ります。

f:id:HueyAndDewey:20120604095916j:image

時期的にいうとこの1997年6月というタイミングはエヴァンゲリオンの(旧)劇場版が「DEATH」「REBIRTH」の2部構成且つ前代未聞の未完成で公開され「エヴァシリーズ…完成していたのね」でアスカと一緒にみんなで( ゚д゚)ポカーンとなってた頃でした。この6月号の特集でも作例記事よりバンダイとセガトイズから発売予定の量産機試作原形のニュースの方が前のページに来る構成で、7月に公開予定だった完結編「Air/まごころを君に」が待ち望まれている状況が見て取れます。そう、この時はまだみんないろいろ期待してたんだよな(笑)

そういえばこの頃ってバンダイのLMHGエヴァンゲリオンシリーズをカートンで入荷するとよく販促品のポスターが付いてきました。それ自体は珍しい事でもないかも知れませんが、使われていたイラストが描き下ろしではなく、版権物のイラストカットをコラージュして即席で作ったようないかにも戦時急造的なデザインだったことを思い出します。コラージュとはいえ正規の頒布物なのですが、正規の頒布物とはいえコラージュなんで後々の画集や資料集に収録されてた覚えがないんだよな…。レイの図柄とアスカ&シンジのものと、そうそう2種類ありましたねいや懐かしいことである。

f:id:HueyAndDewey:20120604101517j:image

エヴァと言えば当時ツクダが発売していた塗装済み完成品のソフトビニールフィギュアがフィギュアモデルの購買層を飛躍的に増大化させたのは忘れてならない出来事ですが、まだまだフィギュアの主流はレジンキット、ガレージキットの物でした。フィギュアと言えば女性キャラばかりのこの業界で、コトブキヤが発売した1/8のシンジとカヲルはかなりインパクトのある製品だったように思います。ホビー業界に女性ファンが流入し始めたのも90年代末期の記憶すべき出来事でしょう。いやカヲル君のその後は福袋の常連だったとかそんなことは忘れていいから。

f:id:HueyAndDewey:20120604102348j:image

第二特集として機動戦艦ナデシコがまとめられ、まずバンダイ製HGキットから0G・砲戦・空戦フレーム3種のエステバリスを作例で。ナデシコのシリーズはブランドこそハイグレードを謳っていましたがキット内容としてはいささか物足りないものであったのもまた確か。どの作例もモデラー諸氏が存分に切り刻んだりパテ埋めしたりで素組と比べて相当見違えた物になっています。が、当時を思うにエステバリスに関してはデザイナーの明貴美加氏を取り込んで記事展開していたMGの方が読み応えはあったかな。

f:id:HueyAndDewey:20120604103201j:image

模型雑誌に現在よりもずっと「ガレージキット」の占める割合が多かった構成で、ナデシコ特集も後半はGKメーカー各社の製品サンプルを紹介する内容となっています。こちらはウェーブ製の塗装済み組み立てソフビキットのエステバリス。このような半完成品は当時いくつかのメーカーから販売されていたものですが、今となっては見かけない時代のあだ花みたいなものかな。コトブキヤのレジン製エステバリスも紹介されていて、ガレージキットの華がメカモデルだった最後の時代か。

f:id:HueyAndDewey:20120604103717j:image

ナデシコフィギュアはユリカとルリを中心にレジンキットが各社からリリースされています。クレイズが「新進メーカー」だったりダイキ工業製なのに巨乳でもハダカでもないユリカがあったりでいろいろビックリだ。どれも原形製作者の個性が如実に表わされた作風で、イマドキの最大公約数的な塗装済み完成品とはまあ、かなり異質の立体化です。GKスピリッツってやつですよええ。もしもこれらのフィギュア、とりわけルリの表現が「古臭く」感じられるようでしたら、それはたぶん脳内のナデシコキャライメージが劇場版準拠になってるからじゃないかな?

f:id:HueyAndDewey:20120604104324j:image

ひとくちに「古い」といっても悪いことばかりじゃなく、これは特集とは関係ない海洋堂の「銀河お嬢様伝説ユナ」シリーズですけれど、明貴美加イラストの立体化としては現在のものより秀でていると感じます。ご本人の絵柄が変わってることもありますけれど、この時代の面構成を顧みても悪くないかと。しかし「六本木の舞」ってバブル経済を体現したかのようなネーミングで…

f:id:HueyAndDewey:20120604105653j:image

第三特集電脳戦機バーチャロンもまだ初代ゲームOMGの時代です。こちらもレジンキット紹介やディオラマが主な構成ですが、ウェーブ製インジェクション1/144スケールキットが破格の600円台(!)で出ていた時代でもあり波佐本英生氏による徹底改修が掲載されています。「なんでもパーフェクトガンダム化」じゃない波佐本氏の作例が見られるだなんて実に貴重な誌面であります(過剰表現)

この時代はまたいわゆる古参のガレージキットメーカーがマスプロ製品化への指向を示していた時代でもありますね。スポーンを始めとする海外製アクションフィギュアのブームが一段落する中、海洋堂が XEBEC TOYSブランドのアクションフィギュアを発表したのがたしか98年の冬ワンフェスでの出来事でした。以後急速に国産アクションフィギュアが増加し日本中の模型屋がブリスターパックだらけになってどこも通路が狭くなっていったのも、今となってはよい思い出ですな。

f:id:HueyAndDewey:20120604111131j:image

幸いこの号では1997年東京おもちゃショーのレポートが掲載されていて、玩具中心に当時の新製品や業界の流れみたいなものが見て取れます。バンダイブースで超合金魂第一弾マジンガーZが発表されてるんですけれど、掲載写真のサイズがあまりに小さいのはちょっと驚かされます。キャプションにあるようにB-CLUBが推してたからってのもありますけれど、この扱いの悪さは異常だ。

f:id:HueyAndDewey:20120604111603j:image

セガトイズのサクラ大戦フィギュアの方がまだ大きく取り上げられています。エヴァの後続として期待が寄せられたシリーズでしたが、ボイスCD付きのこの商品、たしか花組全員揃わずに終わっちゃったんだよな…。対して超合金魂は現在までも続くブランド、何にせよ誰にも先々のことは見通せないという事例です。

エヴァやナデシコが特集されてることもあってガンプラのページは少なめです。バンダイ広告ではガンダムWエンドレスワルツ、1/100スケール第二弾のウイングガンダムゼロカスタムが発売告知のタイミング。オマケについてくるフィギュアのおかげでエヴァと並んで女性層に強く訴えた商品でした。EWの製品は1/100スケールが先行して1/144での展開は後回しになりましたが、1/144のEWシリーズと08小隊のグフカスタムは設定画のイメージと立体のバランスにまったく遜色がない、ガンプラとしてひとつレベルアップが図られたようなこの時代を代表するアイテムです。

f:id:HueyAndDewey:20120604111922j:image

時代的な話をするならマスターグレードGP-01の機構試作が掲載され、デザインなどに対する読者からの率直な意見を求めているのは初期MGならではの事でしょう。ガンダムとザクから始まったMGって当初はこういう誌面上でのダイレクトなコミュニケーションが(少なくとも、表向きには)行われていて色々いい時代です。このパターンはいつのまにか廃れちゃいましたけれど、それはきっとインターネットが広く普及していった為ってのもあるんだろうなあ。

実際、読者交流欄でもエヴァンゲリオンの解釈を巡って読者同士でお便りによる熱い討論とか繰り広げられています。匿名掲示板とかまだ無い時代の、悪くない雰囲気です。

f:id:HueyAndDewey:20120604113355j:image

スケールモデルではホビージャパンの連載記事でもおそらくもっとも長期に渡って掲載され続けた田中義夫氏の「AIR COMBAT」が第127回で日中戦争航空戦を採り上げています。九六艦戦はファインモールドの1/48とフジミの1/72、対するポリカルポフI-16はハセガワ製と国産キットで揃ってるのはすごいんだろうな。

f:id:HueyAndDewey:20120604113843j:image

田中義夫氏は現在でも毎月精力的に作例記事を掲載なされていますが、模型のみならずイラストや文字記事でバックグラウンドまで解説していた「AIR COMBAT」は毎号いろんな事が勉強になり、それほどエアモデルに興味がなかった身でも楽しく読めていたのを思い出します。当時の模型雑誌っていまよりずっと啓蒙的だったように見えるのはなんでだろう。

f:id:HueyAndDewey:20120604114518j:image

今でも続くHJの看板のひとつミリタリーモデリングマニュアルの刊行も既に開始されていますが、当時から大型情景の作り手として有名な嘉瀬翔氏のキューベルワーゲンが本誌のこの号では小さなビネット(って言い方はHJではしないんですけど)で作られているのは面白いところです。

多岐にわたる記事内容を全部紹介しているとさすがにキリがないのでこのあたりで。むしろ巻末の大部分を占める広告のページを見ていくと世相や状況が判って面白いですね。海洋堂のホビーロビーが渋谷から移転して秋葉原にオープン(最初はラジオ会館内ではなかった)したり、ボークス新宿ショールームのオープンが告知されたりしています。今をときめくグッドスマイルカンパニ―のグループは未だ生まれ出ずる前、MAXファクトリーはガイバーとかグレンダイザーとか売ってたはずなんだけど毎月の広告は載せてない時代か。当時Windows95が発売済みでPCやインターネット環境が急速に広がっていた時代であるのにも関わらず、ほとんどの広告にはホームページアドレスがまだ未掲載なのが意外…でもないか。模型業界にパソコン使える人材が浸透するにはまだしばらく時間が掛るのでしょう。先駆的なところもいくつか散見されますが、bekkoameドメインなんてのを目撃すると急性ノスタルジア中毒で目が遠くなり過ぎて死にそうですよ(w;

とまあ、そんなこんなの1997年でした。思えば遠くに来たものですね。あんまり後ろ向いてばかりもいられないので前向きにならなきゃイカンよなと思いつつ、でもこれだけは最後にふれておきたい。1997年に起こった模型業界の大きな出来事といえば、

f:id:HueyAndDewey:20120604120131j:image

模型業界初の試みとしてホビージャパン社から創刊された月間マンガ雑誌「コミックジャぱ

それ以上いけない。

あわせて読みたい