ミニアート「1/72 ローマ騎兵フィギュアセット (4-5世紀)」

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ロシア・東欧圏のメーカーでは盛んに製品化されているミニスケールのヒストリカルフィギュアです。

 日本では(世界でも?)一般的にローマの軍隊といえばピロム(長槍)と方形盾を構えて密集隊形で進軍する軍団歩兵が有名ですが、あの軍勢のイメージは帝政ローマでも初期~中期の紀元2世紀頃までのものであって、本製品が立体化している4―5世紀の時代ではすっかり様変わりしています。

 歴史的にはパックス・ロマーナの時代を終えて帝政後期の内外に渡って動乱と変質が頻発した時代、ディオクレアヌス帝により首都はローマからミコメディアへと遷都されローマ帝国には四分割統治体制が施行されました。

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 文化・社会的にはオリエント世界の様式がひろまり、「カタクラフト」と呼ばれる重装騎兵が軍の主力となったのも元をたどればササン朝ペルシアのそれがローマ帝国に導入されたものです。広大な領地をもちながら既にそれを統治する術を失っていたローマ帝国は東西に分割され、ゴート人やフランク人などいわゆる「ゲルマン民族の大移動」の直接被害をこうむった西ローマ帝国は476年に滅亡しました。有名なフン族のアッティラ大王はこの時代の有力なゲルマン民族リーダーです。みんなモンティ・パイソンの「アッティラ・ザ・フン・ショー」見ようず。

 残った側の東ローマ帝国の方では政治的には安定し、コンスタンチノープル(現在のイスタンブール)を中心とした国家を長期に渡って維持します。別名「ビザンツ帝国」など呼ばれたりします。が、「東ローマ帝国」も「ビザンツ(もしくはビザンティン)帝国」もあくまで歴史的、歴史学的な呼び名であって、決して当時の人々がそのような国名を名乗っていた訳ではないそうです。単に「ローマ帝国」もしくは「ローマ人の国」が実際の名称であって、その点ではウクライナ・ミニアート社製のキットが西も東もビザンツも無く「ROMAN CAVALRY」ってシンプルな製品名を採っているのは日本の教科書より余程リアリズム重視な姿勢かもしれませんね(笑)

 歴史のお話ここまで。ちょいと長くなりましたけど最近「歴史の教科書に書いてないことは須らくインチキである」みたいな暴論述べる方を目にしたもので主に大河がらみで、あくまで歴史の教科書に書いてあることは「真実」ではなく「歴史学」の一断面的な記述であると、ちょろっと書いておきたかったのです。本当に大事なことなので一度しか言いませんからメモとりましょうね。

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さてキットに立ち返りますとボックス裏側の表記通りに20体のフィギュアが入ってます。決して馬と人間合計20ではなく、20体の騎兵がちゃんと完成するのは評価したいところですないや以前にそのゴニョゴニョ…な思いをしたことがヒソヒソ。1枚のランナーに5種類の騎兵×4枚ランナーで構成されます。全く同じポーズのフィギュアが揃ってしまうのは何ですが、例によってこれもウォーゲームのユニットとしての性格が強い模型でしょうから致し方なし。

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素材についてはどこにも記載されていません(か、書いてあるのに外国語が読めてないかだw)が、いわゆる軟質プラで塗料も接着剤も受け付けません。ランナー片で試したところミッチャクロンを吹き付けたら塗料は乗りましたので、対応としてはメタルモデルと同様で良いのかな。

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むしろ大変なのはバリの処理でしょうか。ごく薄いものですがパーティングラインほぼ全周に存在し、軟質素材なものでまー落としにくい事この上ない。無駄に力入れてうっかりカッターの刃先滑らせないようにご注意です。

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接着剤が効かなくても軟質プラのテンションで姿勢を保持できるので、その点に関しては有り難いものですが。

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1ランナーにつき馬鎧をまとった軍馬が3頭、素(?)のものが2頭セットされています。特に指定は無いのですがパッケージを参考に重装備の騎兵に重装備の馬を組み合わせるのが自然でしょうね。尚パッケージにはローマ軍の伝統的な徽章が描かれていますが、残念ながら旗手は付属しません。

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ちなみにコイツのこと。要は「吹き流し」です。

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馬上槍を構え鱗鎧(現代用語ではスケールメイルと呼ばれるタイプの金属鎧)をまとった重装騎兵。ヘレニズム世界でも古くから騎兵は用いられていましたが、歩兵に変わって打撃兵力の中核となり得たのは人馬ともに頑丈な鎧で防護され長く重い槍を扱えるようになったからです。その為には頑強な軍馬が不可欠で、ローマ軍がそんな軍馬を育成出来たのも結局は強力な騎馬民族国家の侵攻を受けての影響なのだろうな。

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こちらの重装騎兵は剣を抜いています。刀剣の類は補助武装でありましょうが、盾を持たぬところに注目。

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対照的に盾を携えた騎兵もいます。この違いは何かと言えば盾を持ってる方は軽量の鎖鎧(チェーンメイルと呼ぶのが一般的でしょう)を使ってます。アーマークラスが低いんで盾で補うんですよってD&D的な説明はよせ。

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こちらは槍と入っても軽量な投槍を構えた騎兵。横向きに構えてるのでこの方向で撮影するとさっぱり見栄えがしません…

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ローマ軍の弓兵は遊牧騎馬民族のそれほど機動性の高い騎射は出来なかったんジャマイカと思い、唯一走ってない馬をチョイスしてみましたのよ。でも横向きに構えて(ry

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投擲兵器を後方に置き、打撃兵力を前面に配置するのが良いでしょう。いちばんの主役と思しき重装槍騎兵の穂先がアサッテの方向を向いてしまうのは修正しようが無いけどorz

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騎兵20体による突撃の図。えーと、

赤いですね。

モスクワに降る雨のようだな。

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何故かソ連軍のスチームローラー的奔流をイメージしつつってあー、ウクライナ製だからか。そんなところで。

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