大日本絵画「アハトゥンク ガールズ & パンツァー」

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TVアニメーション「ガールズ&パンツァー」に登場した戦車たちの3DCGデータと車内設定画を網羅したメカニック設定資料集です。タイトルにこそ「ガールズ」はありますが、中身の方はほぼパンツァーばかりで、硬派なパンツァー本です。

以前ムービックより刊行されていた設定資料集(絶版)がキャラクターオンリーだったのとは対照的な内容ですね。

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劇中登場車両全43種類(カラーバリエーション含む)の3DCGと本編作画向けに用意された車内の人員配置図、内部設定資料をA4の大きな版型で見ることが出来ます。目次にクレジットされた「チーフモデラー」「モデラー」の各スタッフさんたちは、普段模型業界の人間が考える「モデラー」とはちょっと違うお仕事なのがオモシロイ(笑)

ところでこの本、ちょっと前にツイッター上のマンガ家さんたちの間で議論になった「右綴じで本文横書きの本」なんだな。マンガじゃないけどな。

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これまで公式Webサイトの「メカニック」ページでも一部データは公開されていましたが、担当者御多忙につき更新が滞っていたのも事実なので、六面図含めてこうして一冊の本で纏まって読めるのはいちファンとしても有り難いところですね。

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各車の細部クローズアップは模型製作の手引として製作された編集方針を如実に示すものです。あらためてアップで見るとプラウダ高校の車輛はキャタピラのテクスチャーとして「雪」が直接ペイントされてたんですね。この回の大洗の車両を見ると冬季迷彩の三突は同様の処置をされていますが、F2仕様の四号戦車などは通常のキャタピラ表現のままでして、その違いには興味深いものがあります。

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ネトゲチームの三式中戦車の主砲照準孔が省略されていたとは画面からでは気づかなんだ。仮に決勝戦冒頭で撃破されなくとも、これでは大して活躍できなかったかも知れん(w

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人員配置図はこれまでモデルグラフィックス本誌の特集や映像ソフトの付録冊子などに掲載されたことはありましたが、より一層充実した内容です。一部の画像はオリジナルのフルカラー画像のまま収録されていて、作画や演出のために非常に役立ったのだろうと推察されます。実際、戦車の中にいる人がちゃんとそれぞれの役割を描写されてたのは、アニメーションの戦車描写では相当に画期的なことでした。

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車内設定はデジタル(はっきりそうとは書いてませんが、さすがにアナログ作業では無いでしょう)とはいえ手描きの線画、どこか人の暖かさを感じさせる「アニメの設定画」の空気を色濃く残しています。3DCG全盛とはいえメカニック設定資料が書籍で供給される所以のようなものか。コストとか難しいことは知らにゃい。

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全車両ほぼ同量で収録されてる外観CGとは違って内部資料の方は量的格差が結構あります。聖グロリアーナではチャーチルのみでマチルダの資料は無く黒森峰はタイガーIとマウスだけ、対照的にサンダースはシャーマンのバリエーションが各車多数収録されて一見するとバランスが悪いものに感じられるかも知れません。が、しかしこれは本編の映像製作、特に絵コンテで設計された各カットの芝居から、ここのシーンで必要とされる背景画が美術担当に発注される流れを考えればむしろ納得するバランスであって、ここに収録されていない資料はそもそも存在しないのではあるまいか…と、これは個人的な推測。サンダースの75ミリ砲シャーマンに用意された資料がM4A3のものだったりするのは、本編5話でチームリーダーのケイさんが西住流でも何でもないのにやたら車外に身を乗り出してた原因なんだろうかは。9話でIS-2の照準器目盛が間違ってたのも、この本に内部資料が収録されて無いのを見るとどうやら用意してなかったんでは…

いかんだんだん書籍内容とかけ離れた単なるアニメの感想になって来ているぞ、それも嫌なタイプの(汗)

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でも製作現場の雰囲気を想像できる、ちょっと面白い内容になってるのもこの本の良いところだと思います。生徒会チームヘッツァーの人員配置図はMG誌2013年4月号(絶版)にも掲載された図版ですが、この本の図とMGのとをよ~く見比べると一か所大きな違いがあります。おそらくはMG本誌掲載図版のほうが改訂された後のもので、ひょっとすると製作スケジュールのどこかで設定と演出内容に変更が?あったのでしょうか??

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一年生チームのM3リー、車長キューポラの機関銃が外観では撤去されてるのに内部には存在していたのは決して「作画ミス」などではなく、むしろ作画スタッフは設定どおりにちゃんと画を描いていたんですねと気づかされます。誰が悪いとかそういうことではなくて、視聴者が願うほどには完全ではないということか。全般的な出来が良いから些細な瑕疵が気になるところでもあるのですけれど。

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当初「ガールズ&パンツァー」がここまでヒットする作品になるとは大抵の人が想像すらしなかった快挙だと思います。ここでも何度か書いていますが自分もそうでした。そして当初は、仮に劇中の戦車作画と実際の車輛が違っていても、実車のディティールを重視するような模型作りになるだろうと、そんな考えを持っていました。いざフタを開いてみればここまで本編CG重視のスタイルが主流になるとは予想だにしなかった。でもそれも、あれだけの作品内容、戦車描写のみならずストーリー面に於いても近年稀に見る面白さを見せつけられれば、手を動かしてアニメをリスペクトするようなスタイルを目指すひとが増えるのは当然な流れかもしれません。

…その点でいくつかの齟齬、問題が生じているのも確かなのですが、スキマを埋めたり面取りをそろえるのも模型と模型業界の仕事なのさとテキトーにまとめる(ヒデェ)

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それこそ三式の照準孔をじゃあ埋めちゃおうってひともあんまりいないでしょうし、ひとえに「映像本編リスペクト」といってもそうそう単純なことではないのでしょうね。例えば本編をリスペクトするなら黒森峰ヤークトパンターのいわゆる「ヤクパン子」もしくは「直下さん」or「履帯子ちゃん」は予備の転輪どっから持って来たんだろうとか、そういう「補完」をやってもいいんじゃないかしら。

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マウスの迷彩パターンは六面図もちゃんとあるのでこれから出るプラッツキットの製作ガイドにはもちろんぴったりです。ところでこのデータをもとにデカール作るってのはどうでしょうかおこられますかやっぱり?

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などと模型的な応用法を考えるのはやっぱり自分が模型の人だからなんだけど、考えてみればこれらの設定は本来アニメーターつまり「絵描き」の人たちのためのガイドとして用意されたものなのです。それを思えばこの本を最も有効に活用できるのは同人誌やpxiv、tinamiなどのwebコンテンツ上でイラストを発表されている絵師の方々なのかも知れません。キャラは出来てもメカは不得手なひと、内部を描きたいけれど資料に困っているひと、そういう方々には適度に省略され十分に強調された作画資料として重宝されるかと思います。

んー、じぶんちっとも絵心ないんでホントのところはわからんけれど(えー

とまあ、だいたいこんな感じの内容です。先日ホビーショーのフリマで中村桜さんのサイン入りで入手できたラッキーなお方は、べ、別にちっともうらやましくなんかないんだからね!そちらは保存用で2冊目もどうですか(w

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しっかしチョビさんはホンマ誰からも愛されてるでェ…

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