ホビージャパン「ラストフライト 星の王子の伝説」

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航空絵画(アビエーションアート)の第一人者として知られる大西信行画伯による、人と航空機をテーマにした9つのショートストーリーをまとめた作品集です。

大日本絵画刊行のスケールアヴィエーション誌で好評連載中の「山本画報」から選り抜いた作品+書き下ろし2本という体裁ですが単行本はホビージャパンからの出版というちょっと不思議な流れでして、そこには様々に「ひと」が介在したことが伺えます。


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巻頭と中程にカラー口絵を挟み、本文の挿絵はモノクロのスタイルです。大西画伯独特のタッチで描かれた様々な航空機や人々、お話によっては艦艇や建物など様々な絵画を楽しむことができます。

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文章は平易な語り口の「よみもの」で、中学生ほどの年齢ならば十分に読了できることでしょう。実際綺麗な「おはなし」が多いので中学校の図書室に配架されていても全く違和感を感じないような種類の書籍です。

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収録されている作品はどれも実在した機体と実在した人物に基づく物語ですが、物の語りそのものにはある種の装飾・演出が加えられた物です。抒情的な文章は印象的な画稿と相まってメンタリティに訴える作用が強く、いかに航空機がロマンあふれる存在とはいえ、なかには賛否両論あるかも知れません。ドイツ艦隊のいわゆるチャンネルダッシュにソードフイッシュで攻撃を掛けたエスモンド少佐のエピソードを綺麗な話で纏めてしまって良いのか、ちょっと疑問であったりしますが……

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それでも「画の力」は大きなもので、描き下ろしで加えられ本書のタイトルにもなっているサン=テグジュペリの物語に添えられた挿画には鮮烈な印象を与えられます。実際のポートレイトや記録写真を模写した画面には実際のポートレイトや記録写真では表現できない生々しい筆致・タッチが添加され、ひとつひとつが絵画としてアートとして昇華されています。

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例え平和な摩天楼であっても亡命先の光景として描かれるニューヨークは重く沈んだ雰囲気で、ただのモノクロ写真では到底この効果は出せません。デジタル全盛のご時世ですが、アナログ画材の良さもあらためて確認できる一冊でしょう。

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本書が刊行された頃は大西画伯がお住まいとされていた「九段下ビル」解体を巡る諸事情と重なる時期でもあるので、このちょっと異例な、しかし綺麗な小品には、ただページを読むだけ見えて来ない想いもあるのかもしれないな……というのはかなり勝手な個人の印象ですけれど。

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