ボークス「造形村コンセプトノート SWS #4: ノースアメリカン P-51D マスタング」

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造形村スーパーウイングシリーズNo.4として好評発売中、1/32スケールP-51Dマスタングの設計方針からキット開発資料と組み立てガイド、更に作例解説と一冊の中に盛り沢山な内容を詰め込んだ書籍です。



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震電から始まったこのシリーズ、次回作として予定されているホルテンHo229に至るまで(比較的)マニアックな機種選定が多いように思うのですが、P-51Dマスタングはひときわメジャーな存在感を示すもの。それだけに実際に手に取り製作される方も多いかと思われます。SWSのシリーズ全般を通じてキットとコンセプトノートはこれでひとつのセットのような存在ですが、とりわけ本書は製作の際には必携のガイドブックだと言えるでしょう。

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現存する機体も多いP-51、実機取材した個体も美しいコンディションが保たれています。細かなディティールや外板の状態など、種々の情報を作品に盛り込んでいけるのはラージサイズのキットならではのことでしょう。

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マニュアルから抜粋したイラストと実機のクローズアップを並べるのはこの手の資料本では一般的な構成ですが、更に加えてキットパーツを並べてみれば、ひとつひとつのパーツが持っているディティールの意味を素直に理解できるものです。

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外観のみならずひとつの航空機としてのシステムを再現しているのが造形村SWSの特徴で、そのキットが持っているポテンシャルを知るための解説書だとも言えそうですね。造形村に限らず近年の飛行機模型にはそういう「飛行機の仕組み」を学べる製品が徐々に増えているようにも思います、よいことです。

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それらの情報を整理しつつ、組み立てに対しての具体的なアドバイスが掲載されています。本文は全ページ日本語/英語で併記され、当初から海外に向けた展開を意識したメーカー側のキット開発方針がこんなところにも反映されています。雰囲気的には大日本絵画のエアロ・ディティールをもっと「模型寄せ」したような感じですか。

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作例記事として掲載されているのはメーカーサンプル画像にも用いられた小林直樹氏によるもの。ベアメタルを貼りこんでの金属表現はため息の出るほど美しい逸品です。

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製作の過程は途中写真も多く掲載され、ひとつのプラモデルを作り上げるのにどれほどの時間と手数を掛けたかをページからでも感じ取ることが出来ます。掛ければ掛けただけのものがちゃんと応えてくるような製品は「大人の模型」の上品さを感じると言ったらいささか陳腐な物言いでしょうか。

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海外のモデラーによる作例も2点掲載されています。お三方の作品に共通するのは内部構造を如何に魅せるかという点で、別パーツ化されたパネルや2種類用意されたカウリングによって完成後でもインテリアを見せやすくしているキットの基本設計を存分に活かしたものです。飛行機模型の在り方に一石を投じたシリーズならではの、ここから広がるアイデアも多いことでしょう。

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ボークス/造形村代表取締役社長重田英行氏本人によるページは大変に興味深い内容でした。いまでこそボークスといえば様々なフィギュア製品を開発するメーカーとして有名ですが、40年以上前の開店当時は飛行機模型の専門店であったこと、自身の趣味・嗜好が現在のSWSシリーズ開発の根底にあることなどが語られています。(1980年代中頃にはレジンキットでヒコーキ物を出していたのを思い出します。たぶん自分がHe219ウーフーの存在を知ったのはボークスのレジンキットが初めてだ)しかしこのP-51Dマスタングのキット化にあたっては実は全然違う観点からの意思決定が成されたと、そのことには大変驚かされました。いやビックリ。まさかそんな事情だったとは……

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そのほかイラストを交えたショートストーリー、巻末には図面が掲載され、この手の資料本によく見られる実機の塗装バリエーションについては紙質・印刷も美しい大判のポスターとして付録されます。サイズはB2ぐらいかな?単に製作資料としてではなく、心地よい模型空間を作るための小道具としての活用が期待されます。心地よさって模型作りでとっても大事なことなのです。

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