大日本絵画「ジミ艦」

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ジミー・ヘンドリックス略して「ジミヘン」、地味な艦艇略して「ジミ艦」。そんなこんなで「ネイビー・ヤード」誌人気連載記事にMG誌掲載分までをまとめた別冊単行本です。

“The World of Unfamiliar Ship Models”なる英文タイトルにはなにやら駄っ作機のテイストが香りますが、存在が地味なだけで性能が悪いとかそういことではないです…か?

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あしかけ7年にわたる作例をテーマ別に再編集した4部構成となっています。第1部は「ジミ艦!ストレンジ」と題して見た目から存在感まで強烈なインパクトを与えるジミ艦が全9隻も掲載されるという、初手からお腹一杯なもの(笑)「雪中の奇跡」などフィンランド軍ファンにはおなじみ、それ以外にはさっぱり無名なフィンランド海軍海防戦艦「イルマリネン」や、大和に先駆けて46cm砲を搭載したイギリス海軍モニター艦「ジェネラル・ウルフ」など異形の艦影が続くページ内容は類書の追随を許しません。

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日本で建造されタイ海軍で運用された海防艦、「トンブリ」イギリス海軍河川砲艦として生まれ日本海軍に接収された「須磨」といった地味ながらユニークな存在の諸艦艇も戦歴やスペックなどが詳細に解説されます。「知るは楽しみなり」と申しまして知らない話をドンドコ読める、実に楽しい一冊です。全ての記事に図面が付属しほぼスクラッチ、たま~にどこかのトンガッたメーカーがキット出したりするようで。

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第2部は「ジミ艦!オリジン」。大和やアークロイヤルという巷間にも広く名の知れた艦名の、では最初の存在はどんなであったろうというくくりです。坊ノ岬沖に戦艦大和が沈んだ昭和20年4月7日に、初代のスループ艦「大和」はまだ瀬戸内海に浮かんでたってのは小ネタとしてよく聞きますが、当の本船はなるほどこんな形をしていたのか。世界初の航空母艦として後代に名を残す「アークロイヤル」も、もののはじめはいい感じにダサいデザインだがそれがよい。

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第3部は「ジミ艦!メジャー」って矛盾するような題名立てで重巡洋艦「加古」(ただし竣工時)や航空母艦「鳳翔」(就役時から最終時までの3形態)などの比較的よく知られたフネを知られざる状況での立体化。初出当時は大改造だった鳳翔も現在ではフジミからキット化されていて、時代を先取りしたのかあるいは艦船模型業界が トチ狂いだして 大きく舵を切っているのか、いずれにせよ時代はジミ艦!いまこそマイナーに陽が当たる時!!

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いまではキットがあると言えば中華民国海軍駆逐艦「丹陽」、かつての雪風も現在ではアオシマからリリースされていますね。戦後の改装、さらにはアメリカ式の兵装を搭載した姿は日本海軍時代とは違った魅力で、本艦の数奇な運命をいまに伝えるものです。このジャンルでは中華人民共和国の手に渡った砲艦宇治、のちの護衛艦「南昌」がソ連式装備になっていて対照的ではあり。重巡「筑摩」の空母改装版は決して絵空事ではなく、計画自体は実在した、しかしかなりのマイナープランをカタチにする日本海軍史の船底の澱をすくい取るようなって褒めてますよ?そんな作例も見られます。

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第4部は「ジミ艦!ヤラレメ艦」という、地味且つ悲惨な最期を遂げたおよそ陽の当らないことこの上ない艦艇をとりあげて個人的にはこれこそメインディッシュ。オランダ海軍軽巡洋艦「デ・ロイテル」やイギリス海軍航空母艦「ハーミーズ」、大抵は日本海軍の景気のいい話に名前だけ出てくる(あるいは沈没する写真が載ってる)よーな気の毒な方々がステージアップされます。この章では真珠湾口で特殊潜航艇を撃沈し南雲機動部隊よりも先に開戦の口火を切ったアメリカ海軍旧式駆逐艦「ウォード」の記事が、二戦級の船体・クルーながら地味な大活躍と高速輸送艦としての転身、カミカゼ攻撃による戦没とその後の意外な展開で実に読ませる内容であり。

最近はすっかり「超絶技巧」に舌を巻くことが多い艦船模型ですが、たまにはこんな知られざる艦艇群にアゴを外して驚くのもまたよしで、数奇者好みの一冊です。

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