モデルアート「モデルアートプロファイル #12 零戦 Part.1 一一型から二一型」

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満を持して漸く登場、モデルアートプロファイルの零戦はまずPART1として一一型、二一型そして二式水上戦闘機と零式練習戦闘機をプロファイリングしています。


海の戦艦大和、陸のタイガーI戦車と並んで模型ファンも多く研究も進んでいる零戦は、うっかりすると素人には手の出し難いような印象も与えてしまいます。無論難しい考証は無しで好きに作っていいんじゃないかと思う気持ちもありますが、敢えてそこに踏み込む最新の考証資料となる一冊です。

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零戦の書籍も出版各社から様々に刊行されていますが、本書の特徴のひとつはモデルアート本誌でもおなじみの佐藤茂雄/佐藤邦彦ペアによる美しく且つ情報量に富んだ「零戦大図解」のカラー口絵でしょう。当時実機を目撃していた確かな目によって描かれたイラストは博物館のレストア機よりも実機らしい、実物よりも写実主義めいた絵画のようで、図面からではなかなか得られないある種の華を添えます。

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塗料の色調も綿密に考慮された塗装とマーキング図は各型合計67機に及びこれだけでも十分お腹いっぱいですけど、

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機体各所に記入されたコーションマーク(いや注意書と言うべきか)が何故その位置に、何の目的を以て記されているのか「説明」されているのが嬉しい所です。ひとつひとつに意味のある記述だと知ってこそ、説得力のあるスケールモデルが完成するという訳です。また今回取り上げられている機種は太平洋戦争初期にロールアウトした機体がほとんどで、自然機体のカラーリングも大戦初期のグレー系統の(本文では「“現用飴色”と表現されている灰緑褐色」のように書かれています。個人的には明灰白色と言いたい…)個体が多く、緒戦の連勝、無敵零戦の名を恣にしたこの時期の機体を好まれる方も多いでしょう。

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しかし、激戦を生き延び濃緑の迷彩塗装を施した機体も記録されています。同時期の連合軍機に比べて速度も火力も劣る二一型系列では苦戦は必至で、この「オタ-109」号機を見て変な笑いが込み上げてくるのは平和な現代ならではだな。いやほら、アキバに出ようとしてなぜか渋谷のスクランブル交差点でおたおた…みたいなってのは…ダメでしょうか?

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モノクロページでは開発史や図面・記録写真に基づく各型解説、戦歴などがボリュームたっぷりに記述されています。ある意味定番な内容ではありますが、戦闘詳報や編制調書など、ちょっと変わった資料も掲載されています。

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戦場写真の章では有名なフォトも交えて豊富なファイルを形成していますが、トラック島でハシケ運搬される二一型のこの一枚は個人的にもお気に入り。ちょこんと立った翼端こそが二一型のアイデンティティで、この場面ディオラマ化したら見栄えしますよ誰か作りましょうよ是非。

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毛色の変わったところでは上野の国立科学博物館に収蔵されているラバウル帰りの二一型、現地改造により後部に偵察員座席を設けたあの機体のクローズアップがいくつも載ってます。当該個体が現在の新館に移る前の取材のようで、今では視界に入らないカットがいくつもあるのは貴重です。後席ってこんな鍋のフタみたいなとこに座ってたんだ…。機体各所に当てられた修正パッチからはこの機体が酷使され続けた様子が忍べて、やはりひとつひとつのディティールの持つ「意味」を知っていれば、機体を見る目も気持ちも変わることでしょう。

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巻末には各社のキットを用いた作例が掲載されています。タミヤの1/32、ハセガワからは1/48と1/72ですべて二一型、二式水戦がないのはちょっと残念…かな。このうちもっともハードにディティールアップされているのはハセガワ48で、これは主に当キットが二二型と一部パーツを共有しているがための改修作業も含まれています。実はいちばん作り易いのってタミヤの32なんじゃないかと思うところ。

そんなこんなんで読みどころ満載の零戦PART1、続刊以降も期待できそうです。三部作になるのか、はたまたそれ以上か…

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