文林堂「ヤコヴレフ Yak-25/-28」

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世界の傑作機シリーズNo.159、旧ソ連の大型双発ジェット戦闘機Yak-25とその発展型であるYak-28の、一連の系譜に属する機体を扱ったものです。


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元を正せばYak-25は1952年に配備されたソ連空軍初の本格的全天候戦闘機、同時代のライバルMiG-19にくらべて二基のエンジンを翼下に懸架し機首と機体に余裕を持たせたことで、後々までに至る様々なバリエーションが開発されました。


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その機体にエンジンを強力なツマンスキーR-11に代え機首と主翼を再設計したものがYak-28だといえるのですが、本書ではふたつの機種の間に存在するYak-26および27についても詳しく記述されています。本シリーズは冷戦時代を通じてソ連以外の衛星諸国には輸出されておらず、長らくその詳細は不明なものでした。戦闘機型や爆撃機型など形式ごとに多彩なNATOコードネームが付せられているのも特徴的ですが、“フラッシュライト”や“ブルーアー”といったそれらの名称はあまりメジャーなものでもないかな……と(個人の感想です)

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写真や図版は勿論重要なものですが、なにより文字原稿が読み応えのある内容です。45度の後退角が印象的な主翼は各シリーズに共通のものながら、実はYak-25以前に設計された機体からの転用であったり平面形こそ変わらないもののYak-26/27設計時に翼厚を半減させていることなど貴重な情報にあふれています。なんだかYak-36フォージャーが冷戦時代のヤコブレフ戦闘機の代表作だと思っていたエリア88脳が洗われる思いだ。

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同時代にアメリカではいわゆるセンチュリーシリーズが開発されていた時期のこと、ジェット軍用機が超音速時代に突入したころの話なので技術革新が機体外形にダイレクトに表われているような印象は受けます。洋の東西を問わず核戦争遂行能力を推し進めていた時期でもありますから、高速戦術核爆撃機なんてシロモノが計画されているのもお互い様の話である。

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胴体前後に主脚を配した自転車方式の降着装置やパイロンを介さず直接主翼に取り付けられる増槽など面白いディティールは模型制作の格好の参考資料となるでしょう。現在ではYak-25も28もほとんどのバリエーションが1/72スケールでインジェクションキット化されています!

おもにAモデルから。

……よし、模型の話は忘れよう。

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長距離防空戦闘機というジャンルは広大な国土を防衛する任を負ったソ連防空軍ならではの存在でしょう。空軍力の要のひとつとして記録写真にもプロパガンダ的な構図のものが多く見られます。世の共産趣味者にとってはたいへんおいしくいただけるものです。国外には輸出されずその性能が謎に包まれていたYak-25/28シリーズではありますが、本書ではYak-28の交戦記録が2例も収録されその能力を垣間見させてもいます。配備が国内だったので実戦投入も国内だったのはほらソ連の飛行機だからさあ。

 ・実戦投入例その1

  犯罪を犯して空軍を放逐された元パイロットが強奪して国外逃亡を図ったAn-2複葉機にR-8ミサイルを発射、見事に外れる。

 ・実戦投入例その2

  政治委員が反乱を起こしてして乗っ取ったフリゲート艦を18機の編隊で攻撃。通常爆弾による低空投下でも一発しか命中しない。

……よし、実戦の話も忘れよう。

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他にアフガニスタン侵攻時の例もあるけど全然活躍してないからまその、なんですな。そんなことより「機種がガラス張りの実用超音速機というのは世界でブルーアー・シリーズしか存在しないのだ」なんてキャプションを読んで体内の血を赤くしようぜ!最初から赤いぜ。

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シリーズで唯一後退翼を持たない特異なバリエーションとしては高高度戦略偵察機型Yak-25RVの存在が挙げられます。“マンドレイク”のコードネームを与えられたこの謎めいた機体(「マンドレイク・ザ・マジシャン」と言えばアメコミの長寿キャラですな)はアメリカのU-2戦略偵察機に対抗するものとして開発されました。「ソ連の戦略偵察システム」については一章を割いて詳細に解説されこちらも読み応えがあるものです。戦略偵察という任務の性格から本機の活動記録はほとんど明らかにされていませんが、半分ぐらいは偵察よりも高高度迎撃訓練の標的機になったみたいデスヨおそロシアですよ(無人化されてます)

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50年代に基本設計が成された機体が最終的には80年代にまで使用されていたのですから傑作機であるといえましょう。とはいえ1964年には新型機Su-15に対抗するためにエンジンを機体内部に収めて更なる高速化を図ったYak-28-64を開発したところ、速度は低下し操縦性も劣悪な機体が出来上がったエピソードからは、発展の余地がない機体をダラダラ使ってたんじゃあるまいかという疑惑も……

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禍々しいスタイルを持つ飛行機ではありますが、東西対立が続いた冷戦の中で、心暖まるエピソードもあります。1966年東ドイツ上空でエンジントラブルを起こした一機のYak-28がコントロールを失って西ベルリン地区に侵入してしまいました。射出座席を使用すれば助かった二人のパイロットは市街地に機体を落とすことをよしとせず、シュテッセンゼー湖に墜落して殉職したのです。二人には賞賛の声が寄せられ、直ちに引き上げられた遺体は丁重にロシアに返還されました。

機体の方はイギリスに運ばれ一週間ほど経過してから返還されました。「部品が足りねーよ(# ゚Д゚)」「湖の底ですよきっと(・∀・)」

いやあ、冷戦って本当におそろしいものですね平和が一番ですね。

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