光人社「戦争の素顔」

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「艦長たちの太平洋戦争」など戦争と人、その関わり方を長年書き続けた佐藤和正氏(平成3年没)による13本の短編ノンフィクションの集成です

単行本版は平成12年刊とありますが残念ながらNF文庫版には初出情報が記載されておらず、それぞれの文章がどういった流れや枠組みで書かれたものであるのかはちょっと判りません。いちおう章立てとしては「第一部 戦史に埋もれた事件と人物」「第二部 戦記のナゾ落ち穂拾い」に分けられてはいますが、個別の内容に関連性はあまり感じられないようです。「一兵卒から提督まで」と副題があるように取り上げられる人物の幅は広く(提督成分結構多めです)、しかしながら中華民国内部のウイグル人独立運動に利用された日本人女性の半生という副題の幅を飛び出すものもありで編集構成にはかなりの「後付け」感があるのは確かです。印象としてはバラバラに執筆されたものをあとからまとめたような感じに思えます。

そういう懸念を取り除けば、ひとつひとつの作品は当事者や家族(遺族)への丹念な取材に基づく丁寧な記述で、著名な軍人から戦時中に捕虜となった個人の方まで様々な角度と観点で戦争の一断面を描いたものです。こういうノンフィクションは決して「面白さ」だけで語るものではないのですが、面白さで言えば第三次ソロモン海戦で駆逐艦「夕立」の艦長を務めた吉川潔中佐の話が実に面白い内容でした。小所帯で多様な任務に投入される駆逐艦や潜水艦の艦長には個性的な人物が多いものになるのか、短い中にも興味深い逸話が盛り沢山なものでした。こうした背景事情を知っていると模型作りにも一層の興が乗りそうには思います。(必ずしも艦長イコール艦そのもの、ではないのでしょうけれど)

また本書では「捕虜」をテーマにした作品が3本含まれています。ひとつはシンガポールで降伏した英軍兵士、他は南方島嶼地域で捕縛された日本軍兵士のエピソードで、それぞれ両陣営の収容所生活や気持ちの持ち様・行動規範の違いは対照的でそれもまた「面白い」ことではあります。むろん面白いだけの話では、ないのですが。

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