宝島社「機動警察パトレイバー 25周年メモリアルBOOK 」

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タイトルからも判る通り「機動警察パトレイバー」誕生より四半世紀を記念して刊行された書籍です。

が、

刊行の経緯はともかくとして中身の方は以前に宝島社から出ていたパトレイバー関連ムックの原稿を集めたもので実態としては「復刊」あるいは「増刷」に近いものだと、これは大事なことなのでまずはじめに押さえておきたいものです。ここを勘違いして受け止めるといささか不幸な読まれ方をされそうな本ではあり。ふつーは期待するだろうと、そりゃ思いますけれど……

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それをちゃんと踏まえておけば、本書は1988年のOVA発売以来、さまざまな分野でメディアミックスを展開した一大コンテンツのアーカイブと言える内容です。現在は「アーリーデイズ」のシリーズ名でDVDリリースされている初期OVA、愛蔵版や文庫版が入手可能なコミック版等シリーズ開始時期のものから3本製作された劇場版、4クール放送されたTV版、新OVAに富士見書房のノベライズと、あらゆる媒体の様々なデータを参照できます。

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その中核となる5人の原作者「ヘッドギア」のメンバー各人と鵜之澤プロデューサーのインタビューも掲載され、それぞれの立場からみたパトレイバー、それぞれの振り返る時代性などは興味深い読み物です(これらのインタビューは主に2007年に収録された原稿です)。様々なバージョンが並立して存在するパトレイバーの世界観にあまり矛盾点や公式非公式論争が起こらないのは、それぞれの作品がクリエイター個人の強烈なカラーを反映しているからかもしれません。特に映画とコミックで際立ってるかな…と、個人の感想。

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この世界を形作るレイバーを始めとしたメカ設定もたっぷり収録されています。たださすがに全部を網羅してるとは言い難い。軽四バンを装甲化したようなOVA版の指揮車から「WXIII」のレイバー運用護衛艦まで全部集めたら面白いメカ本が作れそうではあるけれど、映像媒体ごとに製作会社が変わっていったのもパトレイバーの大きな特徴で、資料をまとめるのも大変な作業となるだろうとは想像に難くないところ。

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どうも本書(と元になった原本)はサンライズで製作されたTV版の設定資料を基盤にしているようで、線画の画稿が収録されているのは主にTV版に登場したレイバーで、OVAや劇場版の機体はキャプチャー画像で解説。面白いのは自衛隊の97式装甲戦闘レイバーやタイラント2000といったオリジナルの出自がOVAや劇場版でも引き続きTVに登場した機体は線画が載ってるところか。陸自の九七式が「アトラス」って名前で紹介されてるのはそんな事情からでしょうね。そんなとこ面白がる読者もあんまり居そうもないけどなw

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イラストギャラリーではゆうきまさみ・高田明美・末見純三人の筆による、いくつか代表的なものが収録されています。「ぴっけるくん」ってコミック版にも出てくるんですよ、知ってました?

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香貫花クランシーは高田明美の筆で描かれた時がもっとも輝くキャラクターだなあと思う訳です。新OVAで熊耳さんと角突き合わせる話は面白かったな。天正少年使節の四人目って誰だっけな……

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末見純の挿絵や表紙画含めて富士見ファンタジア文庫版への言及があるのはなかなかに貴重な資料かと。押井守の「TOKYO WAR」も現行ハードカバー版はたしかイラスト抜きでしたし、伊藤和典や横手美智子による小説版(映像作品のノベライズでは無い、オリジナルエピソード)はなかなか手に入らないんじゃあるまいか。

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様々な分野から様々な角度で切り込んだパトレイバーの解説書、25年間見続けてきたファンよりはいま、はじめて接するような新しい世代の人々にこそ読まれてほしいものかも知れません。「この作品はフィクションである…が、10年後においては定かではない」をリアルタイムで見たような人間は、なにしろいろいろこじらせてるでしょうから。

10年以上経ちましたが何も変わりませんねううううむ。むしろゆうきまさみのコミック版で提示されたような問題が21世紀の現代でも変わらず存在するところにこそ、先見の明を見るべきか。

一時期はやった「近未来物」ロボットアニメが限りなく現代に近づいた二番目の例として、パトレイバーの占める地位は大きいと思うのです。一番目は「究極超人あ~る」です。

ところでこの本さ、いろいろとりあげてるけど「立体」についてはひとつも言及がないんだよね。ガレージキットが思春期だったころファイブスターと並んで海洋堂の主力コンテンツだったとかムサシヤの壮絶可動イングラムとか、TV版の展開に合わせてバンダイが全部版権抑えちゃったとか、そっちの話題がまるで載ってないのは25年間いろいろこじらせてきた人間としては(#^ω^)ビキビキ

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