新紀元社「スケールモデルファン Vol.1」

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Vol.2発売直後というタイミングですが、あえてこのタイミングで新紀元社の模型雑誌「スケールモデルファン」新創刊第一号のレビューです。

なぜにこの時期とお思いの方も多いでしょうが、本書はISBN(国際標準図書番号)をもつ立派な「書籍」でありISSN(国際標準雑誌番号)や日本国内向け雑誌コードをもつ「雑誌」ではありませんので、現在でも一般に流通し普通に入手が可能な本なのです。奥付にもちゃんと初版発行年月日が明記されているので、いつ増刷されても安心です。

芸文社のマスターモデラーズ誌の後継だってことはどこにも書いてないけど誰もが知ってることなんで書いてしまへ。あんまり普通にマスモデ風味で新創刊おめでとう的な記事がただの1ページも載ってないのは…いいのかなあ。月刊誌だったマスモデから季刊発行になったことに加えて「スケールモデルファン」にはもうひとつ変わった点があります。

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表紙にカバーがつきました。あふれでる高級感!!

あと、DUSTが載って無いとか、細かいところ見てくといろいろあるんでしょうけど、総合ミリタリーモデル雑誌というスタンスは変わらぬままです。

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今回の特集は「ラバウルの日本海軍機」としてタミヤの1/32零戦、五二型と二一型をニコイチ(懐かしい響きだ)した三二型の作例を筆頭に、SWEET二式水戦、タミヤ一式陸攻、ファイン彗星、ハセガワ九九艦爆など各社各スケールとり混ぜた企画となっています。

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美しいカラー・イラストによる機体解説や簡単な戦史解説、戦時中にアメリカで発行された零戦三二型の解析マニュアルなど資料的見地の記事も多く、靖国神社遊就館に展示される「彗星」実機取材もあり。ところで実機と言えば国立科学博物館の「複座零戦」がラバウル辺りの現地改造機じゃなかったっけ…あんまり取材されない個体ですけど。

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陸物はタミヤ/CMKの35(t)戦車はルーマニア・セルビア両国に現存する実車写真を伴っての作例、トランペッターからはVK4501戦車を2種類、実戦を想定した仕様でのディティールアップなど、こちらは一般的に模型雑誌で掲載されてるニューキットレビューのスタイルを取っています。巻末にはやはり模型雑誌で一般的な新作キット情報が掲載されますが、やはり月刊誌に比べるとこの点では弱くならざるを得ないだろうなというのが、正直な感想です。

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個人的に今回の掲載記事でいちばん面白かったのはアントニオ・マーチン・テロ氏によるタミヤ1/48パンターG型を大戦末期のディスク(円盤)状三色迷彩仕上げの作例でしょうか。普通のチッピング塗装で仕上げられた「光と影」迷彩とも違った、実車では円形の型紙を使った吹き付けで塗装されたこの仕様を「粘着ゴムのブル・タック」なる素材でマスキングすることで再現。

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日本でも某大手通販サイトなどで入手可能なこの素材を使って、塗装過程を連続写真で丁寧に解説しています。特に一度失敗してもそこからリカバリーする試行錯誤の過程まで省かず載せているのは嬉しいところ。「何をすれば良いか」だけでなく「何をしたらまずいのか」も教唆されたほうが読者の立場としては安心して真似できようというものです。

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最終的にはここまでツブツブな状態にしたそうで、なんかよーわからんけどスゲー。

水モノとしてはフジミ1/700翔鶴一点のみでいささか淋しく、その点もっと増やしてほしいナーというのと、季刊誌の利点を活かしてひとつひとつの作例記事が内容の濃い物になっていけば読み応えがある模型雑誌あーいや模型書籍になるでしょうと、末尾に願望を記しておきます。

ちなみに旧マスモデも雑誌でなくISBNをもつ書籍だったことはナイショだ

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