大日本絵画「ドイツ海軍の軽巡洋艦 1939-1945」
オスプレイ「世界の軍艦イラストレイテッド」シリーズ8巻はドイツ海軍の軽巡洋艦にスポットを当てた一冊です。
しかしこのシリーズ「世界の―」と謳っていながらドイツ海軍の本しか出なかったのは何故なんでしょ?ドイツ海軍以外は存在を認めない闇の軍事ファンでも編集部内にいたのだろうか何処のどいつのしわざだ!などと寒いこと言ってる場合じゃありません。これだけドイツものに偏重したおかげで本書のようにマイナーな艦種を一冊にまとめた入門書が日本語で読めるのですからこりゃ嬉しい限りですね。
…だってドイツ海軍の軽巡洋艦ってなにやってたか全然印象にありませんよ?これがビスマルクだったらソードフィッシュに舵こわされてグルグル回ってるうちに沈んだとか、ティルピッツだったらフィヨルドに引きこもってるうちに沈んだとか、シャルンホルスト/グナイゼナウの「ふたりは高速戦艦」ペアだったら生命からがらチャンネルダッシュ!そして沈む。などなど大活躍のオンパレードで、なかでも自分はグラフ・シュペーファンなのです。ああ、自沈自沈。
まあなんだ「印象に残る」ことがイコール「活躍する」ではないんだなーと改めて思わされる、そんな水上艦艇の皆さんですが、軽巡に至っては最早その度を越していて、
なにしろカラー口絵の2ページ目で既にして“ケーニヒスベルグ”が沈没してるイラストなんですぜ。
ヴェルサイユ条約による最低限の縮小、以後の不利な建造枠、ロンドン条約明けて制限を外されたとはいえ定かならない設計思想と正直クリークスマリーネは軽巡洋艦を使って何がしたかったのかよくわからないのですけれど、まーあんまりわかってないうちにウェーザー演習作戦で軽巡戦隊はほぼ壊滅、残存艦も特に重要な任務を負うことなく沈んだり沈まなかったりする。そんな連中。
一部の艦では左右にオフセットされてる後部砲塔(写真は“ケルン”)は模型的に面白そう。だけどドイツ軽巡の模型って世の中に一体どれほど存在するのだろう…
ちなみに後部兵装の方が充実してるのはその方が逃げるときに便利だからなんですって!少しはイギリス海軍を見習うべきだなー。
結局のところ一連のドイツ海軍軽巡洋艦というものは、
ドイツ海軍の主要な艦種の中で、軽巡洋艦は最も成績がよくないだろう。第二次大戦以前、主な用途は国際親善訪問航海だけだった時期にも、軽巡は航洋性の上で重大な問題が発生している。これらの艦は世界の主要な大洋で使用するには脆弱であり過ぎたのである。実戦での活動を見ても、成績は印象的というには程遠い
そんなふうに総括されちゃう程度のものなのです。誰だよそんなこと言ったヤツぁ!すいません、著者です…
なんでしょうね多分軍事マニアを無作為に100人集めてきても99人はドイツ海軍軽巡洋艦に対して興味など無いでしょう、でもこの本はそんな中での最後の一人に向けて書かれた…つまりそう
あなたです。
あなたに向けての一冊だと、そう信じることがことができてぼくはうれしい。何処の何方か存じませんが、そんな貴方にこの記事が届くことを望みます…