マスターボックス「1/35 イギリス 歩兵 4体スコットランド兵 ほふく前進バグパイプ付」
マスターボックス製インジェクションフィギュアのセットです。
しかしなんとも妙な日本語製品名称ではあります。誰も匍匐前進などしていないし「イギリス歩兵スコットランド兵」という言い回しも日本語としては変だ。英語名である“Scotland The Brave !”とはスコットランド国歌の題名であって「勇敢なるスコットランド」とでも訳すべきか?国歌は“Flower of Scotland ”ではないのかとか、そもそもスコットランドは国じゃないだろうとかいろいろツッコミどころはあるようですが…
まーしかし「勇敢なるスコットランド」がフィギュアセットの製品名としてはモヤモヤ落ち着かない気分になるのもまた確かであります。担当の方はタイヘンだったでありましょう。
箱裏面。「イギリス陸軍スコットランド連隊 歩兵4体セット」とでもいうべき内容です。スコットランド連隊に関してはいろいろと複雑な変遷をたどっているのですが、Wikipediaの「ロイヤル・スコットランド連隊」項目が現代のイギリス軍における状況を記述しているので、そこいらをとっかかりにすると良さそうですね。
従来ですとランナー配置とパーツNo.が載ってるところに記録写真と記章、タータンチェックの文様が掲載されています。製作のための参考資料なのですがそれぞれにどんな意味合いがあるのかはまったく記されていません…
その代りパーツ配置図は別刷りで封入されています。このほうが何かと便利な気もしますが、パーツ配置図「しか」ないんで組み立てに箱裏を参照することは変わらないんだよなー、うーむ。
こちらがランナー。MBにしてスタンダードな出来ですが、英軍は装備品が少ないので組み立てるのは実に簡単ですなー。
例によって頭部は良く出来てます。ホ―ネット要らずですね(笑)特にバグパイプ手の大きく頬を膨まして楽器を吹き鳴らしている表情は絶品。
第二次大戦英軍兵士にはこれ持たせときゃ大丈夫、なリー・エンフィールド小銃。ボルトアクションライフルは(特に日本では)三八式に代表されるようになるべく少ない部品点数で確実に動くものが良しとされていますが、着脱式マガジンに10発の弾倉を備え、短いボルト操作で再装填と次発射撃を連続的に行える本銃も、ボルトアクションライフルのある種の到達点と言えるでしょう。
更に加えてツルハシ×1、大型スコップ×3の格闘武器が付属します。白兵戦ではこれが最強!さすがはブロードソードチャージのお国柄ですね。
そんでこれが世界初じゃないでしょうか1/35オーセンティック・スケール・インジェクション・プラスチック成形「バクパイプ」の、パイプ部分。バグとパイプでバグパイプ。※Bag(袋)ですよ? Bug(蟲)じゃありませんよ??
装備品の裏側にはサスペンダー等へのガイドが彫られています。フィット感が飛躍的に向上し、同社製品いろいろ紹介してきましたけどこいつはなかなかの出来栄えです。
腰を落としてやや後ろを向いている小銃兵。
片膝をつき、銃床を支えに身を起して後方を見遣る小銃兵。
地面に身を伏せて、半身で背後に視線を向ける小銃兵。
三人組んでみてわかることは「箱絵じゃ全員スコップ背負っているのに、キットでは1体だけ」ってことです。マスターボックスじゃよくある話なんで余ったパーツはストックにしまっちゃおう。しかしブロードソード…まあいいか…
各フィギュアのパーツは4つのセクションに分かれて配置されてるんですが、パーツ27と33はなんだか妙なことになってるんで、完成見本をよく見て間違えないようにしてください。実際組んでみればすぐに気がつく程度の話ですけど。
この3人を並べてみると、ちょっと面白いことがわかります。映像表現的に言うと(最近なにかと話題の富野由悠季「映像の原則」風に言うと)全員画面の右から左、すなわち上手から下手への動線を持っています。キャラの立ち位置は3人で1つの動きを形成する強い配置なのですが、3人が3人とも更に後方の上手方向に視線を向けていることより、この画面でもっともパワーを持ち空間を支配するのはその視線が集中する存在である、ということになります。映像における上手下手とディオラマ(特に地理歴史的な背景を持つディオラマ)のそれはいささか異なるものなのかも知れませんが、まーだいたいそんな感じです。
そして映像でもディオラマでも ぱんつ はいてない ひとが最強です。
殺伐とした戦場に咲くスコットランドの一輪の花、ゆけゆけぼくらのバクパイパー。まさに紳士、The Brave ! No Pants, LIFE !!
…あんまり調子に乗っていると本当に怒られそうなので、真面目な方向に切り替えます…
この通りちゃんとキルトは付属します。それぞれの所属連隊ごと(正しくは氏族ごと)に異なるタータンすなわち格子柄模様が織られていますのでがむばって再現しましょー。なに赤穂浪士の袴を塗ることに比べりゃまだマシだと…思いますよ……
敵弾まさに射すくめられ、戦友諸兄の士気が打ち砕かれんとするその時に、戦場に響き渡るはバグパイプの音色。故郷ハイランドを吹く風のように、雨の日も晴れの日も、勇敢なるスコットランド兵士の魂を変わらずに揺さぶり続ける楽士の膝は、何物にも屈することなく常に前を向いているのです…
第二次大戦エル・アラメイン戦の記録映像には夜間砲弾の落ちる中、行軍の最前列でバグパイプを吹き続ける楽士の姿があります。例え銃砲火の下戦闘中であっても、常に先頭に立って軍の士気を鼓舞するのはバグパイプ手の重要な使命でした。
逃げる味方を尻目に前進前進。
いやさ数年前、イギリス軍の支給するキルトが不足しているためスコットランド連隊の中に「キルトを1度も着ないまま除隊する兵士も一部出る可能性がある」なんてニュースがあったからさあ…