大日本絵画「M3&M5スチュアート軽戦車 1940-1945」
オスプレイ・世界の戦車イラストレイテッドシリーズNo.23はスティーヴン・ザロガ先生(なぜかこの人からは敬称を外せません・苦笑)による第二次大戦米軍主力軽戦車M3/M5系列車両がテーマの一冊です。
このカワイイ戦車たちも今でこそアカデミーやAFVクラブの新キットがありますけれど、長らくタミヤの古いキットが市場で大きな地位を占めていました。昔からのひとなら一度は作ったことがあるんじゃないかな?かくいうワタクシも戦車模型に手を染め始めた頃、お手軽価格と手頃なサイズのこれら軽戦車のプラモデルを実に楽しんで作ったもので…昨年末にM5ヘッジホッグ、M8自走榴弾砲の二種がフィギュア付きとなってスポット生産された時には懐かしい友人に再会したような気分にとあーいや、これは脱線でした、本書内容に戻らないといけません(汗
さて一般的にWW2当時の米軍兵器と言えばドイツ軍のそれらなどよりもよっぽど合理的で至極真っ当な工業製品のようなイメージがあるかと思うのですが、全部が全部そういう訳でもなくて試作や不採用のレベルでは結構ヘンなものも多い。黎明期のアメリカ陸軍機甲部隊も他の列強諸国と同様いろいろ試行錯誤されてます。本書は歩兵と騎兵とでほぼ同型の「軽戦車」「戦闘車」をそれぞれ配備していた時代からはじまって、
1935年製造、騎兵用のM1戦闘車。いかにも不格好な後部のグリルが特徴的。
スペイン内戦や初期電撃戦の戦訓を受けての改良発展など開発の経緯、北アフリカや東南アジアで始まる実戦での戦果と被害状況などを記述していくこのシリーズのフォーマットに則った内容となっています。概して非ドイツものの方が面白く感じるのは自分の贔屓目かな?クルセイダー作戦当時のイギリス軍の運用方法として「射撃するときはまるで突撃砲のように砲塔をまっすぐ前向きに固定したまま戦車全体を目標方向に直進させ…」なんて書かれているのにはビックリ。砲塔要員二名だといろいろ大変なのですな。
タミヤのキットでおなじみの曲面構成D39273型砲塔装備のM3軽戦車。車体スポンソンの機銃には腰だめ二丁拳銃的なものを感じる…
実戦の中で非力さをあらわにしたM3軽戦車の車体・砲塔・機関部と総てを更新したものがM5軽戦車です。それでも性能の向上には限界があり、戦場がヨーロッパに移行した1944年以降はドイツ軍の強力な戦車のみならず歩兵用の携行無反動砲パンツァーファウストの脅威にもさらされ軽戦車の活躍の場は限られていきます。けれども「2基のキャディラックエンジンをハイドラマティック・トランスミッションに結合させた」パワーユニットが何の不具合もなく作動してるのって考えてみれば凄まじい工業力で、よその国じゃ到底こうはいきません。
トーチ作戦に於いて初の実戦参加となった第70軽戦車大隊所属のM5軽戦車。車体前面のホワイトスターは他に類を見ないほどのサイズ。
まあなんだ、スチュアートが非力な戦車だって話は北アフリカ・ヨーロッパでの話であって、太平洋戦域じゃ無敵なんだけどなww もちろん本書にはその辺の事情も余すところなく書いてあります。海兵隊用にサタン火炎放射戦車が開発されたのは流石に37ミリ砲では日本軍の防御陣地に効果が無かったからとか成程なことがいろいろと。もっともM4シャーマンを投入できる状況になると、やっぱりスチュアート系列に活躍の場は無くなってしまうのでありますが。
オスプレイ世界の戦車イラストレイテッド「M3&M5軽戦車 1940-1945」はフォートベニング演習場で自分専用のM1A1軽戦車に座して御満悦なパットン将軍のフルカラー・イラストも収録して絶賛発売中のなのです。なんだかリアルでドズル・ザビみたいなひとです、パットン将軍。
しかしザロガ先生大事なこと書き忘れてます。第二次世界大戦に於いてM3スチュアート軽戦車を使用した国は本書に記されている他にもうひとつあり、あまつさえその国の陸軍が実戦投入した戦車の中では最高の性能を誇っていたというのになにゆえその事実を記載しないのであるか。
ヒント:頭文字はJ。