国本戦車塾「国本戦車塾第4号: 八九式軽戦車の矛と楯」

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兵器研究家国本康文氏の研究成果をまとめた私家版出版物のなかでも八九式中戦車を扱った4分冊の最後の一冊となるものです。

大まかな内容は…

八九式軽戦車の矛と楯は、八九式軽戦車を八九式軽戦車の戦車砲でドカンと射ったらどうなるか?そんな疑問にお答えする本。

日本陸軍が所有するあらゆる火器で八九式軽戦車を射撃した詳細な記録の解説書である。この記録は四十一枚の射撃記録写真を含み鮮明な写真は初公表されたものである。

戦車塾公式ブログより。昭和七年に行われた射撃試験の実態とその結果を中核に据えたものですが、その過程で八九式軽戦車(当時)の装甲厚、鋼板の素材についても詳しく解説されています。

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トルコ帽型のキューポラを持ち車体前面がくの字型に折れる初期型車体。当たり前な話なのですが八九式の「至近距離で37ミリ砲に抗堪」する性能って十一年式平射歩兵砲が基準だったんだな…

また、射撃試験の詳細な方法が記されていることも新鮮なオドロキでありました。恥ずかしながら距離400メートルでの射撃試験って400メートル離れた先から撃つとばかり思っていたぞ(汗)

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八九式戦車の主砲である九○式57ミリ戦車砲以外にも各種の野砲・機関銃や歩兵砲の徹甲弾や榴弾を用いた射撃結果が被弾痕写真や射撃条件・結果判定を含む報告とともに掲載、いちばんの見どころはこれでしょう。一部では装甲に初期の性能が発揮し得なかったり、強度不足やボルト切断箇所などの弱点が露呈することによって、この試験の結果が後期型の車体や後々の日本戦車の開発につながったことは容易に想像し得ます。

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着発信管を用いた榴弾や機関銃弾では装甲に対して効力を発し得ないことは明らかですが、破片効果や炸裂威力で被害を与られる判定結果は太平洋戦争に際しての決死の弱点射撃に繋がって行くのかと、複雑な感慨を抱きもしたり。

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スペック上の装甲厚では八九式に勝っているルノー乙型(ルノーNC27戦車)のフレームや接合部分が脆弱で、射撃試験終了後には既に原型を保っていない画像にも驚きです。ルノー乙型と八九式軽戦車は日中戦争初期までは混在して用いられましたが、輸入戦車が早々に見切りをつけられたのにはこんな事情もあったのでしょう。

一般書籍ではなかなか見られないマニアックな題材ですが、より深く理解を得たい読者層向きでしょう。

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