ライデンモデル「日本海軍給糧艦 杵埼型 1942」
新興メーカーライデンモデルのインジェクションキット第一弾、日本海軍給糧艦「杵埼」を紹介します。
そもそも給糧艦ってナニ?と、そこから始めなきゃイカんかったことを白状しなけりゃなりません。PHP文庫の「日本海軍艦艇ハンドブック」を見ても巻末に他の艦まとめてちょっと記述があるだけで要目すら載ってない…いささか長めになりますが、ボックスサイドの解説文を全文引用してみます。
杵崎型について
給糧艦「杵埼型」は旧日本海軍が4隻建造した冷凍食料の運搬を任務とした特務艦です。ネームシップの「杵埼」は雑役船として建造されましたが、後に特務艦(運送船)へと分類されました。1943年までに計4隻が日立桜島(大阪)で竣工し、当時としては珍しい冷凍の肉類や魚介類を、比較的安全な後方地域から最前線まで輸送する任務に就きました。大戦後期には船団護衛の艦艇が不足してきたことから、駆潜艇に準じる武装を持っていた「杵埼型」の各艦も護衛任務に就き、外地から日本国内の物資輸送に貢献しています。船団護衛は危険な任務も多く、残念ながら「杵埼」は1945年3月1日に被爆沈没しましたが、残る3隻は終戦まで生き延びて、戦後に賠償艦艇として各国に引き渡されました。
なるほど~、海の「クール宅急便」みたいなフネですね。輸送任務と船団護衛を同時にこなせていたならさぞや重宝されたことでありましょう。
最近のウォーターラインクラスの艦艇模型はどんどん製品内容が濃くなっているのですが、以前でしたらこのようなマイナーな(失礼!しかし自分にとっては褒め言葉なのです…)艦種がインジェクションキット化されることはなんて思いもよらない出来事で、いい時代になったものです。
小さな船体(全長62mですって)を構成するインジェクションパーツは小さいながらも精密な成形です。機関砲が別枠になっているのはバリエーション展開を考慮した設計でしょう。
そしてこのキットの中核となるエッチングパーツ。インジェクションと言うよりハイブリットモデルと呼ぶに相応しい広範な内容で、このスケールでしたらプラパーツで済ませるような箇所までエッチング化されています。曲げ線がしっかり入っているので扱いは容易で、むしろ曲げ過ぎて切断しないように注意を払わねばなりません。
キット自体は2艦のセットで、まったく同じ内容のパーツが2セット分同梱されています。またオマケとして「国鉄標準B型蒸気機関車」が、やはり2台分付属します。
船体パーツはスライド金型使用の一体成形、舷側モールドもご覧の通り繊細に施されてます。この辺はもはや艦船模型のスタンダードか。
しかしこのスケールの艦船模型では一体成形されているのがスタンダードな甲板上の補機類が数多く別パーツ化されているのはちょっとした驚きです。
ホーサーリールとか全部別体で、ルーペの類を用意した方が無難かも知れません。画像では左に位置するA33の前甲板パーツ、みょ~にノッペリしているなあと思ったら
木甲板も別パーツなのでした。エッチング製甲板パーツも謹製サードメーカー製含めてかなり広まって来たアイテムですが、当初からの使用を前提としているのは画期的な設計かも知れません。
このようにピタリとはまって寸分の隙も無い。むしろインジェクションパーツの接着こそエッチングに合わせた正確な位置取りが重要で、いくら2隻あるからと言ってイキナリ組み立ては蛮勇ってもんです。仮組みはとてもとても大事です。
なにしろこういう世界ですから、下手にピンセット使うとマリアナ海溝より深いお部屋の片隅にパーツが消え去りかねません。ある程度経験・腕前に自信のある方にオススメ申し上げたいところではあります。
しかしこの新進メーカーの意欲的な設計による他に例を見ない種類の艦船模型、広くひとに知ってほしいアイテムでもあり…定価1800円とに内容に比して大変リーズナブルなお値段でもありますし、2艦セットでもありますしでものは試しでチャレンジするのも良いでしょう。「貪欲であれ、そして愚かであれ」とスティーブ・ジョブス氏も言ってました。貪欲で無ければ新しい境地には進めませんし、賢さが踏みだす一歩を押し止めることもあるでしょう。
ただ、3隻目は無い。
ライデンモデルからは「国鉄軌道 直線・分岐A」「国鉄軌道 曲線A」のエッチングパーツ2種が発売中です。杵埼と併せて貨物積み出し港の情景を1/700スケールで再現できるこの内容は鉄道ファンにもアピールするものでしょう。