大日本絵画「ウィングナットウイングス エアーモデラーズガイド #1」

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第一次世界大戦の航空機模型を他に例を見ないほどのこだわりを持ってキット化しているウイングナット・ウイングス製品の製作ガイドブックです。

当ブログでは原書版を半年ほど前にご紹介していますが、思いのほかハイスピードな邦訳版刊行にはちょっと驚かされました。基本的には同一の内容なのですが、日本語版オリジナルの増補として既存の製品リストと日本代理店ホビーリンクジャパン社長スコット・ハーズによるウイングナットウイングス社の活動内容や開発方針、同社オーナーである映画監督ピーター・ジャクソン氏を取材した際のエピソードなどを語るページが追加されています。他のメーカーから発売されている機種はなるべくやらずに行く開発方針でここまでラインナップが広がったのは、いかにこの分野が未開拓であったかという証のようなものでしょうか。

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追加ページを含めてすべてフルカラーで印刷された美しい紙面構成は眺めるだけでも楽しいものですが、やはり製作過程の具体的な内容は(日本人の読者には)邦訳によって一層理解の深まる内容となっています。

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第一次大戦機では多用される木目塗装の表現もひとつひとつのプロセスが「何をしたか」に加えて「何を考えて実行したか」が、誰にでも読み取ることが出来るものです。写実的な模型制作を行うためにはセンスだけでなくロジックも重要で、本書の製作記事はどれも論理的な内容に読み応えのある文章と言えるでしょう。

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海外のモデラー諸氏が製作に使用しているマテリアルのいくつかは日本国内では流通していないものもあり、巻頭のカバーではその点について注意を喚起しています。「ガイドブック」とはいえ本書に掲載されている作品を「完全に再現」するのは難しいのかも知れません。しかし同一ではないにしろ同等のものは十分入手が可能でありましょうし、提示されている技法やアイデアは大いに学ぶものがあります。

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ウイングナットウイングス社以外のアフターパーツについては代表的なメーカー名とサイトアドレスが挙げられています。これもまた日本語版オリジナルの追加要素で、日本の模型市場では未だ流通の少ないWW1アイテムをユーザーが直接入手する手段も増えてきています。よいことです。

本書掲載の諸作品の素晴らしさは、それを紹介する原語が英語であっても日本語であっても変わらずの良さでありますので、しばらくは普段より大き目の画像でビンテージプレーンをお楽しみください。

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日本語版を読んであらためて驚かされるのは、これが初の第一次大戦機模型であることを記しているモデラー氏が多かったこと、そして技術や技法の多くは決して目新しいものや奇抜なものではなく、ジャンルを問わずに行われている基本的な作業であることです。

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木目表現やウェザリングに油彩を使わずタミヤのアクリル主体で仕上げてしまう作例もありますし、美しい塗装の基盤となるのは使用するそれぞれの塗料の濃度差と乾燥時間の違いを把握し、ひとつひとつの作業過程を丁寧に繊細に積み重ねていくことなのでしょう。それは模型制作に於いてはどんなマテリアルよりもテクニックよりも大事なことで、いちばん難しいところでもあります。

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ひとつひとつの作品に長い時間と手順をかけて、急がず焦らずゆっくりと仕上げていく。模型制作が非常に贅沢な趣味であることを再認識させてくれるような一冊です。近年プラモデルの高価格化はいろいろと危惧されるところですが、個別の作品に掛かる製作期間を長く取れば、出来上がった逸品に対する時間当たりのコストはそれほど大きなものではないのかも知れませんね。いわばスローフード的なものとしての模型趣味か。まあ売る側の理屈としてはそうも言ってられない面もあるのですけれど(笑)

新興ながら第一次大戦航空機模型のメーカーとして大きな地歩を占めたウイングナットウイングス、歴史的な2014年を迎えてこれからも広く羽ばたいてほしいものですね。

……ところであまり知られてませんけれど同社は地面を這いずるものも売ってるんですのよ?さすがにこれらはリ・コンストラクション(再構築)に基づくものでは無さそうですが、こっちの方は広く這いずらないものだろうか。

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