大日本絵画「バサラ戦車隊」
アーマーモデリング誌に連載された巨匠望月三起也による軍事アクションマンガの単行本です。
終戦直前の満州を舞台に、侵攻するソ連軍から民間人を守って奮闘する「バサラ戦車隊」の活躍を描いた一本ですが、AM誌付録のファインモールド製八九式中戦車マガジンキットとタイアップした企画でもあるため、結果として日本でいちばん八九式中戦車が活躍するマンガとなっています。
なにしろ連載第一回からKV-2を屠る大活躍です。ノモンハンならぬモンハン的な爽快感でひと狩りいっとく。ここで「KV-2の底面装甲厚は…」などと賢しらに語りだすのは野暮の極みッ!!リアリズムよりダイナミズムを重視した作風、そういうスタイルで、そういうマンガです。
主人公が戦車に乗ってるよりバイクの方で大活躍するのは名前が「飛葉ちゃん」ならぬ「シバちゃん」なのでいつものことだ、安心しろ。
登場人物のほとんどが善人/悪人の区別がひと目でわかる、安定した配役。そしてシバちゃんがストーリーと無関係に意味も無く突然「横浜の町内で遊んだロシア人のパン屋の娘」などと幼馴染の昔話を始めたら…
その幼馴染はこーなってます。当たり前です。お約束を通り越して伝統芸能の域に達するものです。
ストーリーは明確にあるのですが、マクガフィンのかたまりのようなもので実際のところ二の次。むしろ個別のページのマンガ的表現、力強いペンタッチや独創的な構図・コマ割りを目で味わう種類のエンターテインメントでしょう。松本零士の「ザ・コックピット」シリーズを評して「戦争マンガならぬ戦争映画マンガ」という言葉がありましたが、本書もそんな感じです。
ケレン味満載な作風を「リアルじゃないね」とバッサリ切り捨てるのは簡単なんですけれど、戦車模型がもっとも活気があった時代って、リアリズムだけが支配していた訳でもない。そこへ戻ろうとは思いませんがこういう感覚も必要だろうと、戦車に限らず軍事趣味が「暴力」を弄んでいるのも確かなんで、あんまりそれをスポイルし過ぎるものじゃないよね。
高石師範の「超級技術」でローガン梅本氏風の情景とかどうかなー。