大日本絵画「ドイツ空軍 地上攻撃飛行隊」

f:id:HueyAndDewey:20110603112617j:image

ドイツ空軍ルフトヴァッフェは戦争の最後まで戦術空軍でしかなかったとよく言われます。オスプレイ軍用機シリーズ43は「急降下爆撃機」と並んで戦術空軍の中核である「地上攻撃機」とその運用について解説されています。

もう少し書誌的な情報を付け加えると日本語版では「軍用機シリーズ」で纏められていますが原著はAviation Elite シリーズの一冊であり、比較的多めのページ数で人物や機種よりは部隊全般を扱い、スペイン内戦から終戦までに至る長期間の変遷が叙述されています。

というわけで表紙イラストこそ陥落寸前のベルリン市街上空でソ連重戦車部隊にロケット弾攻撃を敢行するFw190という極めてドラマチックで黙示録的でワーグナーでコバヤシゲンブンな感じですけど、

f:id:HueyAndDewey:20110603113242j:image

本文前半多くを占めるのは古臭くて鈍臭いヘンシェルHs123とかです。果てしなく地味です。だが、それがよい。華やかなエースパイロット達や電撃戦の主力であるスツーカ隊とも違う、地味で危険な近接航空支援を行う頼もしい歩兵の戦友、それこそが地上攻撃飛行隊なのです。「襲撃機」と呼ばれたりもしますね。

明らかに旧式でありながらその頑丈さと複葉機ならではの正確な爆撃能力からHs123は「アインス・ツヴァイ・ドライ」の愛称と共に実に多岐にわたって用いられ、同時期二スペインで実戦投入されたハインケルHe51が早々に退役したのとは対照的に、ポーランド侵攻後も西方戦役さらには東部戦線で活躍しています。とうに生産が終了し工場ラインが閉鎖された1944年でもまだ飛んでたのは酷使無双にも程がある。それだけ有用な航空機だったということでありましょう、なかなか類書で読めない活躍です。

f:id:HueyAndDewey:20110603115105j:image

もちろん地味な機体ばかりではなく、例えば地上攻撃飛行隊は黒の三角マークをシンボルにメッサーシュミットBf109を戦闘爆撃機として使用していました。英本土航空戦に於いては鈍重なJu87よりも戦果を挙げているのですが、支援すべき地上部隊を欠いていてはその戦果にどこまで意義が――特に戦略的な意味合いが――あったかは疑わしいところでしょう。対照的に大規模な陸軍兵力が動員されたバルバロッサ作戦では地上攻撃機は存分に働き、開始直後の大戦果は戦略的に大きな意味を持つものでした。そして泥寧をものともせず野戦飛行場から即座に離陸し、目前に迫るソ連戦車に反復攻撃できるのはやはりHs123だけか。

f:id:HueyAndDewey:20110603120052j:image

しかし時期が進めば同じヘンシェルのHs129が後継機として整備され、地上攻撃飛行隊の戦力は増加して行きます。機首に誇らしげに描かれた歩兵突撃章こそがこの機体の性格をよく表していますね。「空飛ぶ缶切り」というよく知られた愛称は本書では記されていないのですが、歩兵に親しまれた機種だという話はしばしば耳にする所です。

f:id:HueyAndDewey:20110603120038j:image

急降下爆撃機・地上攻撃機・戦闘爆撃機に加えて高速爆撃機と地上攻撃に転用された駆逐機(双発戦闘機)とドイツ空軍の対地攻撃部隊は雑多な集団と化していったのですが、そんな状態の指揮系統を「地上攻撃航空団」に統合することが出来たのは皮肉にもクルスクでの敗戦の結果でした。それまでは進撃の先兵であったスツーカ部隊の多くも対戦車攻撃型へ機種転換され、以後ソ連軍の怒涛の進撃を食い止める任についたのです。高名なルーデル大佐についても搭乗機を始めとした記述・解説があります。

f:id:HueyAndDewey:20110603120112j:image

そして大戦後期の地上攻撃機として忘れてならないのはフォッケウルフFw190の存在でしょう。元々補助戦闘機として開発された機体でしたが東部戦線ではBf190以上の活躍を見せ、各部の装甲を強化し爆弾架を設けた戦闘爆撃機型のF型は地上攻撃飛行隊のまさに主力です。プラキットも多く、やっとメジャーな話が!

…出来るかと思いきや、爆装したD型とかまじすかな話が次々に出てくるので少しも油断できません。高高度戦闘機を対地攻撃に投入するなんて随分贅沢な話だナーと思うのはB-29に悩まされてた日本人だからであって、ドイツにとっては戦略爆撃より地上兵力の驚異がより深刻だったということか。

f:id:HueyAndDewey:20110603120240j:image

ちょっと珍しい、パンター戦車とFw190が同一ショットで並んだ一枚。1/48スケール情景の題材にぴったりで、飛行機モデラーのみならずとも模型製作のアイデアには満ちています。空を見上げる兵士たちと地上に落ちた友軍機の影なんてディオラマも、まれに見ますね。

また夜間爆撃隊についても本書ではかなりのページが割かれています。これはソ連軍の女性飛行士によるポリカルポフPo-2「魔女飛行隊」の模倣としてドイツ空軍が行ったもので、パイロットこそ男でしたが使用機体が旧式機であることはソ連軍と同様で、しかしそれが雑多且つ混沌とした寄せ集めであることは如何にもドイツ軍らしい有様です。そう、本書はいわばドイツ軍の中でもとりわけ空の「最貧」ぶりを赤裸々に述べた資料でもあるのです。夜間爆撃隊で1945年4月使用とデータが記された初等練習機のビュッカーBü181が、主翼の上下両面に対地攻撃武装としてパンツァーファウストを積んでるイラストを目にした日にはあまりのショックに正気が目眩いますね。危険過ぎるんで画像は載せられませんね…

ドイツ空軍ルフトヴァッフェは戦争の最後まで戦術空軍でしかなかったとよく言われます。頭ではなんとなくわかっていたのですが、いざ実例を読むとなるほどなーと、思わされる。それはつまり陸軍の補助戦力に過ぎなかったとか大局的な戦略眼を持ち得なかったとか、そーゆーことではなくて、

f:id:HueyAndDewey:20110603120403j:image

ハインケルHe177を近接航空支援に使ってたってことです。四発重爆撃機に低空で対戦車攻撃にさせるってあんまりです。ゲーリングのバカバカバカ!ウーデットが草葉の陰で泣いているぞ!!

四発重爆に急降下爆撃させようって人もどうかとは思うのですが。

あわせて読みたい