大日本絵画「第二次大戦のSBDドーントレス 部隊と戦歴」

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ダグラスSBDドーントレス(不屈の、恐れ知らずな)は太平洋戦争に於ける米海軍の主力艦上機であり、本書の帯には「航空史上最も成功した急降下爆撃機」と誇らしく記されています。

なるほど確かにその通り。ドイツのJu87スツーカ、日本の九九式艦爆と共に世界三大急降下爆撃機として知られる(←いま決めた)本機ですが、その中で最も数多く生産されたのはドーントレス。戦争に勝ったのはドーントレスだけ。これを成功と言わずして何と言おう。どれだけの艦船が、どれだけの兵員が、この恐れ知らずな機体を恐れ、不屈の爆撃機に屈していったことでしょうか。

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第二次世界大戦に於いては開戦から終戦までの全期間を戦いぬいた飛行機も連合枢軸を問わずにそれなりの数が挙げられます。矢継ぎ早に改良発展されていった機体もあれば不本意に甘んじて酷使された機体もある。しかしながらSBDドーントレスにあってはほぼ基本設計のまま用いられ、後継機が配備されても第一線に在り続けた稀有な存在と言えるかもしれません。同時期の僚機デヴァステーターとは雲泥の差だな…

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本書はそんなドーントレスの輝かしい戦歴を余すところなく伝える内容です。真珠湾での不意打ちから戦史に残るミッドウェーでの勝利を得て南太平洋での激戦とフィリピンへの侵攻まで、およそ太平洋戦争の激戦地で真価を発揮しなかった場所はありません。偵察爆撃機(ScoutBomber)として開発された本機の運動性・火力からしばしば空中戦でも戦果を上げることとなり、高名な坂井三郎氏の零戦を撃破したのもドーントレスでした(機種を誤認したため後方銃座から射撃を受けた)

海軍・海兵隊のみならず陸軍にもA-24バンシー攻撃機として制式採用され、北アフリカ上陸の「トーチ」作戦を皮切りに地上支援に投入されています。ニュージランドや自由フランス、果てはメキシコ空軍なんてとこでも使用実績があり、6000機近くも製造された実に華々しい存在なのです。

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しかしその実態は、決して華やかさだけで語られるものではありません。本書の記述の中でもガダルカナル島、ヘンダーソン基地に配備された海兵隊カクタス・エアフォース(サボテン空軍)の奮闘は実に印象的です。劣悪な環境、滞る整備状況、過酷な任務、襲い来る日本軍。日本人として「ガダルカナル」に感じるものとは違う、なにか別種の…

ミッドウェーもそうですし独ソ戦のスターリングラードも同様なのですが、ドミノの倒れる方向が変わるその時期は双方ともに辛く苦しい時間が流れるものです。その時、その瞬間を支えられた実績こそが、ドーントレスを名機たらしめているのかもしれません。鉄底海峡に敷き詰められているのはなにも艦船の屍だけではないのです。

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カラー塗装図は30機を数えますが正直似通った機体が多くてそんなに面白いもんでもないような。自由フランス軍使用機体は目を引きますけど単調な印象はぬぐえません。F6Fヘルキャットと並んで戦果を上げた割にはあんまり人気が無いのもその辺が理由かな。いや日本人がドーントレスやヘルキャットを好かないのは別に理由があるんでしょうけど。

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後継となるカーチスSB2Cヘルダイバーの方が確かに高性能でありました。しかしそれを補ってなおドーントレスの信頼性、稼働率の高さやメンテナンスのし易さは、この恐れを知らない機体の存在を、終戦まで不可欠(Don’t less)なものとしたのです。

つまらない冗談が急降下爆撃されるまえに〆。

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