モデルアート「艦船模型スペシャル 44 特集: 超弩級戦艦の系譜 」

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艦船模型スペシャル44号は1906年に就役したドレッドノートに始まる20世紀の戦艦の歴史と発展を特集しています。

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英国戦艦ドレッドノートは実に革新的な設計でそれを模倣した各国に「弩級戦艦」を生み、しかしながら更に改良・発展した「超弩級戦艦」が誕生するや急速にその存在感を下げて行きました。現代では既に戦艦すら存在せず、それでも日本語の会話や文章ではごくまれに「超弩級」という言葉が使われています。考えてみれば不思議なことです。

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ズベズダ製1/350スケールのドレッドノートは専用のエッチングに加えて各所に自作の金属パーツを使用したディティールアップ。繊細な工作と美しい仕上げは博物館展示模型のような佇まい。特に防雷網を展張したその姿はレースをまとった貴婦人のような美しさです。船舶が女性名詞であることが理解できますねえ。

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ドレッドノートに加えてタミヤ1/350大和にも多く紙面が割かれています。これも実にすばらしい作例なのですが、如何せんこのキットありとあらゆる所でレビューされまくっているので若干目新しさには欠ける印象…。日本人が「戦艦」と聞いてまず思い浮かべるのはこのカタチ、スティグマのように刻まれたものだとは理解しますが。

衣島尚一氏による20P近くの解説「超弩級戦艦の系譜 戦艦ドレッドノートの誕生と大鑑巨砲主義の栄枯盛衰」は大ボリュームの読み応えある内容です。20世紀の覇を争った列強諸国の戦略兵器「戦艦」の、時代的な変遷や同時代に於ける各国間の差異を明確に解く、と。…しかしこの記事「ドレッドノートの誕生…」と言いつつドレッドノートが出てくるのが第四章になってからだ(^^;

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その解説を受けて後半で掲載される「超弩級戦艦」の作例記事こそ本書いちばんの見どころだろうと思われます。普段なかなか模型雑誌で見ることの少ない外国籍且つ第二次世界大戦以前の艦がここまで揃った書籍も珍しい。ロシアのレジンキットメーカー、コンブリックの製品が多く紹介されていますがそればかりでは無く。

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タミヤのネルソンといった古くから親しまれてきたプラモデルも有り、またホワイトエンサインのレジンとピットロードのインジェクションでイギリス戦艦クイーンエリザベス作り比べと言う興味深い構成も有りで盛り沢山な内容です。

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時代的な変遷をタテ軸とするならば、同時代に於ける各国間の差異はヨコ軸と言えましょうか。ともかく縦横無尽に各時代・各国の「戦艦」を作り倒していく内容は含蓄に富んでいます。外国艦って日本の艦船模型界ではあまりメジャーとは言えないのかも知れませんが、アイオワ級やビスマルク級といった昔から有名な艦(キングジョージV世級を加えればタミヤが1/350で出してるラインです)はそれなりにバランスのとれた艦型で日本人受けし易かったのかなーとあらためて思わされる。

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ダンケルク級の後甲板集中配置された副砲塔群の落ち着かなさは「やっぱ外国艦って変な船が多いなー」と思わざるを得ず、しかしてフランス人は「大和の艦腹デブ過ぎプゲラ」とかなんとか言ってるんだろうか…そんなことにも思いを馳せます。

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アイオワ級は別格として第二次大戦後の、単なるお飾りとなった戦艦斜陽の時代の作例があれば尚良かった。具体的に言うと戦艦ヴァンガードの作例が見たかった。そのあたりを詳しく見ていくとよく言われる「時代遅れの大艦巨砲主義」に拘泥したのはむしろ日本以外の連合国の方で…と、おベンキョにもなるのですけど。

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