下田四郎「玉砕の鉄獅子 サイパンからの帰還」カマド刊

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いま日本で目にする事ができる九七式中戦車は2輌、靖国神社と富士宮の若獅子神社(旧少年戦車兵学校跡)に現存している。どちらもサイパンで玉砕した戦車第九連隊の所属車輌で、著者の下田四郎氏はかつて同連隊に所属、サイパン島での戦闘に従事し、戦後同地からこの2輌を返還、母国に持ち帰った人物です

この方の著作としては以前光人社NF文庫の「サイパン戦車戦」*1を読んだ事があって、大体の事情はまあ、知っている。「サイパン―」は日本戦車の開発史や太平洋戦争の推移など、いろいろマクロな視点が入っているのだけれど、この「玉砕の鉄獅子」はもっと焦点を絞ったかたちでサイパン島に於けるの戦闘の「証言」と戦後のマリアナ政庁や日本の外務省と交わした文書の「記録」を主体になっている。

「まとまりのよさ」では実は「サイパン―」の方を挙げたい気もするのだけれど、改めて読み返してみて光人社本の文章・内容の「まとまりのよさ」は(何の根拠も無い推測ですが)これ結構代筆してるんじゃないか?と思わされるもの、実体験としての「生々しさ」は本書の方が優っている気がする。いやまあ優劣を決める問題じゃないのだけれど。

「生々しさ」はある種のキーワードかもしれない。海岸のゴミ処理場に廃棄され埋没していた九七式中戦車がまさに堀だされた瞬間のカラー写真などは確かに「生々しい」。そして著者から現代の日本社会へのメッセージ的な文章にどうしても温度差を感じてしまうのは自分自身の生々しさかなあ、とか思う。

自分の、極めて個人的な願望としては、これプロジェクトXにならないかしらとこっそり思うんだけれど、まあそれは夢とゆーことで。

また当時の記録写真が多数収録されていて、写真そのものは(日本戦車ファンだったら)よく見るものだけれど、キャプションは近年の研究が反映されています。AM誌で連載記事書いてた人たちが協力してるんですねこれ。

*1:初版刊行当時の「慟哭のキャタピラ」ってタイトルの方が個人的には好き

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