モデルアート「飛行機模型スペシャル No.001 」

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略して「ひこスペ」のモデルアート別冊新シリーズ、記念すべき第一号の特集は「ベトナム航空戦 アメリカ海軍機編パート1」です。

好評発売中の艦船模型スペシャルの、いわば空版といった位置づけとなるものですが、全136ページ中110ページ強を特集に充てて多くの作例が掲載されています。今年はジョン・F・ケネディ大統領が暗殺されて50年、ベトナム戦争も半世紀前の出来事なのですね……

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主にベトナムに参戦したアメリカ海軍艦上戦闘機/攻撃機のキットを新旧とりまぜて紹介するレビュー誌的な特集内容です。旧いと言っても基本は90年代以降の製品なので、それこそ半世紀前からリリースされている膨大なキット数を考えれば新しいものと言えるかも知れませんね(笑)ところでアカデミーの最新1/48ファントムB型はサンダウナーズの機体で表紙も小池繁夫画伯による美しいサンダウナーズの画なんだけど、この本にサンダウナーズの作例は載ってなかったりする。

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傾向としてはキネテイックのイントルーダーやエアフィックスのスカイホークなど海外メーカーの方が比較的新規なアイテムを、対して国内メーカーはいくぶん古いキットで紹介されています。実際この’60~’70年代の、特にジェット戦闘機のプラモデルは最近は海外メーカーからのリリースが盛んで国内メーカーでは新規開発製品をあまり見ないように思います。

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何故かと言えば前世紀の末から21世紀初頭のいわゆるゼロ年代にかけての時期で、美味しい機体はだいたい出しちゃったからって理由もあるんだろうなあ。ハセガワのクルセイダーもタミヤのスカイレイダーも10年経ったぐらいではまったく遜色のない良品で、この時期の日本のプラモデルはジャンルやメーカーの垣根を越えて高品質のものが多いかと。別に現在が低下してるって訳では無くて、10年20年後にある種の価値観を持って見つめ直せそうな気がね、なんとなく。

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そんな中でひとつ図抜けているのは造型村の1/32スカイレイダーでしょう。製品として目指しているところやターゲットとする購買層が、従来の日本のプラモデルメーカーのそれとは大幅に異なって見えるのは、やはり長年レジンキットやドルフィー製品などを展開して来たボークスならではの特質でしょうか。

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機体選定と製品内容にはもちろん当初から世界市場を見据えたような合理的な判断もあるのでしょうが、やはり根源には作り手側の「趣味」が大きなちからとなっているような、そういう感覚を受けるプラモデルです。少なからず他メーカーのラージスケール航空機模型にも影響を与えてるんじゃないかと、それはただの想像ですけれど。

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古い中にも良さはあって、レベルの1/48イントルーダーは本書の作例記事の中でも相当古い製品ですが、主脚周りのパイピングの妙は最近のデジタル設計でこれが出来るかというぐらいのエロスである。そう、手作業で引かれた図面と金型による曲線はエロいんです。別におかしなことは言ってませんよ?新製品だけを見ていると忘れられがちな諸々の温故知新も、この別冊シリーズで見えてくればよいのですが。

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コルセアって就役長い割には正直そんなに人気ないよなーと思うのは脳が「エリア88」に侵されているひとに特有の症状です。F-14がナパーム弾をボコボコ落としていないとベトナム戦争っぽくないぞなどと言い出したらもう手遅れだ。

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近年のステルス性を高めた作戦機を見なれた人の目には、却ってこのハイビジ塗装(実際のハイビジビリティ・スキームとは練習機や標的曳航機などの塗装色のことだと指摘があるのですが、やはり慣習的にこう呼んでしまいます)は新鮮に映るかもしれません。マーキングガイドではガルグレーとホワイトに塗り分けられフルカラーのマーキングを美しく施された機体が数多く掲載されています。資料写真では試験的に施されたダークグリーンの迷彩塗装なんて載ってて面白いけれど、そういう作例が無いのは第一弾な内容としてはオーソドックスなところを狙っているのでしょうか。

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個々の作例記事で用いられている技法も古くからある堅実でオーソドックスなものが多い中、ハセガワの極薄フィルム「○○フィニッシュ」シリーズの用法はイマドキのテクニックと言えるかも知れません。メーカー非推奨の自己責任ながらフィルム自体を塗装してパネルラインに合わせて切り出し、その極薄さを利用してパネルそのものにするアイデアは広く応用が効きそうです。(※繰り返しますがメーカー非推奨の技法です)

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烏口とクリアデカールを用いた自作ラインデカールの製作、リベットツールのグリップに歯ブラシの柄を流用すれば長時間握りしめても疲労を感じさせない物が出来あがるなど、アナログ的な工具にもアイデアって光るもので。

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ちょっと内容が前後してしまいますが本書巻頭に掲載されているカラー口絵の写真がどれも、いかにもモデルアートの本だなあと思わせる雰囲気でやはりオーソドックスな手堅さを感じさせます。「教科書的」と言ってもよいかも知れない内容ですね。今後シリーズが順当に展開されれば、あるいは変化球的な切り口を期待してもよいのでしょうかしら。

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